REPORT

スーダン

前半:紛争から10年経った今、難民キャンプの人々は。~幼稚園運営支援~

10年前に起きた紛争とイーダ難民キャンプ

2011年6月にスーダン南コルドファン州で起きた紛争から、約10年が経過しました。JVCは、同州で避難民となった人々、国境を越えて隣国の南スーダンへ逃れて難民キャンプで暮らす人々の双方を支援してきました。今回ご紹介するのは南スーダン・イーダ難民キャンプで実施している幼稚園運営支援についてです。前半・後半にわたってお伝えします。

国境を越え、命からがら南スーダンへと逃げた人々は自分たちの手で難民キャンプを立ち上げ、その運営を始めました。これが、イーダ難民キャンプ(以下、キャンプ)の始まりです。
未だにキャンプ内には4-5万人が暮らしていると言われ、紛争問題は解決していないため、故郷に戻ることもできず、避難生活を続けています。

イーダ難民キャンプは、スーダンの国境からおよそ15kmと近いため、難民の安全面を理由に、国連からは正式な難民キャンプとしては認められず、食料配布や給水などの最低限の支援のみが行われました。しばらくして各国のNGOが、物資配布を始めとする様々な支援を開始する中、教育については十分なサポートが行き届いていませんでした。それでも、「子どもたちの未来を奪ってはいけない。将来ここ(キャンプ)にいる子どもたちが武器を持たないように教育だけは絶やしてはならない」と教育に対する熱い想いを持つ難民たちによって、ボランティアたちによる学校が始まりました。
スーダン・南スーダンでは幼稚園の卒園資格がないと小学校への進学ができない(*1)という方針があるため、JVCは幼稚園教育の重要性を再認識し、イーダにある全幼稚園(*2)の運営サポートを2013年に始動させました。

(*1)スーダン・南スーダン両政府で定めがある一方で、実際は卒園資格がなくとも特例を受け入れるなど救済措置はある。しかし、小学校適齢期まで、幼稚園にも行かず家事の手伝いや家畜の世話などをして過ごしていた子どもたちは、小学校に馴染めず辞めてしまうケースも多いため、幼少期からの教育環境整備は、子どもたちの健全な育成にも寄与する

(*2) 幼稚園数は17園で84名の教員、2112名の子どもたちが在籍している(2021年8月末時点)

継続的な幼稚園運営支援によって改善する教育環境

幼稚園に関わっている人たちは教員を含むすべての人がボランティアです。
キャンプ内にある市場で仕事をし、家事・育児、さらには農業と多忙の中、幼稚園で教員として働いています。
2013年から2020年にかけて、JVCは毎年50-100人の教員に対して研修を実施してきましたが、これまで伝えてきた技術や知識がようやく定着してきました。

これまで3回の研修に参加したヤシール・ジブリールさんもその教員の一人です。

「私は研修を受けるまで、どうすれば子どもたちと友達になれるのかがわかりませんでした。子どもたちとの関係が築けないのであれば、子どもたちに適切な方法で指導することはできないし、そんな先生はすぐに子どもたちから嫌われてしまう、というのが私の考えでした。今ではすっかりと打ち解け、子どもたちとも強い繋がりが作ることができています。中には、『僕はヤシール先生だ!』とモノマネをしてくれる子どももいます。」

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幼稚園で英語を教えるヤシール・ジブリールさん(写真右)

また、教員研修では、子どもたちとの接し方やクラスの運営方法を学んだだけではないんです、というヤシールさん。

「そして、個人的な成長もありました。物事を順序立てて論理的に考えられるようになりましたし、子どもたちに使うべき適切な言葉遣いなども学ぶことができました。物事をより注意深く観察するようにもなったんです。問題は何か、どうすれば解決できるのか、そんなことを考えるようになりました。例えば、子どもたちが喧嘩をし始めたとき。教員としてどうのように仲裁に入ればいいのかを考えて子どもたちに接しています。」

どうしても解決できないときはどうしているのですか?と尋ねると、

「自分たちだけで解決できない問題が発生したときは、教育委員会が派遣している幼稚園巡回指導員(スーパーバイザー)にいつでも相談できるから安心だよ。」と言います。

そこで、8人いるうちの指導員の一人マリアムさんに話を聞いてみると、
「多くの教員が(2013年からの)JVCの研修を受けており、スキルや知識も随分と磨かれてきました。幼稚園で困ったことがあれば、教員の相談に乗りながら、必要に応じてPTAメンバーや教育委員会などと協議を行い、解決に向けて共同で取り組んでいますよ。」

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幼稚園巡回指導員(スーパーバイザー)のマリアムさん

続けてマリアムさんは、教員だけでなく、地域住民やキャンプ全体の様子も大きく変化してきたと言います。

次回はどんな変化があったのかをインタビューしながら、引き続きイーダ難民キャンプにある幼稚園の様子をお伝えします。

執筆者:スーダン現地駐在員 山本 恭之

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