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パレスチナ

ガザ・ハンユニス・栄養センター[2]:栄養失調の子どもたちの様子

モハンマド君は、6月7日に初めてセンターを訪れた時、栄養失調の度合いが「6」と診断されました。「3」で「重度の栄養失調」としているので、「6」はとても深刻な状態です。初めて来た時、モハンマド君は5ヶ月半だったにも関わらず、体重が3.8kgしかありませんでした。もともと、とても小さな体で生まれてきたモハンマド君。お母さんが頑張って、この日測定した体重はやっと4kgを超えました。6ヶ月の赤ちゃんの平均体重は、7〜8kgとのこと。まだ、元気がないようです。お母さんは「ほら、こんなに小さいのよ」と私にモハンマド君を抱っこさせてくれました。赤ちゃんを抱き慣れていない私ですが、先日友人に生まれたばかりの赤ちゃんと、そんなに体重が変わらない気がします。モハンマド君は、最初は食べるのを嫌がっていたそうですが、だんだんとセンターでの栄養食を食べるようになってきたそうです。家ではお母さんが、配布される乾燥食材や、親戚から分けてもらう野菜などでスープを作っています。「ご飯を食べることを楽しめるようになったら、いい兆しよ」と健康指導員さんが言います。

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(深刻な栄養失調状態のモハンマド君。お母さんは元気)

モハンマド君は、3人兄妹。お母さんは笑って「10人子どもがいる家だっていっぱいいるけれども、私は十分よ!夫だって食べさせなきゃいけないのだから」と笑うのです。モハンマド君のお父さんも、以前はイスラエルに仕事に行っていたのですが、2002年以降、イスラエルによる封鎖が厳しくなりその仕事を失って以来、日雇いで野菜の収穫や道路工事などの仕事をすることもあるそうですが、「全く仕事がない週だって多いの。特に今回のイスラエルによる侵攻の後は、日雇いの仕事ですらないわ。でも、野菜の収穫の仕事は、時々野菜を持って帰ってくるから助かるのよ」と言います。

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(栄養失調の度合いが「5」のダリアちゃんに栄養食を食べさせるお母さん)

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(「うちの子も!」と次々と「抱っこ」の嵐 )

私の子も抱っこしていいわよ!と、次々とお母さんが子どもを“差し出して”来ます。ラザーンちゃんは、9ヶ月で体重は6kg。なかなか体重が増えなかったラザーンちゃんのお母さんは、健康指導員さんのカウンセリングを受けて、「一日3度だった食事を6度に増やすように言われたの。他のアドバイスもちゃんとメモもとってあるのよ」と、メモ用紙も見せてくれました。一人ひとり、子どもの状態や食事の様子などを健康指導員さんが聞き取り、お母さんたちは真剣に相談しているそうです。

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(カウンセリングのメモを見せるラザーンちゃんのお母さん)

19人のお母さんたちに、いくつか質問をしました。「この一ヶ月で、お肉を食べた人は何人いますか」と聞くと、3人が手をあげました。牛肉は現在、1kgあたり60NIS(約1,500円)します。お母さんたちは「以前は40NIS(約1,000円)だったわ」と言います。「では、鶏肉は?」と聞くと、6人に増えました。あるお母さんが「でもうちは12人家族なのよ。今月は1回、鶏肉を食べたけれども、一羽(約20NIS=500円)を皆で分けたら、ほんの少ししか子どもは食べられないわ」と言うと、他のお母さんが「うちもそうよ」「鶏が一羽の半分買えるならば、同じお金で卵(30個で10NIS=250円)を買った方がいいわね」と言います。この19人の子どものお父さんで、仕事を持っているのはわずか6人。警官や技術者などだそうです。一家の収入がない中、家族を支えているのはお母さんの元気です。

お母さんたちの中には、心理ケアプログラムに参加しているお母さんもいます。先日は、センターに通う30人のお母さんたちが、子どもたちと一日、ビーチへの“遠足”に行ったとのこと。夏に入り、ガザの海岸は多くの家族連れで賑わっています。「女性・子ども限定」の一日。椅子取りゲームをしたり、栄養満点のランチを食べたり。また、目を閉じてリラックスした状態で話を聞いたり、一人ひとりが皆の前で思いを語ることで、女性たちはリフレッシュできたようです。参加した女性たちからは、「小さかった時、お姉ちゃんと遊んでいた時のことを思い出したわ」「結婚してから20年間、夫がダメって言うからビーチに来たことはなかったの。こういう機会があって、やっと来られたのよ」「目を瞑って色んなことを思い出していたら、辛いことも思い出したけれども、話すことですっきりしたわ」という声を聞きました。

帰ろうとする私に、「また来るのよ!その時は私の息子の写真も持ってきてね」と大きな声で言うお母さんたち。「次来る時までには、元気になって退院していてね」と言うと、大きな声で笑って手を振ってくれました。

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(小さな口で、少しずつ、頑張って完食!)

執筆者

福田 直美

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