REPORT

スーダン

6/20、世界難民の日によせて:「学びたい、家族やみんなを支えたい」と願うスーダンの子どもたち

6月20日は国連が定めた「世界難民の日」です。
世界中で難民となった人々の支援を行う国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によれば、紛争や迫害などで難民・国内避難民となった人々の数は、今年に入って1億1,000万人に達しています。これは過去最大の数であり、今年4月に起こったアフリカ・スーダンの軍事衝突によって増え続けている状況です。

私たちJVCは、スーダン南部にあるカドグリで子どもたちを対象にした補習校を運営しています。生徒の多くは、紛争から逃れて難民・国内避難民となり、正規の学校で学ぶチャンスを逃してしまった子どもたちです。

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(子どもたちにアルファベットを読ませている、補習校のアブドゥル・カーディル先生)

今回のレポートでは、紛争の中で生き抜いてきた子どもたちが、いまどのように学んでいるのか、現地からのインタビューをお届けします。ある家族が、補習校に参加することでどう変わったのか、子ども本人や補習校の先生にコメントを寄せてもらいました。ぜひご覧ください。

ハリーマさん一家の場合

ハリーマ・カフィ・イブラヒムさん(30歳)と5人の子ども達は、2019年にカドグリへやって来ました。
いまは、一番上のお姉さん(17歳)を除く兄弟4人が補習校に参加しています。お父さんはスーダン国軍の兵士であり、刑務所で服役しています。夫が不在の中、ハリーマさんは決まった仕事はなく、畑で野菜を栽培したり、ドリンクを作って販売するなどして生計を立てています。

今回は、子ども達のうちナフィア君と、アブドゥル・ワーヒド君の先生にインタビューして、補習校に来てからの変化や、将来の夢などについて聞きました。

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(左から、アブドゥル・ワーヒド君、ハリーマさん、そして弟のナフィア君。
補習校の修了式を迎え、とても嬉しそうです!)

ナフィア・ユースフ・カフィ君(13歳)へのインタビュー

●このプロジェクトに参加した理由を教えてください。
勉強したいからです。将来は先生になりたいので、よく学ばなければいけません。

●子どもたちが勉強していることを、お父さんやお母さんはどのように感じていますか?
僕が勉強していることを喜んでいます。
お母さんがお父さんに、僕がこの補習校に入学したがっていることを話したところ、すぐに賛成してくれました。僕が将来先生になりたいと思って勉学を志していることも、喜んでくれています。

●好きなことや楽しいと思うことは何ですか?大変なのはどんなことですか?
アラビア語が一番最高です。簡単だし。難しいのは算数です。

●補習校を終えた後はどうしますか?
正規の学校で勉強を続けるつもりです。

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(修了式で嬉しそうな顔を見せてくれたナフィア君)

●あなたの夢や人生の目標を教えてください。
先生になりたいです。先生たちが僕に教えてくれたみたいに、他の人に教えたいからです。
だから、大学レベルまで勉学を続けなくてはいけません。休暇の間は働くつもりです。

以前は朝の5時からお昼の1時まで、パン屋で働いていました。1日1,000SDG(約200円)の収入になります。雨季には草を集めると、1束で1,500SDG(約300円)の収入になります。この収入で、学用品を準備しようと思っています。

●このプロジェクトに参加する前と後で、あなたの夢は変わりましたか?
以前くらしていた山で病気になって病院に行ったとき、そのお医者さんが僕に勉強するようにアドバイスしてくれました。僕はお医者さんに、1年生の時は学校に通っていたけれど、そのあとに叔父が家畜の世話のため学校を辞めさせたんだと話しました。
そのときから、大学まで勉強しようと思うようになりました。前は勉強したいと思っても叔父が許してくれなかったので、カドグリにきたあとは、学校に戻ってそのまま3年生の勉強をしようと決めました。

* * *

ナフィア君は成績も良く、クラスで5位を取ったそうです。
補習校の修了式では、「いつか家族を支えるために学んでいます。子どもたちの学びを助けるため、アラビア語の先生になりたいです」とコメントしてくれました。

次にもう一人、ナフィア君のお兄さん、アブドゥル・ワーヒド君のエピソードもご紹介します。

★アブドゥル・ワーヒド君

アブドゥル・ワーヒドくんはクラスで10位を取りました。弟のナフィアくんのほうが好成績でしたが、アブドゥル・ワーヒドくんは家族を支えるため、これまで勉強したことが一度もありませんでした。
「もっといろいろな物事を知りたい」という思いから、今回は補習校に参加しています。

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(修了式で修了証書を授与されたアブドゥル・ワーヒド君。誇らしげです)

朝は、製粉機の仕事で日給1,200SDG(約240円)の収入を得るか、日給600SDG(約120円)のパン屋で働いています。
補習校の授業の後には、水を運んだり、服を洗ったりして家族を手伝います。


アブドゥル・ワーヒドくんは英語が好きなので、正規の学校で勉強を続け、将来は子ども達に教える英語の先生になりたいと考えています。
彼を担当しているアブドゥルバーギー先生は、「彼はしっかりしているので、もっと成長できるはずです。もっと勉強に集中できたら良いと思います。この補習校の期間中、農地で働くために1ヶ月休んだのです」と話しています。

ナフィアくん、アブドゥル・ワーヒドくんのお母さんであるハリーマさんによると、子ども達は家でも読み書きの勉強をしているそうです。
補習校に参加して、家での子ども同士のけんかが減ったこと、そして母親の言うことをきちんと聞くようになったことを、変化として挙げてくれました。

世界難民の日によせて

依然として不安定な情勢の続くスーダンですが、子ども達は、将来の夢に向かって勉強を続けています。彼らの人生で補習校が果たす役割を考えると、こういう状況下だからこそ、将来のための勉強を続けられる環境の重要性を強く感じています。

いま世界に生きる人々のうち、74人に一人は「難民・避難民」です。

紛争や迫害、差別、暴力、気候変動…。さまざまな事情で故郷から逃れなければならなくなった彼らもまた、当たり前のように人間らしい暮らしを送り、働き、学び、安心して未来を描いていくべき人々です。私たちJVCも活動を通じて力を尽くし、そして彼らの立場に寄り添う発信を続けていきたいと思います。

皆さまもぜひ、引き続き私たちの活動や発信を見守っていただき、ともにアクションをとっていただけたら幸いです。

スーダンの子どもたちの未来を応援してください

ナフィア君、ワーヒド君のような子どもたちを応援していくためには、皆様からのご寄付が大きな力となります。
子どもたちの未来を変えていく一歩を、ぜひJVCとともに進めていただけたらと思います。

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