【緊急アクション⑦】NGOによる外務省への要請文:「G7外相声明」にもとづく具体的な停戦へのアクションを

11月10日、パレスチナ支援を行い、また現地の情勢を注視している日本の市民団体が、6団体合同で要請文を発出し、外務省に提出しました。

11月7、8日に東京で行われたG7の外相声明を受けたものになります。私たちは改めて「即時停戦」の早期実現に向けて、強いコミットメントとさらなる具体的なアクションを要請します。

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日本のNGOによる要請文

上川 陽子 外務大臣

 11月7・8日にわたり東京で開催されたG7外相会合の成果として、ガザ地区を巡る情勢への言及を含む「G7外相声明(以下、声明)」が出されました。日本が全世界への影響力を有する6カ国と連帯し、ガザにおける戦闘の人道的休止および人道回廊の設置などの一致した声をあげることができたことは、議長国として課された役割と責務だけでなく、「平和国家・日本」としてのあるべき姿の体現と受け止めています。11月6日に日本のNGOが提出した要請文「国際会議における即時停戦への働きかけ、メッセージの発信を」の内容に照らし合わせてみても、1)ー② 人質の早期解放の要求および、2)人道支援のアクセスの緊急確保、および人道支援の拡大に向けた人道回廊の設置と安全性の確保、の一部が反映されたという点、ガザだけでなくヨルダン川西岸地区の情勢についても言及された点においては一定程度評価できるものと考えます。

 一方で、人命救助のために最も重要である「即時停戦」への働きかけ、メッセージの発信という点では、残念ながら言及が不十分あるいはメッセージとしては弱いと言わざるを得ません。
 11月9日にイスラエルが明らかにした「1日4時間の戦闘休止」では、ガザの人々の命を守ることはできません。また、「戦闘の人道的休止」は、休止後に再び戦闘が起こりさらなる犠牲者が出ることへの容認になり得ます。一時的な戦闘休止では、現在の深刻な事態に無力であることは明らかです。ガザにおける民間人の犠牲は1万人を突破しています。国連の7名の独立専門家は、「パレスチナの人々はジェノサイドの深刻な危機に直面していると確信している」と警告しており、事態は一刻の猶予もありません。日本を含む国際社会にはジェノサイドを含む民間人犠牲の拡大を防止する責務があります。私たちは改めて「即時停戦」の早期実現に向けて、強いコミットメントとさらなる具体的なアクションを以下の通り要請します。

1)安全保障理事会での提案を含む「即時停戦」に向けたあらゆる外交努力の継続

 本年1月1日、日本は加盟国最多となる12回目の国連安保理非常任理事国となりました。安保理は国連機関で唯一、加盟国に強制力を持つ決議を出すことができます。すなわち、ハマス等とイスラエルに対して実効的な「即時停戦」の要請が可能な唯一の機関であり、安保理で停戦を求める決議を採択することは死活的に重要です。
 ガザでの戦闘行為に関して、11月9日までに米国・ロシア・ブラジルによる決議案が出されましたが、いずれも否決されました。特に拒否権を有する米国・ロシアの対立した主張により難しい調整が求められますが、日本の立場は過去の歴史的背景や国内の政治的影響からイスラエル擁護の傾向を見せがちな欧米諸国と異なります。イスラエルおよびパレスチナ双方の友好国である日本だからこそ、安保理で採決可能な「即時停戦」に関する議案を作成することができると、私たちは信じます。先の声明でも、「諸課題に対するコミットメントを果たすという我々の決意は揺るがず」と述べられており、今こそそのコミットメントを形にすべき時機と考えます。それこそが、即時停戦に向けて日本ができる最大の貢献であり、双方の市民の安全を保証することにつながると確信しています。

2)ガザの状況が「国際人道法違反」であることの明確な表明

 声明前文において、「我々(G7)は、国連憲章を尊重しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、強化する」と述べられ、世界各国が国際法を守ることにより国際秩序が維持される点が確認されています。今、現地の状況はまさしく、「法の支配に基づく国際秩序」が脅かされている状態だと認識できます。
 しかしながら、声明の1 イスラエル、ガザ及び西岸情勢では、今なお続くミサイル攻撃を含むハマス等の行為のみを非難し、イスラエルが自国及び自国民を守る権利として行っているガザへの空爆、ガザ市民の強制移転、命綱である通信の遮断、燃料の搬入拒否、病院・学校・難民キャンプへの攻撃などについては、明確な言及がなされていません。
 10月24日の時点で国連事務総長が「ガザの状況は国際人道法違反である」と述べ、10月29日にラファ検問所を視察した国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官も「ガザへの物資支援に対するイスラエルの妨害は国際人道法違反にあたる可能性がある」と警告しています。国連人権高等弁務官は11月8日、ハマスへの非難とともにイスラエルによる民間人への集団的懲罰と市民に対する強制退去は戦争犯罪に当たると表明しました。ハマス等の行為を非難するのであれば、イスラエルの行為も同じく「国際人道法違反」と指摘し、イスラエルによる民間人・民間施設への攻撃を強く非難しなければなりません。この点の表明なくして、G7は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持」と謳うことはできません。そもそも、紛争の根源は、イスラエルによる国際法に違反した占領と封鎖にあり、その是正なくして紛争の公正な解決はありません。

 日本政府は、10月27日に国連総会で採択された「人道的休戦を要求する決議案」を棄権しました。30日の衆議院予算委員会で岸田首相は棄権した理由を「ハマスのテロ攻撃への強い非難がないなど、全体として内容面でバランスを欠いている」と述べています。しかし「バランス外交」を謳うのであれば、今回の声明においてはハマスだけでなく、イスラエルの行為への非難も明確に述べてしかるべきと考えます。この立場の明確な表明こそが、双方の暴力を終結させる根拠となり、「即時停戦」を働きかける前提になるからです。
 
 私たち、パレスチナで活動する日本のNGOは再度、日本政府に対し、「即時停戦」と「人道支援の実施」のために、双方の政府や関係各所に上記を含む具体的な外交努力を行うことを強く要請します。

2023年 11 月 10 日
特定非営利活動法人国境なき子どもたち
特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター
特定非営利活動法人パルシック
特定非営利活動法人パレスチナ子どものキャンペーン
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン
認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ
(五十音順)

この要請文に関する連絡先

特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
〒110-8605 東京都台東区上野 5-22-1 東鈴ビル 4F
海外事業グループ パレスチナ事業担当 小林 麗子
Email: r-kobayashi@ngo-jvc.net

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