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パレスチナ

ガザの声「地元ニュースでは世界の状況が分からないので、もし停戦が決まったら、いつでもいいので電話してください」(7月16日付)

7月14日、JVCがガザ地区で実施してきた、子どもたちの栄養失調予防事業で働くパレスチナ人の同僚アマルに、安否確認も含めて電話で状況を聞きました。彼女は、ガザ地区の中でも特にイスラエル軍からの攻撃が激しい、北部のベイト・ハヌーンという地域に住んでいます。以下が、彼女から聞いた内容です。

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右から2番目がアマル、真ん中がJVCガザ事業担当金子。(2012年8月撮影)

「私たちは、ベイト・ハヌーンの中心部に住んでいて、町の周縁部よりは安全だから、兄弟とその家族がみな避難してきています。ガザ地区の水道水は汚染されていて飲むのに適していないので、普段は水道業者から飲み水を買っていました。でも今は、攻撃の最中であるため、誰も外に出て飲み水を買いに行けず、水道業者もみな怖がって水を運んできません。私の家の水道水は、幸運にも他の地域と違って塩分がほとんど含まれていないので、かろうじて飲むことができます。でも汚染されているので、健康には良くありません。

本当に怖いです。イスラエル軍は、事前警告もなしに突然爆撃してくるからです。ニュースではイスラエル軍が事前警告をしていると報じられています。でも、警告なしの爆撃が多く、たとえ警告があっても、爆撃の1分前なのです。私の親族の2家族が殺されました。そのうちの1人は私の従姉妹で、彼女は母親の家を訪問した後、家に帰ったところを空爆で殺されました。一緒に彼女の息子と娘も殺されました。他にも、親族の家族が6人全員、自宅にいたところを爆撃で殺されました。

イスラエル軍は、どこでも構わず爆撃してきます。私の自宅の数メートル先に上水を貯める高い塔があり、イスラエル軍はそこをすでに4回も爆撃しました。その塔の周りは子どもたちの遊び場なのです。事業で一緒に働く同僚たちは、他の地域に住んでいますが、彼女たちも爆撃にさらされており、家から出ることさえできず、爆発のたびに家が震えると言っていました。家から一歩も出られないため、ジャバリヤ市で事業のボランティアをする女性たちの安否はまだ確認できていません。本当に怖いです。

ひとつお願いがあります。地元ニュースでは世界の状況が分からないので、停戦交渉について何か新しい情報が入ったら、すぐに教えてください。もし停戦が決まったら、何時でもいいので電話してください」

私たちと一緒に長年働いてきたこの女性は、サウジアラビアで生まれ、英国ロンドンで育った、とても知的で優秀なスタッフです。英語も達者で、どんな状況でもいつも冗談ばかり言っていました。その彼女は、電話に出た当初は毅然とした声で受け答えをしていましたが、「怖い」という言葉を口にした途端、声が震えて止まらなくなっていました。自分の恐怖を口に出さないことで、辛うじて爆撃の恐怖に耐えてきたのだということが、電話越しに痛いほどに伝わってきました。7月15日には停戦の可能性が報じられましたが、それは結局実現せず、今もガザ地区全域で住宅地への空爆・砲撃が続き、死者・負傷者は増え続けています。

※7月15日付の国連OCHAの発表では、大規模空爆が開始された7月7日以降、イスラエル軍の攻撃によって殺された死者は194人(うち民間人149人、子ども38人)、負傷者は1,390人(うち子ども393人、女性252人)に上っています。また、1,870軒の住宅が破壊または深刻な損傷を受け、8,200人が避難しているほか、60万人が飲み水を確保できなくなる危険に晒されています。

執筆者

今野 泰三(パレスチナ現地代表)

大学在学中に明け暮れたバックパッカー旅行。その道中、カンボジアで内戦の記憶と開発のひずみの中で苦しむ人々と出会い、シリアでパレスチナ難民から祖国への思いを聞き、ロシアの空港ではどこにも行けない無国籍のガザ難民と夕食を共にした。無数の出会いに背を押され、01年よりJVCボランティアチームに参加。英国留学、シンクタンク勤務、エルサレム留学、大阪での研究員生活を経て12年より現職。パレスチナで見たもの聞いたものを日本の皆さんと分かち合いながら、世界の「希望」「幸せ」を少しでも増やせるよう一緒に考え行動していきたい。

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