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イエメン

国内避難民を対象とした「子ども広場」支援 2024年度活動報告

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アンサール・アッラー(フーシー派)と暫定政府間の内戦が2015年から続き、5歳未満の子どもの多くが慢性的な栄養失調で、学齢期(6歳~15歳)の子どもの39%が不就学の状態にあります(国連:2024)。南西部に位置するタイズは両勢力の境界に位置し、今も散発的に戦闘が発生しており、暫定政府側では2番目に避難民が多い県です。特に生まれた時から戦争下にいる子どもたちは、空爆・砲撃や度重なる避難などから精神的不調を抱えているにもかかわらず、十分なメンタルケアがなされていません。フーシー派によるイスラエルへのミサイル攻撃、英米やイスラエルによる空爆の応酬は報道されますが、こうした避難民の状況には国際的な注目が集まっていません。

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研修を受けた保護者が地域の住民に少人数による啓発を行っている

2024年度の概要

2024年度の「子ども広場」支援の活動目的は、紛争の影響を受けた子どもやその家族が利用できる児童保護サービスへのアクセスが改善されることです。
活動地は、タイズ県ジャバル・ハバシ郡にある避難民キャンプで、新たに2カ所の子ども広場を開設しました。
受益者層は、国内避難民で、特に子どもたちです。子ども広場に参加した子どもたちは、約300人となりました。

2024年度の活動

国内避難民を対象とした「子ども広場」の支援

現地のNGOと連携して、タイズ県ジャバル・ハバシ郡内にある避難民キャンプ2カ所で読み聞かせ、お絵描き、ゲーム、スポーツ、遊びなどを行う「子ども広場」を運営しました。運営に先立ち、ファシリテーターを対象に、社会心理学的な支援や子ども広場の管理・運営に関する研修を実施。

またコミュニティの住民向けに、児童保護や教育の重要性についての小規模グループでの啓発活動も複数回にわたって行いました。「子ども広場」2カ所は暫定政府の社会福祉労働省に正式に引き渡し、保護者がボランティアとして「子ども広場」の運営を行っていくことが確認されました。

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子ども広場でおもちゃを使ってお医者さんごっこをしている子どもたち

2024年度の成果

誰一人取り残さない子ども支援を

両キャンプで障がいのある子どもの受け入れを行いました。研修を通してファシリテーターや現地スタッフの間に「誰一人取り残さない」という意識が広まり、運営中も適切なケアがなされました。読み聞かせやクラフトづくりなどの活動を通じて子どもの情緒が安定し、表現力が育まれるなど、心理的ストレスの軽減にもつながりました。さらに住民の意見を受けて、保護者の積極的な参画も得た広場の安全対策を講じることができました。また、地域住民と避難民の間の軋轢に悩む声が多く寄せられたため、今後は両者の交流の場としての広場の活用も検討していきます。

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研修を熱心に受けるファシリテーターたち

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子どもたちに人気が高い人形劇。人形劇には道徳的教訓が含まれている

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ファシリテーターがイエメンの遊びを教えている

現地からの声

友達と遊ぶのが楽しい!

「子ども広場」に参加した児童アンマール君(12歳)

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筆者左

僕はアンマール、12歳。弟が1人と妹が3人いて、ぼくが一番年上。午前中は学校に行っていて、理科とコーランの授業が好き。学校までは歩いて5分。でも最近は「子ども広場」が楽し過ぎて、学校に行くのが面倒くさいと思うこともあるよ。前はずっと家にいて遊び方も知らなかったし、外に出ても何をしたらいいか分からなかった。でもファシリテーターが、どうやって友だちと話したり仲良くなったりするかを教えてくれたよ。今は友だちとかくれんぼをするのが好き。最近、友だちとケンカして悲しかったけど、「子ども広場」で一緒に遊んで仲直りができて、もっと仲良くなれたのがうれしかった!

子どもは楽園の鳥だ!

保護者 アミード・ハーリドさん(35歳)

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私は妻子と2021年にトゥエルから避難してきました。実子ではない3歳のネイマは、アデンで働いていた際に知人を通じて迎え入れ、彼女も「子ども広場」に参加しています。私はボランティアとして毎日「子ども広場」に来て、トランポリンで子どもたちが怪我しないように見守っています。また、別の避難民キャンプから子どもたちが遊びに来ても、喧嘩が起こらないように仲介する役割も担っています。「子ども広場」を通じて、子どもたちは社交的になり、以前のような暴力的な行動も見られなくなりました。ネイマも以前は大人の横でじっと座っていることができませんでした。子どもはParadise birds(楽園の鳥)です。事業の終了後も、強い意志を持って子どもの居場所を守っていくつもりです。

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