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抑圧下で小農が続ける実践、連帯と社会変革

地域開発グループマネージャー/南アフリカ事業担当 渡辺 直子
2020年8月 9日 更新

モザンビークの小農は、日本のODAも含め海外投資による土地収奪に苦しみ、抗議の声をあげれば政府などからの弾圧を受ける。それでも彼らは、長年の農業実践に誇りをもち、他地域や他国の小農と連帯し、自らの実践と課題を相対化しながら、学びと内省、実践を繰り返し、社会変革を起こしている。今、JVCがなすべきは、単なる技術支援に留まるのではなく、活動地の人たちが世界との関わりのなかで立ち位置を確認し、未来を描くための対話にあるはずだ。

民主化後の南アフリカ 搾取と抑圧の再生産?

JVCの南アフリカ(以下、南ア) で活動し始めてしばらくした頃、活動するのが怖くなったことがある。

1994年まで約半世紀続いた南アのアパルトヘイト(人種隔離政策)。白人以外の人々が、人権・主権を奪われ、自分で道を切り開く可 能性を否定され、自分の一生を他の 誰かにコントロールされて生きることを強いられた。その終焉は「被抑圧」の側に置かれた人々が、圧倒的な暴力と抑圧下で、自由を求め、想像を絶する犠牲を払って闘ってきたからこそ、実現したものだ。

だが、そうまでして手に入れた民主化後、南アは、現在に至るまで、「格差社会」「犯罪国家」「HIV感染拡大」...と、いずれにも「世界一 の」という枕詞をつけて形容されるほど、劣悪な社会状況が続いている。

アパルトヘイト後の「自由」とは、体制がつくり上げた、限られた人に巨大な富が集中する社会経済構造のなかに、一人ひとりが突然放り込まれることを意味した。その結果、成功を収めた人もいる一方で、大半の人が取り残され、苦難に直面する。

そんな歴史と現状を知るにつけ「この社会構造」下で安定した暮らしを求めることは、搾取と抑圧の再生産に加担しているように思われ、 JVCの活動が、自由を求めた人々の思いに報いることができているのか、よくわからなくなったのだ。

抑圧下で未来のビジョンを描くモザンビークの小農

結局、その後、南アでともに活動する人々から、どんな状況であれ、人々をエンパワメントする活動のその先には、搾取と抑圧を再生産する構造を乗り越えるための「社会の側の変革」を、常に見据えることこそが必要なのだと教えられた。目の前の「困難な現在」に取り組みつつも、「未来の世界」の在り方を思い描くということだ。

だが、具体的に誰が何をどうしたらいいのか。まったくの手探り状態だった約8年前、日本・ブラジルがモザンビークで行うODA/大規模農業開発事業「プロサバンナ」に対し、抗議の声をあげるモザンビークの小農に出会った。以来、私は、小農らの抵抗と農業の実践を通じた社会変革を、側で見る僥倖に恵まれてきた。

モザンビークの小農は、海外投資による土地収奪や、その抗議の声に対する政府などからの弾圧など、暴力と抑圧に苦しめられている。だが、そんな状況下でも、「小農は地球の守護者」と言い切る自負と、自らの農業実践に基づいた次世代にわたっての発展をとのビジョンを持ち、以下のような活動を続けている。①自分たち小農を「何も知らず、貧しい」ゆえに「教えられる/変えられる対象(客体)」として描く資本の論理が支配する社会や援助の在り方に対して声をあげること。②それに対し、「別の世界」の在り方を、自分たちの農業の実践を通じて示すこと。 ③これらの抵抗運動の経験と農業実践を、地域、国、国際レベルにおいて他の小農と連帯することで共有、そこでの学びをさらに自らの活動に 還元、発展させること。

18年12月に国連総会で承認された「国連小農権利宣言」(注1)は、こうした小農の経験と知見を、世界大の連帯運動を通して国際規範まで昇華させたものだ。この宣言は、小農という社会集団が抑圧下にある事実を認め、小農が保持する様々な権利を規定し、また小農が果たす役割(貢献)を認めた点で画期的だった。

自己を相対化させるような対話こそを担いたい

モザンビークの小農は、世界的な小農運動ビア・カンペシーナ(注2) の一員として、「宣言」の実現の一翼を担ってきた。こんな風に、世界の小農は、抑圧下にありながら、自分たちとその農業の価値を社会の構造・仕組みに反映させる運動を展開し、社会変革をもたらしている。

とはいえ、その実践は暴力と対峙する命がけの闘いだ。モザンビークの小農がなぜそこまでできるのか。その強さをもたらすのは「自己の相対化と連帯」であると私は思う。

世界と関わるなかで自分を認識する。すると、自分の実践の意義と、自分の置かれた社会的状況という「個別具体的なひとつの事例」を、 普遍化された文脈に置き換えることができる。それが連帯につながり、 連帯がまた自己の相対化をもたらし、自分に還ってくる。そうして互いに支え合い、強く発展していく。

その実践に学ぶなら、ある意味ヨソ者として現場に関わるJVCの役割は、ともに活動する人たちが「情報やスキルを獲得し、置かれた環境を改善する」ことに留まるのではなく、自己を相対化させるような対話を行うことではないか。その対話は、私たち自身の相対化と内省、実践にもつながるだろう。それこそが「ともに考える」ことだと思う。

「いま、声があげられない」人々も、 相対化を通じて「目の前の課題」が普遍化されれば、世界のどこかで同じ課題に対して闘う人たちに連帯することができるし、それが闘う人を支えることにもなる。

暴力や抑圧と闘ってきた/いる人のおかげで今の世界があり、私自身その果実を享受している。だからこそ、変革の仲間を増やし、闘う人との連帯と協働の輪を広げることは、JVCの大切な役割なのだと思う。

◎注1...国連小農権利宣言。正式名称は「小農と農村で働く人びとの権利に関する宣言」。小農はその土地の食料や土地、水などの自然資源に権利を有し、その文化的アイデンティティや伝統知識の尊重、種子や生物多様性に関わる権利が保護されるべきと謳っている。

◎注2...ビア・カンペシーナ(La Via Campesina)。スペイン語で「農民の道」を意味する小農組織。1993年に発足、2020年現在、81カ国から約2億の小農が加盟。新自由主義的なグローバル化に対して「食料主権」を唱え、抵抗運動、提言を行ってきた。

No.340 人々の足元から社会を変えていく。いままでも、これからも。
1980→2020 JVC40周年記念号 (2020年5月10日発行)
に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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