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『イラクへの軍事行動を正当化できない10の理由』 
2003年3月17日 更新

調査研究担当 高橋清貴

JVCでは、今回のイラクへの軍事行動に対しては、あまりにも多くの正当化できない理由があると考えています。以下は、これまでの議論を基に、JVCの調査研究担当がまとめたものです。

2003年3月10日 高橋(調査研究担当)

1.甚大な人道的被害をもたらす

多数の無辜の女性や子どもが軍事行動の最初の被害者となる。イラクの経済は既に荒廃している。子どもの死亡率は1990年に国連制裁が課されてから急上昇し、約1600万に、つまり人口の3分の2もの生死が脆弱な食糧配給システムに依存している。軍事行動によって、この配給システムが崩壊してしまう可能性が高い。

2.イラク攻撃の陰で他の紛争が激化する

パレスチナ、アフガニスタン、コソボなど今でも続く紛争が後景化し、メディアの注目が得られなくなる。その陰で、アフガニスタンの時のように、イスラエルは「民主化」という”正義”の名の下での軍事行動は正当化されるという身勝手な解釈の下で、パレスチナへの軍事侵攻を活発化させる恐れがある。アフガニスタンでも、軍閥の衝突が激しくなる可能性が指摘されている。

3.北朝鮮問題を強硬な対応で解決する傾向を強める

今回のイラクへの軍事行動を容認すれば(特に決議なき場合は尚更)、軍事圧力を使った交渉が正当なもの、あるいは有効な手段として理解されるであろう。日米安保に頼る日本が、北朝鮮問題でも同様な軍事圧力が正当な手段として扱われ、強硬な姿勢をとり続ける北朝鮮問題の解決をより難しくするばかりでなく、近隣諸国への「脅威」を現実化させる恐れもある。日米安保頼りという冷戦時と同じ対応方法で北朝鮮に向かうことは、中国やロシアとも協力関係を組める今の新しい国際環境の中にあって外交的努力の怠慢と思考停止以外の何ものでもない。

更に、日本が北朝鮮とのリンケージで米国のイラクへの軍事行動に賛同を示す姿勢を示すことは、中東の人々からすれば北朝鮮問題という日本の都合でイラク市民が殺されることを容認するというメッセージとして受け止められる恐れがある。多くのアラブ人の間にアメリカによる戦争に反対する声が大きい今、自己都合で開戦を支持する行動は、アラブ人の間に日本に対する敵対意識を助長することになるのではなかろうか。

4.中東を混乱させる

イラクへの軍事行動が始まれば、イスラエルのパレスチナへの軍事攻撃が増長する懸念がある。同様に、北イラクでは、クルド人が蜂起し、トルコとの間で武力衝突を起こす可能性がある。ヨルダン、サウジアラビアなどでは、政権への民衆の不満が爆発する恐れもあり、中東全体が混乱を来す恐れがあることは多くの専門家が指摘するところである。

5.「テロ」活動が活発化する

多くの中東諸国では、米国との関係について政権の思惑と民衆の認識に大きなギャップがある。今回のような国際社会に正当性を付与されない軍事行動、米国のキリスト教原理主義的な価値観に裏付けられた国益のための戦争、あるいは武力による「民主化」という一方的な価値観の押しつけは、中東の人々の間に自国の政権と米国の両方に対する反感と憎悪の芽を育てることになるだろう。これによって、政治的衝突が宗教的側面を帯びることになり、むしろ「文明の衝突」というものを現実化してしまうかもしれず、また世界全体でテロ活動に走る人々を増やすだろう。

6.経済に多大な影響を及ぼす

今回の軍事行動の経済への負の影響は既に出始めており、既に株価は8000円を割りそうな勢いである。今回の軍事行動にかかる費用は約24兆6千億円(約2000億ドル)と見積もられているが、クウェート、サウジアラビア、ドイツ、アラブ首長国連邦は金を出さないと言われており、米国自身も復興への責任を果たさない恐れがある。湾岸戦争でも米国は費用の11.6%だけ負担し、日本はそれよりも多い16.4%を負担した。旧ユーゴへの米軍を中心としたNATO空爆の時も、後始末をEUに押しつけ(これが今回の戦争に独仏が反対する背景理由である)、アフタニスタンでは復興に4.4億ドル拠出しているものの空爆による被害に対する謝罪も賠償もない。今回、査察を継続すれば、必要な経費は軍事行動よりも桁違いに小さく年間約100億円で、査察を10年間継続したとしても250分の1の1000億円にしかならない。

7.戦争では大量破壊兵器(WMD)の破棄や武装解除は進まない

軍事行動後による大量破壊兵器の破棄は、現実に可能とはならない。軍事行動によるWMDの破棄とは、フセイン政権を倒した後に全ての兵器を見つけ出し、破壊するということだが、そのことはつまりフセイン政権そのものの打倒が軍事行動の目的であることを意味する。仮に、フセインを打倒したとしても、その後のイラクをまとめる強いリーダーがおらず、最も可能性の高いシナリオは、アフガンの時のように米国がリーダーを一方的に擁立し、それを支えるために強い軍隊を育てるというものである。すなわち、イラクという国は武装解除されるのではなく、米国の傀儡政権の下で強い武装国家を打ち立てことになる。アフガニスタンでも治安維持のために軍事力増強が検討されているが、米国の戦争とは世界の軍事化を助長するものであり、WMDの破棄という戦争開始目的の本来の理念とは反対の結果を招くものである。世界を軍事化し、米国がそれを監理するというシナリオは、中東全体で周辺諸国との軋轢を悪化させ、特にパレスチナの状況をますます難しくするだろう。

8.民主化は進まない

「民主化」を文字通り解釈すれば、民意を反映できる政権を樹立することである。しかし、今回の戦争によってイラク国民の間に複雑な対米感情をもたらすだろう。そのような民衆の意を反映した政権とは、どのような政権になるだろうか。最も予想されるのは、米国、周辺諸国、民衆のそれぞれに面従腹背するような政権で、それは極めて不安定なものとなるだろう。加えて、米国の強いバックアップがある場合(傀儡政権)、国民との間に深い亀裂を孕むものとなり、そのような政府が長期的に安定するには相当に困難が予想される。また、治安維持目的で、強力な軍隊で国民を押さえつけるようになる可能性もある。このような国家は民主国家とは言えないのではなかろうか。例えば、現在のアフガニスタンが民意を反映する形で政権が国家運営を行っているとは言い難い状況を見れば、イラクで同様な、あるいはそれ以上に困難な国づくりとなることは予想に難くない。

9.国際法、国連の権威が失墜する

戦争をしなければいけない根拠が薄弱である。平和的外交、政治的解決の手段が可能性として残っているにも関わらず、軍事行動を起こすことは国際法、国連の理念に対する違反である。WMD破壊のための軍事行動は、人々の暮らしに直結する電気や水といったインフラ設備に対する攻撃を含む恐れがあるが、これは国際人道法(ジュネーブ協定付加条約1の54条)で禁止する「非戦闘員人口の生存に不可欠な目標物とする攻撃を禁じる」に抵触する。また、国連憲章では「武力による威嚇」を認めていないが(第2条)、20万人以上の軍隊を展開している今回は既にそれを犯している。以上の理由から、今回の紛争問題に対する国連権威の失墜をもたらした原因は米国側にあるのは明uらかである。仮に、決議なきまま武力行使が行われれば、大国の紛争を未然に防ぐという第二次世界大戦後に決めた国連の役割は失われ、紛争後の復興や平和維持だけを行う機関に成り下がるであろう。

10.中東での日本の信頼は低下する

これまで中東では比較的好意的に受け止められてきた日本だが、米国に追従したことでアラブ人の間で敵対感情を高める恐れがある。復興の役割ばかりを強調する日本だが、その復興すらもおぼつかなくなる可能性がある。未だ80%の石油を中東に依存し、明確な代替案(輸入先の分散化と依存を減らす)を持たない日本が対米従属だけで突き進めば、すべからく米国の庇護の下で生きなければいけなくなるのでなかろうか? 日本の政府、外務省は、この辺りの説明を全く欠いているが、説明責任を欠いたまま、日本の市民に苦境を強いた場合、その責任は誰がとるのだろうか?

以上




 
 


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