2/21「外務省が他国軍に武器供与?! 安保3文書、もうひとつの大問題を考える」院内集会レポート

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「外務省が他国軍に武器供与?! 安保3文書、もうひとつの大問題を考える」院内集会が、2023年2月21日15:00-17:30、参議院議員会館の講堂にて行われました。
その様子を、参加した3人のインターン生の感想を交えてお届けします。

呼びかけ団体は日本国際ボランティアセンター(JVC)、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、ピースボート、協力団体はメコン・ウォッチ、FoE Japan、アーユス仏教国際協力ネットワーク。以上のNGO団体に加え、多くの議員、メディア取材者、市民の皆さまにもご参加いただきました。

当日は以下のタイムテーブルに沿って集会が開かれました。

<第1部> 15:00~15:50

市民社会からの問題提起
〇発言者
 今井高樹  日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事
 畠山澄子  ピースボート共同代表

〇報告「武器輸出と外務省の他国軍支援」
 望月衣塑子 ジャーナリスト

〇国会議員からの発言

<第2部> 15:50~17:30

 〇外務省との意見交換 

 〇集会のまとめ

概要

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第1部では、外務省提唱の新たな支援の枠組みに対して、NGO代表の発言、メディア・ジャーナリストからの報告、議員の意見が共有されました。

第2部では事前に提出された質問に沿って、市民を交えた外務省との意見交換会が行われました。事前質問は大きく6つのみ。どれも欠かさず全体で念入りに議論していくべき点ばかりが挙げられていました。

今回の院内集会での外務省との意見交換会では、決して私たち市民社会側から提起した問題について、十分に満足のいく回答が得られたとは言えません。

開発協力大綱の非軍事原則を守り、それに基づいた支援を行ってきたという歴史と信頼があるにもかかわらず、日本の国際協力支援が安全保障戦略化してしまうことで、その経歴をかき消そうとしているのが現状です。

国際紛争を助長させてしまうことになりかねず、日本が大切にしてきた「平和主義」が損ねられる危険性をはらんでいます。

軍事的目的への転用のリスクヘッジや支援の事前・事後評価プロセスが充分に開示・保証されていないにも関わらず、今、2023年の大綱改定に向けて非軍事原則を緩和する方向の動きが進められています。さらに「ODAとは別に」「軍等が裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける」(国家安全保障戦略)ことが決められ、さっそく実施しようとする動きが日本政府でみられており、非常に危険な状況と言えると思います。

私たちはこれからも、こうした動きに注視して問題提起の場を作って市民の声を届けていくことで、適切な方向へと進むことができるよう、活動を続けてまいります。

*当日の様子については、UPLANさんがアップしてくださっていますので、ぜひこのリンクからご覧ください。(UPLANさんのYoutubeサイトに飛びます)

ここからは、今回の院内集会に参加した、3人のJVCインターン生の感想をお届けします。

【院内集会に参加しての感想:ターナー・アリーシャ】

2時間半の間、JVC、ピースボートや東京新聞のご登壇者、お越しくださった皆さまの意見を伺い、外務省との意見交換も含め、夢中で色々な意見を拝聴してきました。

一番興味深く感じたのは外務省が対象とする同志国が決定していないことです。

武器はただ見せびらかすものではありません。

製造する前には、日本の同志国だがどこかということだけでなく、どのような結果を実現しようとしているのか熟考し、明確にする必要があります。

抑止力の最大化が目標とはいえ、武器の供与は、それ以上に大変な影響をもたらすからです。

また、若者がほんとんどいなかったことには驚きました。

SNSでも調べましたが、武器給与の問題が話題になっていない状態だそうです。

知れればきっと受け入れられないと思うので、若者だけでなく、より多くの人たちに知らせられるように何か出来ないものか、と強く感じます。

とはいえ、参議院の辻元清美さんは、この決定への経緯を質問して、外務省がはっきり答えが出せなかったので、今後もフォローアップしてくださるそうです。疑問視しているのは私たちだけではないことを知り、安心しました。

日本の政治に関わる討論を目の前で見るという経験は、きっと人生でも数少ない、素晴らしい機会だったと思います。

インターン生として参加の機会をくださったJVCに改めて感謝したいです。

【院内集会に参加しての感想:中村萌音】

院内集会に参加させて頂いたJVCインターン生の中村です。

ODAが軍事支援に使われる可能性が出てきたという重大なニュースを、3週間ほど前まで知らなかった私にとって、とても危機感を覚えるような内容でした。それぞれの立場の方々が、人生をかけて築いてきた意見を本気でぶつけ合う姿を間近で拝見し、大変貴重な機会となりました。

印象的だったのは、外務省の方々が、質問に対して答えきれていない部分を多く感じたことです。詳しい法律や条項の内容に関しては理解が難しい部分が多くありましたが、それら以外で登壇者や一般の方、議員の方から出た質問に対する答えが、議論になっていないと私でさえわかった瞬間は何度もありました。どのような過程で、軍事支援への拡大が決まったのか、またその過程は市民の意見を聞いた上での最善の方法であったのか、とても気になります。しっかりと市民の意見を聞くことこそ国のリーダーに相応しいと考えていた私にとって、疑問が残る形となりました。

国を守るために外務省という立場ですべきことがたくさんある中、市民の意見も聴いて重大な判断をし続けなければならない上、戦争に発展しそうになったら批判をされるという、難しい立場だからこそ答えられない質問が多かったのではないかと推察します。

しかし、今回のような集会を通して、動いてくれそうな議員の方や、行動を取るとおっしゃっていた外務省の方々の姿を見て、市民社会が声を上げ続けることの大切さを知りました。

もし、戦争につながるような重大な局面に今いるとすれば、これは私たちの世代にこそ大きなインパクトがある話題です。まず、もっともっと周りの友達がこの問題について知ろうとしてくれるよう、JVCインターン生としてできることを考えていこうと思います。

【院内集会に参加しての感想:細川未智】

院内集会の意見交換において、政府は、世界情勢を踏まえ、迅速に日本が安全保障の確保と強化をしていくことの重要性を主張してきました。ただし「同志国への軍事支援」、これは外交を通しての支援をマンデートとする外務省が決めるべきことなのか?本当にこれは世界の平和のため、日本の安全のためになるのか?確固たる原則や明確な実施要項が確立していない中ですでに20億円という莫大な国家予算が、この得体の知れない「非ODAの他国支援」に当てられようとしているのです。日本がこんなにもこの方向性に向かっていくことを急いでいる理由に私は納得するどころか理解することもできませんでした。

誰、そして何のために支援をするのか。支援の対象やあり方は非常に考えさせられるものであり、実際議論においても結論がでなかったものとして、とても難しい問いかけだと思います。また、すぐさま答えの出せる問いではないと思います。しかし、社会のさまざまな恩恵の裨益者として、そして誰かの支援者として社会の構成員誰しもが考えを持つべき課題であることは間違いありません。実際私も、社会の構成員それぞれが各々のコミュニティや組織に所属していて、役割を担うことや代表になることの責任を追っていかなければならない中で、所属している団体内はもちろん、社会との関わり方や他者の支援のあり方を常に考えさせられます。

社会との接点が少しずつ増え、その接触も大きくなりつつあることを実感し始めたところまだ未熟な私ではありますが、そもそも日本の動向を把握できている日本国民はどれくらいいて、彼らはそれについてどのように考えているのか、私はこれが気になります。

というのも、私自身JVCのインターン生として務めるようになるまで、この問題について全く知らず、これに関しての情報も見聞きしたことがありませんでした。今では人によっては新聞やテレビですら疎遠な存在となり、メディアやSNSではフィルタリングやパーソナライゼーションによってこういった情報が我々の手元に入りにくくなっているように思えます。実際現場の議論に参加してみて、こんなにも白熱して議題に関心を持って発言をしていらっしゃる方々の様子を伺わせていただいて、自分なりに考えさられたこと、学ばされたことが多くありました。画面越しで議論を視聴する、議論を模擬することとは全く別の世界観を味わうことによって、社会問題を自分事にするの客観的証拠となるのが考えを口にすることだと身にもってわかりました。

今後の国際協力のあり方を大きく変えるような決定が国の意思決定の場で下されそうとしている中、我々の無知、無関心はそのアクセルになりかねないと言えます。議論現場への入口をより多くの人に広げ、「知る」の人々を増やし、「発信する」の人々に変えていく。こういった公式でオープンな議論の場に、我々はもっと参加するべきです。社会の風潮や問題に対し、認知するだけに留まらず、いかに自分如きに関心をもち、発信していく人々を増やしていくか、これは私にとって非常に考えどころとなっています。

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