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ODA ウォッチ 第28回: 対ラオス国別開発協力方針

経済成長志向へ偏重する ODAと市民の声

ラオス現地駐在 山室 良平
2021年2月22日 更新
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「被援助国の政治・経済・社会情勢を踏まえ、当該国の開発計画、開発上の課題等を総合的に勘案して作成する」という外務省ODAの国別開発協力方針(注1)。今般、JVCは対ラオスの同方針の改定にあたり、パブリックコメントという形で意見を提出した。採り入れられた意見もあったが、最終的な方針の内容や策定プロセスへの懸念も残る。

2013年T&E300号でJVC調査研究・政策提言担当(当時)の高橋清貴氏による「モザンビーク・プロサバンナ事業とは何か?」から始まったこの「ODAウォッチ」。今回は、ラオスへのODAについて書いてみたい

※(注1)...詳しくは外務省のWebサイトhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/kuni_enjyo_donyu.html(l 2020 年12月16日最終閲覧)を参照。

対ラオス国別開発協力方針とパブリックコメント

国別開発協力方針は実情に見合った配慮の行き届いたODAを行うために重要な指針のはずだ。付随する事業展開計画はどのようなプログラムが現地で行われるのか、個別案件名などを列挙している。

2020年5月18日から6月15日まで、外務省の対ラオス国別開発協力方針案に係るパブリックコメントが募集され、同国で活動するNGOとしてJVCもコメントを提出した。その後8月ごろにこれへの回答が出されるとともに、最終的な方針と事業展開計画が発表された(注2)。「提出された諸意見(パブリックコメント)の概要と外務省からの回答」のうち、一部内容が削られているものの、4.〜.がわれわれの出した意見にあたる。6.の「SDGsの達成を援助の基本方針として位置づけるべき」という意見は方針に反映され、よりバランスのとれた内容になったと思われる。一方で、明確な回答が得られなかったものも多かった

なかでも懸念されるのは、経済成長志向へ偏重していること、そして原案策定段階でラオスにおけるNGOからの意見募集が見られなかったことだ。

※(注2)...対ラオス国別開発協力方針(案)に対して提出したJVCのパブリックコメント(2020年12月16日最終閲覧)。なお、方針と事業展開計画の日付が2019年4月となっているが、今回のパブリックコメントの反映はなされている。

経済成長ばかりでなく

削られてしまったが、7「.重点分野(中目標)(3)産業の多角化と競争力強化、そのための産業人材育成」についての意見は、経済成長の達成を指向するあまり、未だラオス社会が内包している社会的課題への対応が不十分な、バランスの欠いた内容になっている、ということが趣旨であった。前回2016年付の事業展開計画では、農村地域において自給が達成できていない点や生産が天候に大きく依存し、技術が不足しているために生産性が低く留まっていることなどが課題として明記されていた。しかし、今回の改定にあたってこれらの点は抜け落ちてしまい、「バリューチェーン構築」といった商品作物の生産や流通の強化ばかりが課題とされている。販売する以前に自分の世帯で食べるコメが足りない農家も多いなかでこれらがどこまで優先されるべきかは疑問だ。

他の重点分野も含めて全体がより経済成長を志向しているように見受けられる。ラオス政府のかねてからの大目標「後発開発途上国脱却」を後押しするという位置づけのためだろうが、経済成長ばかりでない開発協力のあり方を示してもよいのではないか。土地収用問題などの投資プロジェクトがもたらす負の側面、また有償プロジェクトで増大している政府債務の返済が新型コロナウイルス感染拡大の影響でさらに難しくなっていると言われるなかではなおさらだ。

顧みられにくいが不可欠な市民の声

本方針の原案策定段階で、知る限りラオスにおけるNGOへの意見募集はなかった。そもそも外務省は政府系機関のほか「相手国政府、他国援助機関、NGO、企業等の意見を踏まえる」としているが、こちらから声をかけないと原案策定をしているかどうかもわからない。パブリックコメントが代わりになるという見方もあるが、原案作成段階で受ける関係者からのコメントと同様の機能や役割を果たすとは考えにくい。

他国についても同様であるとすれば、ODA全体に関わってくる。専門家が閣議決定される前のODA案件の検討を行う外務省の開発協力適正会議ですら、疑問を呈しても実際に案件見直しとなることはないという(注3)。声を上げても顧みられないのではないかという念すら覚える。

しかし、市民社会の側から疑問点を指摘し、そのことを記録に残していくことの積み重ねが、ゆくゆくは政策の改善に資するはずだ。少なくとも誰も声を上げないのであれば、問題含みの流れに掉さすことになりかねない。JVCは引き続き政策をチェックし、提言を行っていく。

※(注3)...高橋清貴,2020,「ODAの中心にSDGsを置くことは、不可能なのか?」JVC『Trial&Error 342号』

No.344 1980年代と90年代に始めた事業から見える意義 そして教訓を語りつくす (2021年1月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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