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AIDA声明「イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合を阻止する行動を取るよう国際社会に求める」

すっかり夏になってしまったエルサレムですが、COVID-19の影響で、エルサレムでも公共の場ではマスクをしながら人々が行き来しています。少し遅くなってしまいましたが、今回は政策提言に関する話題をお伝えします。

イスラエルにて3月に行われた国政選挙の結果とその後の新型コロナウイルスの影響により発足したイスラエル連立政府において、パレスチナ領土であるヨルダン川西岸地区のさらなる併合計画を含む合意案が4月20日に発表されました。1月に米国が発表した「新和平案」でもイスラエルによるパレスチナ領土のヨルダン川西岸地区の併合を認める部分があり、パレスチナ人の領土的権利と生活はますます脅かされています。また、これは国際法的違法であるたけではなく、パレスチナ人へ人道、開発、保護への悪影響をもたらします。この状況を受け、JVCも加盟している現地の国際NGOネットワーク「AIDA」は以下の声明を発表しました。

当団体は、今月中に現地から日本政府側へ本声明を提出し、同行できる他のNGOと共に、本件に関連した事業地の状況を説明する予定です。

(下記、声明翻訳)

AIDA : イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合を阻止する行動を取るよう国際社会に求める

国際開発機関協会(AIDA)は、84の国際、人道支援、開発及び人権の会員組織を代表して、イスラエル政府に対し、ヨルダン渓谷の大部分と、国際人道法に違反してイスラエルの入植地がすでに建設された地域を含む、占領下のパレスチナ地域(注1※oPt)のさらなる併合計画を見送るよう、改めて求める。

4月20日に発表されたイスラエル連立政府の合意では、7月1日からイスラエルの主権、法律、行政を西岸の一部に拡大するための立法プロセスを要請しており、また1月に発表された米国の政治的枠組みでは、イスラエルが西岸地区の少なくとも30%を買収することを支持しているため、早急に行動することが求められます。すでに米国とイスラエルの合同委員会では、併合される地域の地図を作成するプロセスが開始されている。

占領下のパレスチナ地域のいかなる併合も、悪質な国際法違反に属するものであり、国際社会はこれに強く反対しなければならない。パレスチナ地区の一部を併合するイスラエルと米国のあらゆる合意、及びその後のイスラエルによる合法化は、国際法のもとに法的妥当性を持たず、軍事力による領土の取得を禁止する国際法の永続的規範への違反を表すものである。これらの行為はまた、将来のパレスチナ国家の領土的連続性、政治的独立性、およびその国民の自決権を危うくするものである。この国際法の違反は、すべての国家に、このような不当な行為を合法と認めたり、援助したり、支援したりしない義務を喚起するとともに、同様に重要なこととして、不当行為に終止符を打つために協力する責任を喚起するものである。

AIDA は、国際社会に対し、イスラエルが占領下のパレスチナ地域のさらなる範囲に及ぶ主権の獲得を止めるよう求めることを緊急に要求する。私たちは、第三国に対し、私的及び公的な合法的対抗措置をイスラエルに提示し、イスラエルが西岸地区の大部分を正式に併合することを防ぐよう求める。国際社会は、パレスチナ人の自己決定権を含む国際法の尊重を確保するために、断固として立ち向かわなければならない。

イスラエルによるさらなる領土の獲得は、パレスチナの土地の分断を深刻化させ、将来のパレスチナ国家の領土的連続性、政治的独立性を損なうことになる。また領土の併合は、イスラエルに接収されたヨルダン川西岸地区のパレスチナ人にとって、市民権の否定、移動の制限、必要不可欠なサービスや生活物資へのアクセスの障害など、人権的、人道的に深刻な影響をもたらすことになる。

AIDA のメンバーや、パレスチナ人及びイスラエル人のパートナーは、oPtでの活動を通じて、すでに占領と併合がパレスチナ人の生活や生計に与えている壊滅的な影響を目の当たりにしている。事実上の併合の対象となっている地域では、貧困が深刻化し、人々がAIDAのメンバーやその他の人道支援活動家が提供する救援物資に慢性的に依存しているのが確認できる。

領土の新たな併合により、その地域に住むパレスチナ人への人道支援と開発支援は著しく制限されることになる。東エルサレムはまさに、計画されている西岸地区の併合と、併合された東エルサレムでイスラエルが権限を行使することによる参政権の停止に対する、警告例である。そこでは、パレスチナ人は常に構造的な差別に直面し、人道支援機関及び開発機関の提供する不可欠なサービスへのアクセスを最小限に制限されている。

AIDA は、多くの国がイスラエルによる併合を見送るように警告する力強い声明を発表したことを高く評価している。国連安全保障理事会の5つの欧州委員全員が最近のパレスチナ問題に関する会合で併合に反対を表明し、12人の欧州大使が併合案に対する外交的抗議表明に署名した。欧州連合(EU)も併合案に反対しており、ジョゼップ・ボレルEU上級代表兼欧州議会副委員長は、「併合に向けた措置が実施されるのであれば、見過ごすことはできない」と述べている。

併合がもたらす悲惨な人権、人道、開発への影響、及び国際的なルールに基づく法秩序への悪影響を憂慮して、AIDAは、第三国、EUおよびその加盟国に対し、イスラエルの占領下のパレスチナ地域における併合政策を阻止し、西岸地区のパレスチナ人コミュニティを確実に守るための対抗措置の網羅的なリストを作成し、公表することを求めるものである。

原文PDFは以下から。

    ※注1oPt:Palestineには様々な訳がありますが、ここでは「地域」を採用し、「占領下のパレスチナ地域」としています。他にも「パレスチナ被占領地」や、「被占領パレスチナ地域」「占領下のパレスチナ領土」などがあり、組織にとって訳は異なりますが、意味は同じです。

    翻訳:元エルサレム事務所インターン 中村俊也、エルサレム事務所 山村順子

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