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イエメン

【イエメン】「紛争と平和の中間」の暮らし #01

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こんにちは、元インターンの沓掛里美です!

皆さん、「イエメン」という国を聞いたことはありますか?
イエメンは、アラビア半島南西端に位置するアラブの国です。紀元前から交易で栄えた歴史を持ち、5つの世界遺産を有しています。一方2015年から激しい内戦が続き、「世界最悪の人道危機」と呼ばれるまでの状況に陥りました。現在では大規模な紛争は起こっていないものの、停戦の見通しも立っていません。

ですが、「そもそもイエメンなんて今初めて聞いた...」という方もいらっしゃるかもしれません。2023年10月にイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への大規模な攻撃が始まって以降、イスラエル本土や関連船舶へのミサイル攻撃を続ける「フーシー派」という組織の名前と合わせて聞くことは増えましたが、それ以外に日本でイエメンについて伝えられる情報は多くありません。

そこでこの記事では、現地を訪れたスタッフの方からお聞きした、2024年10月時点でのイエメンの様子をお伝えします!発展する都市、戦争の傷跡、物価高...見えてきたのは、戦争でも平和でもない中途半端な状況と、そこを故郷とする人々の複雑な思いです。

暫定首都アデン

現在、一般人がイエメンに行くのは残念ながら容易ではありません。2024年10月に出張したJVCのスタッフも、とても手間のかかる手続きを踏んだ上で、飛行機を3回乗り換えてやっと辿り着くことができました。
イエメンへの入り口は、暫定首都となっている南部のアデンという街です。クレーター地区やタワヒ地区という商業地区もあり、海岸沿いではレストランやカフェが営業しています。新しいホテルやレストランも次々にオープンするなど、アデンは一見、経済的に成長しているように見えました。

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アデン市内に新しく建てられたホテル

しかしパートナー団体のスタッフによると、このような経済活動で恩恵を受けているのはお金のある人だけで、物価高を受けて庶民の生活は苦しくなっているといいます。実際、街中ではホームレスの方を少なからず見かけました。窃盗や殺人などの犯罪も増え、治安も悪くなっているそうです。
紛争の傷跡も目につきます。道路にはチェックポイントが多々あり、ホテルに入る前には車に武器を乗せていないかチェックされました。壁に弾丸が残っていたり空爆で崩壊したままだったりする建物も多く、この地で激しい戦闘が行われたこと、現在でもその後遺症が続いていることを痛感させられます。

古都タイズ

一方、イエメンの文化的な中心地はタイズという街です。イエメン第三の街で商業都市であると同時に、12世紀から続く古都でもあります。家々の扉や窓には華やかで繊細な装飾が施され、郊外には山や段々畑が連なる美しい都市です。
この街は標高が高く、内陸部には標高3,006メートルのサーベル山があります。街を一望できるこの山の頂上は、景色を楽しみながらくつろげる憩いの場です。

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標高3000mを超すサーベル山頂からの眺め

タイズには主な観光地が二つあり、一つはアシュラフィーヤモスク、もう一つはカーヒラ城と言います。アシュラフィーヤモスクは、13世紀建造の内観が大変美しい建物です。タイズが激戦地となった際には砲撃の被害を受けましたが、現在は修復も終えているようでした。

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アシュラフィーヤモスクの天井装飾

カーヒラ城は12世紀に建てられた城塞です。こちらも紛争の被害を受けて閉鎖されていましたが、現在では一部を除いて開放され、夜のライトアップも再開されました。家族連れや女性グループ、カートという覚醒作用のある草を噛む男性たちなどで賑わっています。

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タイズの夜景の中に浮かび上がる、ライトアップされたカーヒラ城

現地を訪れたスタッフが撮ってきた動画です!タイズ市街の様子が分かります。

タイズは2015年に内戦が始まって以来フーシー派によって封鎖されていましたが、2024年に9年ぶりに封鎖が解かれました。治安は回復傾向で、旧市街には活気があります。一方、ストリートチルドレンはアデンよりも多く、空爆で崩壊したままの建物も見られました。

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斜面に連なる美しい建物の中には、崩壊したままのものも

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「紛争と平和の中間」の暮らし#02につづきます!

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