【声明】​​​ガザ地区における「飢饉」の発生に関する声明 (2025/08/22)

8月22日、統合食料安全保障段階分類(IPC)は、ガザ地区の中心地であるガザ市における食料危機が、最も深刻な状態を示すフェーズ5「飢饉」に達したと発表しましたIPC,8月22日)。
中東地域において「飢饉」が公式に確認されたのは、今回が初めてです。

これを受けて、JVCを含むパレスチナの和平を求めるアクション実行委員会は、以下の通り声明を発出しました。

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ガザ地区における「飢饉」の発生に関する声明

2025年8月22日
パレスチナに和平を求める実行委員会

本日日本時間の19時に、パレスチナ・ガザ地区の中心地、ガザ市全域において、正式に「飢饉(ききん)」(食料の安全保障を測る基準で、最悪のレベルであるIPC5:Integrated Food Security Phase Classification​​)​​に到達したとの​​発表がありました。また避難者が最も多い中南部に位置するハーン・ユニスでも9月中に飢饉に達する見込みが出て​​います。 

飢饉とは飢餓(きが)の最も深刻な状態で、IPCの定義によれば、地域において少なくとも20%の世帯が食料の極端な不足に直面し、少なくとも30%の子どもが急性栄養​​​​​​不良​​を患い、10,000人あたり2人が毎日、飢餓により死亡、または栄養​不良​​と病気の相互作用による死亡が発生する場合のことを指します※1。 

​​​少なくとも既に62,000人が空爆等の攻撃により犠牲になっているガザ地区は、2023年10月7日以降、イスラエルにより厳しい物資の搬入制限が行われてきました。特に今年の3月以降は物資の搬入がほとんど行われず、5歳未満の子ども70,000人と、妊娠中または授乳中の女性17,000人が急性栄養不良に直面しています。 

UNRWA(​​国連​​パレスチナ難民救済事業機関)によると、3月以降、命に関わるほどの急性栄養不良の子ども​​の​​​​人​​数は急増し(図1)、また、UNRWAが3月以降​​​​100,000人の子どもに対して行った栄養スクリーニングでも、3人に1人が栄養不良に陥っているとの報告がなされています※2。また、UNOCHA(国連人道問題調整事務所)によれば、これまでに栄養不良による死亡が少なくとも269人確認されており、うち112人が子どもと報告されています※3。ほかの病気との合併症で亡くなる子どもを含めれば、その数はさらに増えると予想されます。 

私たちの活動地に暮らす、9歳と10歳の子どもの母親であるナイルーズさんは、「この厳しい状況で私が願うことがあるとすれば、それはただ『食べること』です。そして、子どもたちに食べさせることです。子どもたちには、お腹が空いたときは我慢して眠るように言い、食べ物のことを忘れさせています。しかし、それが母親として本当に苦しいです」と話してくれました。またサハルさん(10歳)は「とても怖いです。私たちは毎日、朝も昼も夜もレンズ豆ばかり食べています。そして時々、水や塩水でさえ手に入らないことがあります。戦争前は、私は肌が白くて体もふっくらしていました。でも今は食べ物がなくて、レンズ豆しか食べていないので、体重が減り、肌も黒くなってしまいました。戦争が早く終わって、みんなが家に帰り、好きなものを食べられるようになることを願っています」と話してくれました。そして、リームさん(14歳)は「4日間、小麦粉も、食べ物も、水もありませんでした。戦争以前の生活に戻りたいです。母が市場に行っても、お金がないので何も買えません。たとえ何かあっても、とても高すぎて手が出ません。母が買い物に行くたびに、私はイチジクやブドウを心の中で思い描いていますが、母は何も見つけることができません」と教えてくれました。 

あばらが浮き出た、枯れ木のように細い手足の子どもを抱くお母さんの気持ち、耐え難い空腹にさらされ続ける子どもや人々の気持ちを考えると、強い憤りと、悔しさを覚えます。関係団体のスタッフによると、急性栄養失調に陥った子どもたちには、すでに泣き叫ぶ気力も残っていません。 

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     1:ガザ市地域の生後6~59か月の子どもにおける栄養失調の割合
※2025年8月5日人道外交議連UNRWA清田明宏医師発表資料より

​​​今回の飢饉は、完全封鎖されたガザ地区への物資を極端に制限することで引き起こされた、いわば人為に作り出された飢餓の結果です。そして、飢餓を戦争の道具として利用する行為は、国際法上厳しく禁止されています。私たちガザで働くNGO、パレスチナと連帯するNGOや市民は、この間物資の搬入、ガザ​​地区​​の恒久的な停戦、国際法の遵守を繰り返し求めてきました。 

そして、私たちを含む世界中のNGO、国連機関が、​​ガザ​​地区​​の​​状況​​​     ​を改善するために入念に準備し、人々を救うための物資を、ガザの入り口まで届けています。しかし、こうした物資をガザ域内に届けるための許可が下りません。 

ガザ​​地区​​の子どもの命を​​救う時間は、もう尽きてしまいました。人道の理念は、もろくも崩れ去りました。私たちは、こうした状況を許してしまった私たち自身を内省するとともに、国連と人道支援団体による、妨げのない人道支援アクセスの許可を粘り強く求め続けます。そして、ガザ​​地区​​の子ども、人々をこうした状況に追いやった​​イスラエル政府に対し、国際法を遵守するようあらためて強く求め、日本政府をはじめとした関係各国政府には、直ちにこの人為的飢饉を食い止めるための効果的な手立てを講じるよう要請します。​​ 

引用

パレスチナに和平を求める実行委員会

声明に関するお問い合わせ先:

特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC) 高橋
〒110-8605 東京都台東区上野 5-22-1 東鈴ビル 4F 
info@ngo-jvc.net / 03-3834-2388 

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