避難民とホストコミュニティを対象とした持続可能な食料安全保障と生計向上支援
2023年4月に首都ハルツームで勃発した国軍(SAF)と即応支援部隊(RSF)との軍事衝突は現在も続いており、戦禍はスーダン各地へ広がっています。戦闘の影響を受け、国連(OCHA, 2025年9月時点)の報告によりますと、国内避難民が約900万人、国外に逃れた人が約300万人にのぼり、世界最大の避難民危機に瀕しています。この大規模な避難は、避難をしている人々だけでなく、受け入れコミュニティ(ホストコミュニティ)にとっても大きな負担となっています。
紅海州は戦闘地域から比較的離れていることもあり、25万人以上の国内避難民を受け入れています。そのうちの75%以上は、地域住民の人々が受け入れ(親戚や知り合い)、残りの人々は学校や公共施設、仮設テントで暮らしています。現在、紅海州には73か所の避難民集積地が設けられています。
しかし紅海州は、自然環境の不安定さや貧困により、生計の基盤がとても脆弱です。もともと伝統的に農業や牧畜を営んできたベジャの人々(紅海州に住む少数民族)は、移動や放牧など柔軟な手法を用いて干ばつや飢饉に対応しながら暮らしてきましたが、中央政府からの差別的な政策によってその生活基盤は大きく損なわれてしまいました。その結果、持続的ではない木炭の生産などに頼らざるを得なくなっています。
木炭1袋40,000SDG(約2,468円)で売れる
ポートスーダンでは清潔な水の確保が喫緊の課題である。JVCは給水設備の支援を予定している。
ホシリ地区はその典型例です。かつては広大な耕作地が広がっていましたが、約3割が産業や行政用に転用されてしまいました。農業では種子の改良や農機の導入が進まず、手作業に頼らざるを得ません。また、戦闘の影響により種子を含む物価も高騰しています。漁業も伝統的な方法にとどまっており、新しい技術を取り入れれば大きく生産性を高められる可能性があります。都市部へのアクセスは良いものの、若者への職業訓練が不足しており、雇用機会は限られています。市場との連携も弱いため、農漁民は中間業者に搾取されやすい状況にあります。特に女性は販売の機会を得にくく、自立が難しい現実があります。
石油会社が接収した土地
トマトは1箱10,000SDG(約617円)で仲介業者に売るが、市場では30,000SDG(約1,851円)で売られる
そこでJVCは、UNDP(国連開発計画)と現地団体とのパートナーシップのもと、農業・漁業支援や職業訓練、インフラ整備など包括的な活動を実施します。
対象地域の現在の状況、差し迫ったニーズへの支援とあわせ、研修を通して地域住民の対応能力の強化を目指します。
こうした状況の中で、人々の生活を支える手段を支援し、市場とのつながりを改善することは、該当地域の貧困を減らし、人々の持続的・自律的な生活向上に繋がります。
プロジェクト名 | 避難民とホストコミュニティを対象とした持続可能な食料安全保障と生計向上支援 |
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活動地 | スーダン紅海州ポートスーダン・ホシリ地区 |
期間 | 2025年6月~2026年3月 |
パートナー団体 | Abuhadia Society for Women and Community Development (ASWCD) |
(1)農業・漁業支援
農具、漁具、種子などを配布し、農業・漁業研修を実施します。
(2)家畜支援
健康・栄養状態の改善を目的とし、対象世帯に家畜を配布し、研修を実施します。
(3)職業訓練
市場のニーズに適した職業訓練を行います。
(4)コミュニティインフラ建設/修繕
コミュニティの重要なインフラの建設/修繕を通して、若者の緊急雇用を生みだします。
(5)給水設備支援
対象地域の住民の水へのアクセス改善を目的とし、給水施設の修繕/新設を行います。
(6)太陽光ライト設置
夜間の女性の安全と安心を守るため、ソーラー街灯を設置します。
(7)コミュニティメンバー研修
地域および地域機関の能力や自治力強化を目指し、コミュニティ委員会を組織し、研修を実施します。研修を通し、地域での意思決定などにおいて、地域住民のさまざまな声が考慮・反映される仕組みの基盤をつくります。
パートナー団体(ASWCD)のスタッフとJVC・今中によるコミュニティ研修の様子
女性向けコミュニティ研修の様子