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ODA ウォッチ: プロサバンナ事業 第27回

ODAの中心にSDGsを置くことは、不可能なのか?

JVC専門アドバイザー(政策提言) 高橋 清貴
2021年2月22日 更新
no342-prosavana.jpgPDFは上の画像をクリック

外務省やJICAの過去の過ちから導かれる教訓をODAに活かすため2011年に立ち上げられた「開発協力適正会議」委員を退任した高橋。
当初の目的から外れ、「国益ODA」に走り続けている会議の現状と、残された課題について振り返る

私事だが、6月の会合をもって、長年務めてきた外務省の開発協力適正会議委員を退任した。2012年の立ち上げ当初からのメンバーとして、隔月毎の会合で51回、閣議決定される前のODA案件の検討を他6名の委員と共に行ってきたが、心機一転、私とは違う切り口で市民社会の視点からODAの質の改善を図ってもらうこととなった。

適正会議は「過去の教訓を今後の案件形成に適正に反映していく」という初回会合での加藤政務官(当時)の冒頭挨拶にあるように、ODAの質の改善のため外務省やJICAが自ら過去の過ちを認め、教訓を導き出し、再び起こさないようにするべく必要な改革・改善を進めることを目的と「していた」。過去形なのは、翌2012年暮れの政権交代で、安倍内閣下で政策が大きく右旋回した煽りを受け、ODAも現在の経済成長優先の開発言説に至ったからである。日本のODAは今、経済成長主義に加え、自国への見返りをあからさまにし、官民連携や軍への支援など、アベノミクスと対米協調の基調という昔懐かしい援助に先祖返りしている。2015年に国際社会がSDGsを掲げるようになってもそれは変わらず、説明資料として用意される案件概要書にもお飾り程度に「SDGs」の言葉が加えられるだけで、経済システムを変革し持続可能な社会をつくろうとする姿勢は微塵も見えない。委員としては、この9年の間ほぼ毎回、先祖返りしたODAにあの手この手で疑問を突きつけ、国際協力のあり方について根本から 発想を転換するよう促してきたが、力及ばずだった。JVCの「政策提言アドバイザー」としての肩書きを頂きながら、ODA改革において実質的な成果を上げられなかったわけで、この紙面を借りてお詫びしたい。

では一体、適正会議ではどんな議論が行われているのか?ここ数年は援助の目的よりも、まず外交上の意義について説明を受け議論する流れになっている。「首脳会談共同声明において〜」とか、「両国関係が戦略的パートナーシップに格上げされ〜」とか、そんな外交の文脈がODAを行う意義としてまず説明されるのだ。あからさまな「国益ODA」であり、この時点で既に実施の「妥当性」の判断が下されてしまっているといえる。この後にいくら援助効果などを技術的に、あるいは市民社会の観点から問題提起しても、「念頭において準備調査を行います」との回答を得るばかりで、実際に案件見直しとなることはない。外務省やJICAは色々な専門家から質問を受けることで良い学びの機会となっているというが、実施が決まった「出来レース」のような議論で、果たしてどこまで真剣な学びになっているのか甚だ疑問である。実際、この9年で「ODAの質の改善」に資する教訓は何一つ残されていない。

つまり、ODAという国際協力の政策と実施を実質的に担う外務省やJICAが「生きる世界」では、SDGsが理念として求めている「変革」は主流化されていない。彼らの最大の関心事である「外交上の意義」という、SDGsから最も離れたところの要因において妥当性を議論することが彼らの日々の世界であり、すべてなのだ。社会心理として良く知られたことだが、社会的動物である人間は、身近な他者の存在や行動を意識的、無意識的に同調させながら日々の行動や判断、振る舞いを決めている。自分の個人の中にある理念や意思だけで行動や判断を決めるというのは、近代社会の神話であり、現実は周囲の人間に影響を受けながら行っているのである。似たような考えを持つNGOで働くことの居心地の良さも、これに起因する。

外務省やJICAも例外ではない。実際に机を共にしたことはないが、彼らの日常(特に業務)の中でSDGsを意識するのは、せいぜい机の上のゴミの分別と1階のコンビニでレジ袋をどうするか迷うときぐらいだろう。ODAを計画する仕事は、上司への忖度や自分の出世、国会議員のわがままな要求や質問への対処などで頭を悩ませる日々であり、自ら画期的な社会変革を導くような案件をつくろうなどとは考える余裕もないのであろう。彼らにも自分の暮らしがあり、地位と給料を守らなければならない。その意味で言えば、彼らもNGOも同じ人間だ。そう考えなければ、誰よりもSDGsに精通しているはずの外務省国際協力局やJICAの人間が、SDGs達成の足をひっぱるような案件の必要性を真剣な顔で訴える理由を説明できないのだ。

果たして、ODAやそれを行う政府の人間に、SDGsが変革のキャッチフレーズとして標榜する「Not Business As Usual」を求めることは不可能なのだろうか?彼らを、SDGsを中心とした行動へと変容させるには、どうしたらよいのだろうか?この問いは残されたままだ。そして、その答えを見つけられずに、筆者は適正会議を去る。今、Public Awarenessや困った人々への社会的サービスの提供というNGOの役だろうか? 彼らを、SDGsを中心とした行動へと変容させるには、どうしたらよいのだろうか?この問いは残されたままだ。そして、その答えを見つけられずに、筆者は適正会議を去る。今、役割の大切さを改めて感じている。

No.342 コロナ禍だからこそ JVCは足軸を変えない (2020年7月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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