REPORT

ラオス

【TE349号】住民こそが自然資源を管理・活用する主役

(本記事は会報誌「Trial & Error」349号(2022年2月発行)「[特集]ラオス新規プロジェクト」に掲載した文を抜粋・編集したものです。)

JVCラオス新規事業

JVCは現地調査などを経て、ラオスのセコン県を活動地とする二年間の新規プロジェクトを立案しました。

近日中に始動予定の本プロジェクト。10村・約1600世帯を対象に、生活基盤である土地や森、川などの共有資源を住民が持続的に管理・利用し、安定した暮らしを営めるように支援するのが活動の主な内容です。

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ラオスで2番目に小さいセコン県。住民のほとんどが農業を生業としつつ、森や川がもたらす自然の恵みに依拠した暮らしを営んでいます。

セコン県はラオスで最も貧しい県の一つですが、徐々に開発が進行。県西部を中心にゴムなどのプランテーションが広がり、住民によるキャッサバ(タピオカの原料)などの換金作物の栽培が拡大。
さらに、各所で水力発電ダムの設置が進み、カンボジアへの電力供給を目的とした石炭火力発電所の建設も計画されています。

これらの開発に伴い、様々な問題が生じるようになりました。
ゴムプランテーションに土地を奪われ、不十分な補償に抵抗した住民が逮捕されたり、ダム建設のために移住を余儀なくされるケースも。

また、ダム開発の影響によるセコン川流域の生物多様性や漁業への被害も指摘されており、セコン県では20年間で11万7000ヘクタールの森林被覆面積が減少したという情報もあります。

こうした問題を抱えながらも、ラオス国内では注目度の低いセコン県。自然資源に関わる支援活動などもあまり行われていません。

貧しい世帯ほど周辺の自然資源に頼って生活する傾向にあることから、貧困県であるセコン県で、森や川などの共有資源を開発の影響から守り、持続的な利用を目指す活動の必要性は高いといえるのです。

自然資源管理する主人公は住民

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今回のプロジェクトでは、共有資源管理の仕組みが必要とされる村での管理のルール作りの支援、地図作成などの専門的な技術支援、村人の暮らしの権利を守るための法律研修を活動の柱としています。

長らくJVCラオスは農村開発活動と自然資源管理の活動を二本柱にしてきましたが、新規プロジェクトにおいては、自然資源管理に活動を特化。

この方向性には、収奪的な開発に対する自然資源の保全をJVCのミッションとして位置付け、資源管理に焦点を当てて活動の効果を高めていくという狙いがあります。

また、本プロジェクトでは、住民自身が村の共有資源の現状を把握し、その価値について認識をすることにも主眼を置いています。

時に住民から、「いつの間にか共有の森がなくなってしまった」という声を聞くことがありますが、この背景には住民が目の前の生活における必要性から、換金作物栽培を広げ、やむを得ず暮らしの基盤である共有資源を取り崩してしまっている現状があります。

このような、暮らしそのものに内在する課題に対して、住民と共に長期的な視点に立って共有資源の価値を考え、資源管理の実践を支えることが、プロジェクトの眼目です。

鍵は「村の自治力」を引き出すこと

現地調査を通じ、関係者から繰り返し聞かされたのは、森林をはじめとする資源を維持管理するには経済的な動機付けが必要になるということです。

このような実利によってこそ人は動くという見方に対し、JVCが頼りとするのは、共有資源の価値や意味を深く認識した住民が、短期的な利害を超えて合意形成し、協同する力、すなわち「村の自治力」です。

そして、この力を引き出すためのきっかけや場を提供するのがJVCの役割であり、それを効果的に進めるための工夫こそが重要になると考えています。

30年以上にわたるJVCラオスの新たなチャレンジを、ぜひ応援していただきたいと思います。

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