
占領下で生きるということ ―古タイヤで学校を作った人々
東エルサレムの一角に、2,800個の古タイヤと土で学校を作った人々が暮らしています。
古タイヤと土で作られた学校。壁には埋め込まれたタイヤが顔を覗かせています。2015年3月4日、著者撮影
近くで見ると、壁がタイヤでできているのが分かります。2015年2月18日、著者撮影
この村の住民が古タイヤと土で学校を作った理由は、この村に学校を作ることが、イスラエル軍によって禁止されていたためでした。
イスラエル軍は、ヨルダン川西岸地区での支配を強めるため、多くの区域でパレスチナ人住民を強制的に移住させ、イスラエル人だけが暮らす区域へと変える計画を進めています。この集落も、この地域の中にあるため、学校建設・インフラ整備・住宅建設を禁じられています。
パレスチナ人集落(手前)とイスラエル入植地(奥)。入植地の建設により、住民は水場へ行くことができなくなり、高額な水道代をイスラエルに払わざるを得なくなりました。他方、イスラエル政府が支援する入植地には、学校・診療所・プール等が備えられています。
2015年2月18日、著者撮影
集落の様子。建設が許可されないため、住民はテント生活を強いられています。
2015年3月4日、著者撮影
そのため、村の子どもたちは、遠くパレスチナ自治区内の学校まで、高速道路を渡って通わなければならず、通学中の交通事故で5人の子どもが亡くなり、他にも4人が身体に障害を負うことになりました。そのため住民は、子どもたちを守るため、そして教育を与え続けるため、6年前、イスラエル軍の許可なしで学校を作ることを決意しました。
当初、住民は、近くのイスラエル入植地の中に学校を建設して欲しいとイスラエルと交渉しましたが、一切拒否されたそうです。そこで住民は、インターネットで見たブラジルのスラムでの学校建設の方法を真似して、古タイヤと土だけで学校を作りました。現在この学校には、小学校1年生から中学3年生までの150人が通っています。
住民の多くは、近くのイスラエル入植地で働いていましたが、学校建設の後に解雇されてしまいました。
住民は、学校建設に対する「報復」として解雇されたと考えています。そして、子どものために学校を作ったために仕事を失った村人たちは、学費はおろか、医療保険料も払うことができず、清潔さを保つための水道代を払うのにも苦労し、皮膚病などの病気を抱えながら生活することを強いられています。
教室に入っていく子どもたち。2015年3月4日、著者撮影
JVCは現在、この村での巡回診療を支援しています。しかしこの活動を続けるためには、医薬品や医療器具の購入費、医師・看護士の人件費などの資金が継続的に必要です。また、学校では、住民の大部分が学費を払えないことから、文房具、遊具、机、椅子が不足し、教室を増やしたり教師を増員したりするお金もありません。
巡回診療で、住民に医薬品を処方する医師(中央)と看護士(右)。2015年2月18日、著者撮影
学校がなくなれば、子どもたちはまた危険を冒して遠くの学校に通わなければならず、巡回診療がなくなれば、村の住民は、子どもたちに教育を与えるために自分たちの身体を犠牲にしていかねばなりません。
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