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政策提言

国際人権とNGO/市民社会 ~土地規制法と日本の軍事化・前編~(会報誌T&Eより)

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本連載は、国際人権の確立のために活動する専門家などに、それぞれが取り組む問題について寄稿していただき、私たち市民社会の取り組むべき問題に対する視野を広げ、議論を深め、連帯を強化し、さらなる人権の実践の向上に資する視点を提示することを目指しています。

第2回目は、国防のためという理由で市民の自由と人権を侵害する危険性があり、自由権規約違反が疑われる土地規制法について、同法の廃止アクションの先頭に立つ谷山博史さんにご寄稿いただきました。(編集部)

本記事は、2026120日に発行されたJVC会報誌「Trial & ErrorNo.361に掲載された記事です。会報誌はPDFでも公開されています。ぜひご覧ください。

JVC会報誌「Trial & Error」No.361のPDFはこちら

土地規制法と日本の軍事化(前編)

土地規制法という民の領域での軍事化

土地規制法という法律を知っているでしょうか。あまり馴染がないかもしれませんが、私たち市民の生活に大きな影響を与える法律です。

簡単に説明すると、基地や原発など国の安全保障上重要な施設周辺と国境離島の海岸線(低潮線)周辺を「注視区域」「特別注視区域」に指定し、住民を調査・監視するものです。住民の行為が重要施設や国境離島の安全保障上の機能を阻害している、またはその危険があると見なされれば勧告・命令を経て重罰が課せられます。「特別注記区域」に指定されると不動産取引に事前報告義務が課せられます。

2021年6月に国会で可決・成立し、現在運用段階にあります。これまでに全国で584か所が注視区域・特別注視区域に指定されました。そのうち最も多いのが沖縄県で70カ所、全体の12%を占めています。米軍基地が集中し、2016年以降は自衛隊の新しい基地が次々に開設されている沖縄は、法による監視と処罰の第1のターゲットになっています。

この法律は安倍政権によって導入された秘密保護法、安全保障関連諸法(安保法制)、共謀罪法に続く一連の治安・安全保障立法の一つです。またこの法律が成立して以後毎年新たな治安・安全保障立法が作られたことも問題です。経済安保推進法(20225月)、防衛生産基盤強化法(20236月)、経済安保情報保護法(20245月)、能動的サイバー防御法(20255月)がそれです。戦争をするための軍備の増強がハード面の軍事化だとすれば、土地規制法は民の領域に軍事化が浸透していることの現れなのです。

土地規制法と国際人権法

私が土地規制法に関わることになったきっかけは、202210月に行われた国連自由権規約委員会の日本審査です。自由権規約とは正式名を「市民的及び政治的権利に関する国際規約」といい、「世界人権宣言」を基礎に条約化されました。生命の権利、身体の自由、表現・集会・結社の自由、参政権、民族的マイノリティの権利などを保障する国の義務を規定しています。この日本審査に向けてNGO有志がNGO共同レポート作成することになりました。

NGO共同レポート作成グループ(「表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合」)は2020年に第1次レポートを作成し、私は沖縄報告を担当しました。第1次レポートを作成した後、土地規制法案が国会に上程されます(2022年には土地規制法を含む追加報告書を提出)。この法律は第1次レポートで扱った秘密保護法と同様自由権規約の違反に当たる可能性があります。そこで急きょNGOレポート作成グループの中に土地規制法の有志グループができ、これが「土地規制法廃止アクション事務局」として独立して法案の廃止や法成立後の廃止に向けた活動に取り組むことになりました。キャラバンのようにNGOが瞬時に結束してアドボカシーの隊列を作ったのです。

日本政府報告書審査を採択した国際自由権規約委員会の総括所見には、秘密保護法や土地基本法など表現・集会・結社の自由、プライバシーの権利を侵害する法律を念頭に、独立した国内人権機関の設置を優先課題とすることが第1の勧告として盛り込まれています。

日本には人権を侵害する恐れのある法律がいくつもありますが、独立した人権審査機関がありません。これはとても大きな問題なことです。なぜならば、土地規制法をはじめ先に上げた治安・安全保障関連の法律は、国防のためとの理由で市民の自由と人権をなし崩し的に侵害する危険性があるからです。後編では土地規制法について少し具体的に見ていきましょう。

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土地規制法案の廃案を訴える国会議員会館前での抗議集会(2021年6月)

筆者プロフィール

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谷山博史(たにやま ひろし) 

JVC元代表・現顧問、土地規制法廃止アクション事務局
土地規制法対策沖縄弁護団事務局次長

 

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