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ODA ウォッチ: プロサバンナ事業 第26回

ODAから垣間見える国家の姿と市民のあり方

地域開発グループマネージャー/南アフリカ事業担当 渡辺 直子
2020年8月 8日 更新
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「ODAウォッチ」と題された本連載の執筆にあたり、これまで渡辺は以下のことを意識してきた。一番の当事者である「現地小農から見た」プロサバンナ事業がどのようなものかを伝えること。それを受けて、納税者である私たちが、事業実施主体である外務省・JICAという「権力の側」をウォッチすること で見えてくること/考えるべきことは何かを検証すること。今回は、私たちNGOという「人びとの側」に見えた気がかりについて考えてみた。

外務省のルール無視

JVCと協力団体は、プロサバンナ事 業に関して、過去7年間に渡り「NGO 外務省定期協議会/ODA政策協議会」 に議題提案し、外務省と議論してきた。同協議会には、一定のルールとプロセスがある。①外務省とNGO双方から議題提案が可能、②提案側が議案書/資料を準備、相手側への質問とともに「事前に」提出、③これに基づいて外務省・NGO双方の協議会コーディネーター立ち合いのもと、関係者間の「事前協議」が行われ質問への回答もなされる、といったものだ。その後、この事前協議の内容を受けて議案書は最終化される(注1)

しかしながら、過去一年ほど、外務省のプロサバンナ事業担当課は、①事前協議参加を一方的に拒否・ボイコットしており、事前質問への回答もなされない。 一方で、②私たちの提案議題の「タイトル」を変更するように注文をつけてくるようになった。それが昨年12月の直近の会議において、外務省側の担当者が変わり、11年ぶりに事前協議に参加した。しかし、事前質問へは直接の回答はなく、 一般論のみが述べられた。また、②事前にNGO側からタイトル案を5つ用意したにもかかわらず、外務省案が別途示され、結果として変更を強いられた。

NGO側が理解と配慮を求められる構造

外務省のルール違反と説明責任放棄は明白で、たいへん深刻な問題だ。しかし、今回私の心にひっかかったのは、この状況下で、事前協議後に、NGOコーディネーターから私たちに向けられたことばだった。すなわち、A・今回の担当課の参加には外務省側の相当な努力があった。ついては、B・議案書の中で事前協議における外務省発言の言質をとらないよう留意が必要、C・外務省のタイトル案は一応論点を踏まえているのでは、と。

いずれもNGO側に理解と配慮を求める内容で、驚愕した。そもそもa・事前協議への不参加自体が異例かつ問題なのであり、b・一般論の先にある真意を確認するためにその発言に言及せざるを得ず、c・NGO側から外務省に説明責任を求めて議題提案している以上、本来外務省はタイトルに口を挟んだり、代案を出す立場にはなく、「介入」ではないか。そうコーディネーターに問いかけた。

誤解しないでいただきたいが、NGOコーディネーターが悪いのではない。彼らは外務省のこうした態度に毎回辛抱強く対応し、最善をつくしてくれている。 だからこそ、なぜ彼らがNGOの側に配慮を求める発言をするにいたったのか。そこに違和感をもったのだ。

私からの問いかけに対し、コーディネーターらは共感と理解を示しつつ、こう説明した。協議会の場を作っていくプロセスは、圧倒的なパワー(権力)を持つ政府・外務省との交渉事で、「すべきこと」と「できること」に差異が生じる。 ゆえに「協議の機会を無にしない」ためにも「NGO側にお願い」したのだ、と。

そう言われて、ふとわが身を振り返る。これまで、タイトルに関して不毛な押し問答を繰り返しながらも、最終的に外務省案で「合意」してきた。必要以上にやり取りを続ければ会議の開催に間に合わず、協議会自体をボイコットしてくるのではという不安がなかったと言えばウソになる。毎回「妥協」してきたのだ。

権力への恐れ/諦め/麻痺がもたらす先を見すえて

権力の介入に対する怒りがあるのに、協議の場すらなくなる可能性を懸念するという「権力への恐れ」。そのために、本来なされるべき「権力に対する問い」を「市民からの配慮と対応」で相殺する「諦め」。そして、事前協議不参加という「ルール無視が常態化」され、参加という本来あるべき状態が「努力」と評価されるのは「麻痺」だ。

民主主義国家の基本は主権在民である。国家/政府は国民の意思を受けて設立・運営される。ゆえに、私たち国民/ 市民には国家が適切に運営されているか監視する役割があり、様々な権利が保障され、強大な国家権力からの独立性が担保されている。しかし、権力への恐れ、諦め、麻痺...それらはいずれも権力側の問題の隠ぺいと、私たちの思考停止をもたらし、いずれは監視機能の不全をもたらす。その先にあるのは、歴史に学べば、民主主義の崩壊、そして全体主義だ。

たかがODA下で起きていること、なんと大げさな、と思われるだろうか。しかし、政府が税金を使って行っている以上、国家運営に関わる問題で、「されどODA」。自分たちの社会のありようを映す鏡にもなるのだ。だからこそ、小さな断片であれ違和感を見逃さず、問うていく責任が、JVCにはあるのだ。

◎注1...事前協議自体は非公開だが、議案書の最終化にあたって、その内容を「反映」させることができる。 その議案書が提出される政策協議会は、議案書・議事録ともに公開されるので、一定程度は可視化される。

No.339 森は生活のよりどころ 開発と水害に直面するラオスの今 (2020年1月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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