REPORT

スーダン

出生登録支援について

いつもJVCをご支援くださっている皆様、こんにちは。スーダンは最も気温が低く涼しい季節(12~2月)が近づき、過ごしやすくなってきました。JVCの活動地、スーダンの南部に位置する南コルドファン州カドグリでも朝晩は20~25度くらいです。ある朝、現地スタッフの一人が「ドアを開けて寝たら風邪を引いちゃったよ」と言って、その日は1日中鼻をかんでいました。

さて、今回はJVCの最新の活動についてご報告します。2011年に発生した紛争から7年以上が経過し、避難民となった人々は何らかの生計手段を得て、食糧支援などに頼らずに生活できるようになりました。しかし、避難民の子どもの多くは、学校に通っていません。学校に登録するには、戸籍の基礎になる出生登録が必要ですが、多くの子どもが登録を取得していないのです。JVCは、出生登録を持たない避難民及び地域住民の児童を対象に、手続きや費用を支援しています。とりわけ、父親が戦争で死亡または行方不明、婚外子の場合には、手続きがより煩雑になるため、このようなケースを中心に支援を行っています。


家庭訪問の様子。兄弟でも事情が異なる場合があるため、母親からの聞き取りは重要)

出生登録を行うには、まず子どもたちの状況を把握することが重要です。子どもの年齢、出生登録を取得しているか、両親が揃っているか、親(主に父親)が不在の場合にはその理由、といった情報を、ソーシャルワーカーとJVCスタッフが各家庭への家庭訪問により調査します。その後、支援対象となる児童をリストアップし、実際の手続きが始まります。登録は、出生後1年以内に両親が行えば、手続きは比較的簡単で費用は無料です。しかし、1年以上経過し、両親が揃っていない場合には、その理由や状況を証明するために、裁判所から証明書類を発行してもらわなければなりません。証明書の発行には母親の出廷が必要ですが、避難中に兵士などと関係を持ち婚姻契約がないままに子どもを産んだ母親の中には、出廷すれば処罰を受けるのではないかと恐れている人も少なくありません。JVCは裁判所を含む現地行政と避難民の置かれている状況について協議のうえ活動を行っているため、そうした事態はならないことを母親たちに説明して理解を得ています。裁判所からの証明書が発行された後は、担当省において登録が行われ、晴れて出生登録証が発行されます。


母親の名前、子どもの名前を確認し、登録証を渡す)

今年も約550名の出生登録証が発行されました。10月のある日、支援対象のコミュニティで、出生登録証を母親たちに手渡しました。スタッフが到着すると、事前に知らせを聞いていた母親たちが、続々と集まってきます。住民リーダーや男性も見学にやってきました。母親たちは待ちきれない様子で、スタッフに自分の名前を伝えます。スタッフが登録証を探す間は少し不安そうですが、名前を呼ばれて登録証が渡されると、内容を確認したり、住民リーダーに「おめでとう!」と言われて嬉しそうに握手を交わしたりしていました。

母親の一人、サファさんは5人の子どもがいます。そのうち3人の父親は反政府地域で行方不明になっていて、残り2人の子どもは婚外子として避難先で生まれました。いずれの子どもも、出生登録を取得するには裁判所からの証明書が必要です。母親と住民リーダーが裁判所に出廷するなどの手続きを経て、今回、無事に全員の出生登録証を手にすることができました。サファさんの子どもの一人、10歳くらいの男の子が近くで遊んでいたので、お母さんと一緒のところを写真に撮らせてくれる?と聞くと、一目散に逃げて行ってしまいました(笑)。


登録証を待つ母親の近くで遊んでいた男の子たち)

JVCは3年間で2,000人以上の児童の出生登録を行いました。今後は、コミュニティや現地行政が連携して、避難民も含めた児童の出生登録が行われるよう、住民リーダーや関係機関と話し合いを行っていきます。

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