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ODA ウォッチ: プロサバンナ事業 第29回

プロサバンナへの政策提言活動から学んだこと

JVC専門アドバイザー(政策提言) 高橋 清貴
2021年8月 4日 更新
TE345-tokusyu.pngPDFは上の画像をクリック

さまざまな圧力にも屈せず、自らの食料主権を主張し続けた モザンビーク農民のことばと行動は、ついにプロサバンナという巨大事業を中止に追い込んだ。彼らは、国連が「小農宣言」を採択し、〝アグロエコロジー〞の制度化などが 着実に前進していくなかで、国際協力というものが、先進国と途上国が共に学び合うものへとシフトチェンジしつつあることを、私たちに示してくれたのではないだろうか。

モザンビーク農民の言葉の深み

プロサバンナに対する提言活動に長らく接してきて、改めてODA改革に関する多くの学びがあったと感じている。この紙面でもその都度、気づかされ、考えたことを書かせていただいたが、やはり、一番の学びはモザンビークの農民の言葉や行動が教えてくれたことだろう。

今でも真っ先に思い出されるのは、2016年11月28日に参議院会館で行われた院内集会のために来日した農民たちが、日本の外務省やJICA担当者と直接顔を合わせた時に発した言葉だ。

この時の院内集会は、直前にもモザンビーク政府が農民たちにさまざまな圧力や嫌がらせを加えたりしていた時期で、 政府側と市民・農民の側に緊張感のピー クがあった。当然、モザンビーク政府は農民たちの訪日を喜ばしく思っておらず、また日本の外務省やJICAも神戸での学会まで追いかけてきて会うことを強要したりと、農民たちは四六時中、両政府の監視の目に曝される言いようのない恐怖感に苛まれていた。そんな中で開催された院内集会におけるエステバンさんは次の言葉は、鮮烈だった。「私たちの農業のやり方がよほど持続可能だと思う」。

前年、国連でSDGs(持続可能な開発目標)が発表され、「持続可能」は確かにタイムリーな言葉だった。しかし、理由はそれだけではない。エステバンさんの言葉には、自分たちの農業への誇りと自信が溢れていた。

筆者は、長い間、ODAに苦しめられる人々を見てきたが、多くの現場で彼らは巨大開発の前に打ちひしがれ、自信を なくし、政府や企業に依存的になっていた。経済成長という大義名分をまとった「開発」は、人々を「持てる者」と「持てない者」に分断し、持てない者に「貧困」 や「脆弱」といったレッテルを貼って介入の正当化を図る。その結果、援助の対象とされた人たちは「社会」と「意識」の二つのレベルで劣位へ貶められる。開発は「非政治」の形を装った、収奪的な政治経済システムに基づく権力構造を固定化させる近代社会の「装置」なのだ。

しかし、エステバンさんは「プロサバンナ」という農業開発援助の「善意の仮面」に向かって昂然と、食料主権(食料・ 農業政策を決定する権利)を主張したのである。

広がるアグロエコロジーのうねり

時は、ビア・カンペシーナのイニシア チブで始まった種子を守るための農民運動が多くの市民やNGO、国際機関などを巻き込みながら広がり、国連による「小農と農村で働く人たちの国連権利宣言(小農宣言)」(2018年12月採択)に向けた食と農のあり方を見直す国際的議論の大きなうねりの中にあった。日本はこのうねりを捉えきれなかったようで、外務省とJICAも小農の価値に触れたエステバンさんの言葉に応答したコメントができなかった。実際、先の国連小農宣言にも、日本は棄権票を投じている。

今、「小農宣言」を一つのピークに、「食 (Food)」と「エネルギー(Energy)」と「ケア(Care)」を一体として地域の自給圏を見直し、新たな公共圏を再創造する実践概念として、「アグロエコロジー」が国連やEU諸国での制度化を伴いながら、世界的に市民権を得つつある。日本でも、農学研究者を中心に社会学者や生態学者など、多くの専門家も注目している。文化人類学を教えている筆者も、持続可能な社会に向けた新た な文化の創造という点で、概念の包括性や社会運動をルーツとするアグロエコロジーに関心を持っている。SDGsよりよほど本質的で、実践的だとも考えている。

院内集会でのエステバンさんの言葉は、示唆的であり、また教育的なものだっ た。先進国が「答と解き方」を教えるような国際協力の時代は、もう終わった。課題とその解き方を共に探し、そのために「学び合う」国際協力にシフトチェンジする時が来ているのではないだろうか。ODA改革の向かうべき方向性を示してくれたエステバンさんの言葉を、改めて胸に刻みたい。

No.345 支援する・されるから対等の関係に移行した今、タイとカンボジアの事業は終わるが新たな交流へ (2021年4月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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