REPORT

国連人道問題調整事務所(UNOCHA)への提言書

JVCをふくめアフガニスタンで活動するNGO31団体は、アフガニスタンにおいて国連人道問題調整部(以下OCHA)の適切な人員を確保すること、OCHAの任務の遂行をするようにと、6月24日以下の書簡を国際連合人道問題担当事務次長に届けました。

現在、アフガニスタンでは、米軍はじめとするISAF(国際治安支援部隊)の民軍一体型のPRT(地域復興チーム)による人道支援活動が治安の状況いかんによらず国内のほぼ全域で展開されています。そのPRT の支援活動も、国家政策との連携が薄いうえPRT 間の統一性に欠けるだけでなく、一部のPRT が援助と引き換えにテロリストの情報を提供するよう促すなどして人々に不信感を与えています。具体例として、東部では昨年8 月国連との調整もなく住民に現金を配布するといった救援活動を米軍PRT が行っています。またPRT ではありませんがISAF が軍隊独自の支援活動として断続的に空からの物資配布を行うなどして、人道支援活動に混乱を引き起こしています。そのような中、外国軍の間に対して人道原則の遵守を徹底することが求められています。

また、食料、水、医療サービスが十分得られない人が多数存在し、かつ人道的な支援さえもアクセスが難しいという状況です。現時点のアフガニスタン人道行動計画では必要とされる総額の62%のみが集まっているとOCHAが報告しており、その点においてもOCHAの調整役が期待されています。

(日本語訳)

国際連合人道問題担当事務次長兼緊急援助調整官 ジョン・ホームズ殿
国連人道問題調整事務所(UNOCHA)アフガニスタン事務所 代表代行 ロバート・ワトキンズ殿

2010年6月24日

拝啓

アフガニスタンにおいて国連人道問題調整部(以下OCHA)の適切な人員を確保することとOCHAの任務の遂行をするために、私たち署名した31のNGOは、OCHA内で継続している問題に深い懸念を表明したく、この書簡をお届けする次第です。

2008年、27のNGO団体がアフガニスタンにおける独自性を持ったOCHA事務所の再設立を呼びかけました。人道状況と安全状況の悪化に伴い、国内避難民の増加、民間人の保護問題、人道スペースの縮小という現状に応える為、OCHAには、独自性を持った人道問題の調整及び人道面に関する努力をサポートすることが求められていました。またOCHAは、戦闘当事者に対する人道的見地からの提言活動をリードする役目も期待されていました。私たちは、2008年6月に進められた貴官のアフガニスタンへの訪問と、その結果、世界的にも最大規模の事務所の1つとなったOCHA設置の決定を歓迎しました。一方、人道面での必要性はアフガニスタンにおいて未だに大きく、活動実施上現在の複雑化した環境は、OCHAの調整的役割を、アフガニスタンでNGOが業務を行う為に欠かせない要件へと変えています。

私たちは、OCHAが有能で多様なバックグランドを持つ人員の迅速な採用、配置、そして維持の為に人的資源制度の改善を世界規模で取り組んでいることを知っています。このような意図にもかかわらず、OCHAアフガニスタン事務所設立18ヶ月たった今も、スタッフ配置の水準は依然として非常に低い状態です。OCHAのスタッフ数は73の承認定員よりも著しく少ない状態です。私たちは、この事は事実上の国連におけるOCHAスタッフ採用活動の凍結と現地スタッフの不足に起因するものだと認識しています。

私たちは、資源が制限される中でもOCHAアフガニスタンが二つの人道行動計画と地域ごとの緊急計画の促進役を担ったこと、そして5つの地方事務所設置、情報管理手段、緊急対応基金の設置などの業績を認めています。しかしながら、人員数と物質的資源が不十分で、カブールと各地方事務所のいずれもが深刻な状況にあり、情報分析や地域別支援のような戦略的機能において進歩が見込めない状態にあります。

基本的な調整や計画及び情報管理への必要性は、とりわけ各地方事務所においてはOCHAの能力範囲を越えています。例えば、最も複雑な人道的課題に直面している南部オフィスでは1人の代表が軍民関係の調整、情報管理と調整を行っています。更に、OCHAはほんのわずかな数の現地スタッフを雇用し、その多くは現地スタッフ採用を統括するUNDPの採用制度を用いて国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)から一時派遣されたスタッフです。スタッフの減少率は高い上に補充がされておらず、事務所の活動能力の低下に拍車をかけています。

私たちは、今年3月に約束が取り決められたにもかかわらず、未だニューヨークのOCHAによって代替者が見つけられていない中で、2010年6月以降OCHAアフガニスタンの上級管理者チームが実質的にいなくなるということに強い懸念を抱いています。アフガニスタン代表のポジションを埋めるだけでなく、OCHAはカブールと各地方事務所両方に献身的で人道支援の専門的な経験を持つプロフェッショナルなスタッフから成る強いチームを必要としています。

アフガニスタンにおける人道的必要性は危機的な段階にあるので、OCHAアフガニスタンの独立し原則に則った人道調整、地方への対応が促進されるように、組織の実効性を強化するため緊急にスタッフの採用努力をすること、また他からの派遣を含めて検討していただきたく思い、私たちは貴官に今回の呼びかけを行った次第です。この問題について、私たちはニューヨークにて貴官とNGOコミュニティーの代表者達がこれらの問題について協議し、さらに、この問題について私たちNGOがどのような形で貴官を支援できるのかについても協議する為の会議の開催を要請致します。

敬具

■署名団体
1. ACTD
2. ActionAid
3. AfghanAid
4. Afghanistan National Re Construction Coordination
5. Aid Afghanistan for Education
6. BRAC Afghanistan
7. CAFOD
8. CARE
9. Care of Afghan Families
10. Christian Aid
11. Concern
12. Coordination of Afghan Relief
13. Coordination of Humanitarian Assistance
14. Cordaid
15. CWS - P/A
16. DACAAR
17. Helping Afghan Farmers Organization
18. Ibn Sina Afghanistan
19. International Assistance Mission
20. International Medical Corps
21. INTERSOS
22. Japan International Volunteer Center
23. Medair
24. Medica Mondiale
25. Merlin
26. Mission East
27. Norwegian Refugee Council
28. Oxfam
29. Swedish Committee for Afghanistan
30. Terre des Hommes
31. Welthungerhilfe

(翻訳
JVCアフガニスタン事業インターン        今野香織
JVCアフガニスタン事業コーディネーター     谷山由子
JVCアフガニスタン現地代表兼東京事務所事業担当 長谷部貴俊)

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