はじめてのスーダン(1)~ポートスーダンを歩く~
こんにちは、東京事務所で総務・労務・海外事業サポートを担当している木村万里子です。2025年8月中旬に10日間ほど内部監査のためにスーダン事務所のあるポートスーダンを訪問しました。その時の様子を2回にわたってレポートしたいと思います。
●はじめてのスーダン(2)~内部監査とポートスーダンでの活動~はこちら
2023年4月に発生したスーダン内戦は首都ハルツームをも巻き込むスーダン全土が戦場と化しました。比較的安全であったエジプト国境に近い紅海州にあるポートスーダンに急遽事務所を移し、JVCは活動を続けています。今年5月には残念ながらそのポートスーダンも即応支援部隊(RSF)によるドローン攻撃が突然起こり、スタッフは一時的に避難したものの、安全を確認しながら、ポートスーダンでの滞在を継続しています。
私自身はこれまでの人生でもアフリカは馴染みが薄く、個人的にエジプト(カイロのみ)とモロッコに行ったことがあるくらいでした。当然のことながら初めてのスーダン訪問ということで、いつもは通路側を選択する飛行機の座席も、経由地のカタール・ドーハからポートスーダンへの窓際を選びましたが、着陸間際にみたポートスーダンは「乾いた大地」というタイトルがふさわしい風景でした。
ポートスーダン郊外ホシリにて撮影
今回の出張は昨年から計画していましたが、時期を決める際、現地代表の今中からは「7~8月は暑すぎて仕事にならないから避けた方が良い」とアドバイスをもらっていたにもかかわらず、スケジュール調整の結果、8月半ばという最も暑い時期の訪問となってしまいました。まあ、「日本も酷暑だから大丈夫」と変な期待をしてポートスーダンの空港に降り立ったとたん、むわーっとした空気に包まれ、空港の入国審査を待つ場所は混とんとし(スーダン人も外国人の列も一緒)、荷物が出てくるベルトコンベアーもしょっちゅう止まったりと早速、「ザ・アフリカ」の洗礼を受けることになりました。
しかしながら空港から街中に出てみると、どこかで見たようなリキシャが走っていたり、馴染みのあるアラビア語が聞こえてきました。私は同じようなオートリキシャが町中を行きかうバングラデシュやスリランカでの滞在経験があるのと、アラビア語が話されているエルサレムに2024年7月まで3年半ほど駐在していたので、すぐに「はじめて感」がなくなり、空港で出迎えてくれた現地代表・今中の笑顔とともに初訪問の緊張が解けたのを覚えています。
ポートスーダン内を走るリキシャ
ポートスーダン事務所近くの様子
おしゃれカフェにはおいしそうなケーキも
ポートスーダンは紅海に面した港町です。スーダン内陸の石油がパイプラインで運ばれこの港から輸出されています。イギリス統治下時代はエジプトからの鉄道の終点としても知られ、綿やトウモロコシなどが輸出されるなど交易の要所でもありました。私が訪問したときは日中40℃超える猛暑ということもあり、海には子どもや若い男性を中心にたくさんの人たちが海水浴を楽しんでいました。海水浴といってもぱちゃぱちゃ水に浮いている人が多く、大型コンテナ船が近くを通ると、発生する大きな波に「おー」と歓声をあげて興奮しながら楽しんでいる様子をハラハラしながら見ていました。
大型コンテナ船が行きかう港で海水浴を楽しむひとたち
夜は海沿いの屋外カフェで夕涼みしながら、家族や友人と談笑
2008年の国勢調査によるとポートスーダンの人口は40万人弱ですが、2023年のスーダン内戦により各地から逃れてきた国内避難民、首都ハルツームから拠点を移した政府、国連や国際NGOスタッフなどもいるため、人口は増えているのではないかと推察されます。もともとスーダンは200以上の民族で構成されている多民族国家でもあり、お土産物屋さんの壁にはさまざまな民族をモチーフにした絵が描かれていて興味深かったです。
古代エジプトを支配したクシュ王国の女王が描かれている壁画
(左)下にはヌバの人々がレスリングする様子が描かれている
(右)ベジャの人々がダンスしている様子が描かれている
また、出張中の楽しみのひとつに食事があります。「スーダン料理」について何の予備知識もなかったのですが、アフリカとアラブの食文化が融合した感じの素朴な料理が印象的でした。イスラム教徒が多いので豚肉は食べませんが、チキン、ビーフ、マトンなどさまざまな肉料理、イエメン料理など近隣諸国の料理、海もあるので新鮮な魚料理など堪能しましたが、個人的には現地スタッフのモナがふるまってくれた肉じゃがに似た手料理(ギーマ、写真左下)が一番おいしかったです。シナモンなどスパイスを多用してますが、見た目と違って辛くはなかったです。
スーダン料理
滞在中に一番悩まされたのが「停電」。スーダンはもともと電力供給が安定していないうえに暑さもあいまって停電も頻発し、電気が使えない時間帯も多くありました。事務所のある建物は発電機もありますが、大家さんの都合で停電してもすぐには発電機に切り替わらないこともしょっちゅうあるようで、その時はうちわをパタパタしながら待つしかなく、、、外気温40℃超えの室内(冷房なし)では頭が働かず、睡魔と格闘しているなか、隣では涼し気な顔で今中と現地スタッフのモナがもくもくと仕事しているのには驚きました。
暑い中、カドグリ事務所スタッフとオンライン会議をする今中とモナ
次回は内部監査の様子をお届けします。
※現在ポートスーダン市を含むスーダン全土は、外務省で危険度4(退避勧告)に指定されています。JVCでは安全管理体制を徹底し、セキュリティに関する特別な研修を受けたスタッフのみ駐在および出張を可能としています。また、常に現地の安全に関する情報を入手し分析、安全性を確認したうえで駐在・出張を行っています。本記事は現地の状況をお伝えするためのものであり、一般の方の渡航を促すものではないことはご理解ください。
群馬県出身。民間企業で働きながら国際協力NGOでボランティアを続けるうちにNGOの世界へ。イギリス大学院への留学後、複数のNGOに勤務。13年間で国内外あわせて16の緊急救援および教育支援、開発教育に携わる。支援活動で滞在した国は、中国雲南省、フィリピン、ラオス、カンボジア、バングラデシュ、ミャンマー、ネパール。2020年5月まではロヒンギャ難民支援に従事。これらの支援活動を通じ、より良い支援を行うためには自身も含め、支援する側の能力が重要であることを実感する。2020年12月~2024年7月までJVCエルサレム事務所駐在。2022年イエメン事業立上げに参画。令和6年度「信州大学同窓会連合会賞」受賞。