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ODA ウォッチ: プロサバンナ事業 第25回

分水嶺に立つODA

JVC専門アドバイザー(政策提言) 高橋 清貴
2019年10月16日 更新
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持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)は、キャッチーでカラフルなアイコンとともに、ここ数年でようやく一般的にも知られつつあるようになってきた。そこでは、多様なステークホルダーのそれぞれが国際的課題の解決に向けて取り組むべきだ、と謳われている。目指すべき「共通の目標」を手に入れた一方で、同床異夢的に推進されていく「セクター間連携」に対する懸念があることをお知らせしたい。

ODAの「近代化」とは

今年二月、JICA横浜で2018年度第三回ODA政策協議会が開催された。プロサバンナ事業についても、昨年12月に国連総会で「小農と農村で働く人びとの権利宣言」が採択されたことを受けて、現場から見えるODAの実態と小農の置かれた状況について、この一年を振り返りJVC渡辺が報告した。今回は、その協議会で国際協力NGOセンター(JANIC)が議題としてあげたOECD-DACにおけるODA定義の見直し議論について取り上げる。

現在、主要な先進国が行っている政府開発援助(ODA)は、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)による定義に基づいて実施されている。過去半世紀、このODA定義は変わることなく使われ、その定義の下で統計算出や相互批評(Peer Review)を通した質の改善が続けられてきた。ところが、数年前からこのODA定義が「ODAの近代化」(ODA Modernization)の名の下での見直し議論が行われている。一 般のニュースで取り上げられることもなく、普段からODAに関心を持たない人にはどうでもよい些細なことだろう。しかし、この議論は、単にその国がいくらODAとして貢献したかという統計算出の問題ではなく、「援助とは何か」といった根本概念の見直しを含んでいるように思われる。

結論から言えば、「ODAの近代化」とは効率化であり、それもODA単独ではなく、多様な援助主体(主には民間セクター)からいかに資金を引き出すか、そのための触媒になることを主要な役割とするということである。この背景には、持続可能な開発目標(SDGs)がある。

官民連携は諸刃の剣

国際開発における官民連携を強化するために、Private Sector Instruments(PSI)というツールが議論されている。一定の条件の下で、途上国における企業活動に対して融資したり、信用保証したものをODAとしてカウントしようというものだ。しかし、実施に際する「一定の条件」の中身についてDACメンバー国間で意見が分かれ、合意が出来ていない。これに対しては、昨年10月、関心を持つCSOが共同声明を出し、議論の成り行きに懸念を表明している(注1)

一般論として、SDGs達成に民間セクターが不可欠であることに反対しないが、格差を拡大する今の経済のあり方や環境上の制約を考えれば、そこに一定のルールが必要であることは言うまでもないだろう。しかし現在、その「ルール」は企業自身の解釈に任されており、政府も企業の自由な活動を阻害しないという名目で介入を避ける傾向にある。従って、官民連携は諸刃の剣であり、適切な運用がされない場合、以下のような問題があることを、前述の共同声明は指摘している。

  • 貧困削減や格差の是正といったODAの本来の目的から偏向していく。
  • 人権侵害や環境破壊、紛争や不正な資金流用、脱税などの負の影響をもたらす可能性を高める。
  • 自国企業の投資促進などで「隠れタイド援助」となる。

とりわけ、筆者が重要だと思うのは、PSIよる官民連携促進が国際協力にどのような「価値」を加味しようとしているのか不明瞭である、という点だ。つまり、貧困や格差、環境問題など社会分野、環境分野の民営化、商業化が進み、それがODAというベールを纏うことで、「開発」や「国際協力」そのものの言説が変わってしまうことである。

確かに企業には、貧困削減や格差問題についてできることがあるだろう。例えば、雇用促進、労働者の福利厚生の充実、税金による資金的貢献、CSRによる社会貢献などである。これに対し、企業活動の自由度が強調されれば、資金の使われ方の不透明性を増し、また格差や不公正を正すという「条件付け」(Conditionality)というODAがツールとしてもっている機能が果たせなくなるであろう。後者のConditionalityについては、長年議論がある問題であり、必ずしも肯定的に捉えられるものではないもの、コントロールが利かなくなった「開発」への危惧は筆者も共有する。

いずれにしても、現在進められているODA定義の見直し議論は、自由と公正のバランスにおいて、誤った開発言説をもたらす可能性があること、そして、日本のODAはその誤った方向に棹さしていることを指摘しておきたい。

※注(1)外務省サイト内の該当会議の会議資料より。https://ngo-jvc.info/2xFKYXp

No.337 住民のニーズに寄り添った震災と原発事故からの8年間 (2019年7月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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