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ODA ウォッチ: プロサバンナ事業 第15回

農民たちが選んだ道のり

南アフリカ事業担当 渡辺 直子
2016年8月16日 更新
prosavana15-2.gifPDF版はこちら

モザンビークは日本からは距離的には遠い土地だ。しかしそこには、日本のODAによるプロサバンナ事業に対して抵抗運動を続ける数多くの農民たちがいる。農民らしく地に足をつけ、かつ目指す遠くの目標を見据えて、土地と暮らしと未来を守るための闘いを今も続けている。

「分裂」ではなく「分断」

先日、とある著名なモザンビーク研究者が、「最も成功したキャンペーン」として、 JVCが連帯し、ともに活動しているモザンビークの「プロサバンナにノー!・キャンペーン(UNAC(モザンビーク全国農民連合)他7現地団体から構成、以下「キャンペーン」)」を紹介していた。しかし、プロサバンナ事業に対する抵抗運動は「勝った」にもかかわらず、いまだ解散していないと揶揄し、一部の現地市民社会組織がプロサバンナに協力し始めたのに、「キャンペーン」がプロサバンナを拒否し続けているため、現地市民社会が「分裂している」と加えた。なぜ「キャンペーン」は抵抗運動を続けるのか。そもそも、彼らは一体何に「勝った」のだろう。

今年2月の来日時、社会科学国際研究所(ISS、在ハーグ)のサルトゥルニーノ・ジュン・ボラス教授(注1)は、市民社会による抵抗運動のあり方として主に以下の3つがあると話した。①ガイドラインなどの制度により、問題を引き起こす主体を規制し状況をコントロールしようとするもの、 ②問題とされる状況の中で、それでも人びとに資するよう試み、事態を改善しようとするもの(Win‐Win方式)、 ③(これが長く、一番困難な道のりだが)その問題の背後にある社会構造自体を問い、それを具体的に変革しようとするもの。

これらはどれが正しいというものではない。 ①〜③のいずれかを基本的なスタンスとしつつも、戦略によって他の方法と組み合わせたり、別のアプローチを取る団体などと協力することもある。それはモザンビークでも同様で、2013年11月以降、プロサバンナに関する市民社会と政府との協議の一切が中断されて以来、考え方の相違は少しずつありつつも、いずれの団体も、現地の小農やUNACの立場を最大限尊重し、「一抜けた」とする団体は皆無だった。これは特筆すべきことである。しかし本誌320号で述べたとおり、昨年11月、JICAが現地コンサルタントを雇い、あえて②と③の組織を区別し、 ②をマスタープラン策定プロセスに取り込んだ(注2)。すなわち「分裂」ではなく、外から「分断」されたのである。 ③を目指す人たちにとって、このような非民主的で恣意的なプロセスに参加すること自体が闘うべきものであることは自明である。

◎注1...1980年代より政治活動家また学者として、フィリピンや世界の農村での社会運動に深く関与している。国際小農運動であるビア・カンペシーナの設立に尽力。学術誌"Journal of Peasants Studies"の創刊者/編集者。
◎注2...現地コンサルタントとの契約内容の詳細は、こちらのウェブサイトを参照。

「長く困難な道のり」を選んだ小農

そもそも、彼らの運動はそんな狭い範囲に留まっていない。先日、ナンプーラ州農民連合(プロサバンナ事業対象地)のリーダーに会った際、「(運動で)こんなに忙しくて、妻は不満を言わないのか」という冗談に対し、彼は満面の笑みでこう答えた。「大丈夫。結局は自分の土地を守ることにつながっていくことだから。理解してくれているよ!」

幸い、このリーダーの村ではまだ土地収奪は起きていない。今年は雨も降り、収穫も上々だという。つまり自分以外の、仲間に起きている状況、すなわちそんなことを生じさせる社会自体の問題を問い、闘っている。それがやがて自分にも返ってくる。だからこそ、プロサバンナ事業でも「小農を主権者として扱う姿勢」「民主的で透明なプロセス」にこだわるのであって、事業だけにこだわって闘っているのではない。彼らが見据えているものは、冒頭の研究者が思うより、もっと広く、深いのである。

3ヵ国市民社会の運動の成果から、プロサバンナ事業は土地を狙った農業投資促進のためという初期目的から「小農のため」とうたわれるようになった。しかし、プロサバンナ事業を包含する上位の開発計画「ナカラ経済回廊開発」の結果として、人々がインフラ整備、農業投資、植林や鉱山開発によって土地を奪われ、抵抗する人が虐待を受けるなどの被害は後を絶たない。「開発優先の土地収奪は止まず、事業に失敗した企業が撤退しても、別資本の企業が現れるだけ。事業が止まったとしても、壊された森や農地は戻らない。こうした中、プロサバンナ事業において、小農は土地を効果的に活用できない者と過小評価され、市場に統合してあげる支援だと主張される。だが、こうした小農の営みの過小評価が、現地政府と資本による土地収奪に直結している。だから、小農たちは社会変革を求めて闘い続けているのだ。

モザンビークの小農たちが闘う相手はあまりにも大きい。でも、パウロ・フレイレが言うとおり、自分の小さな一歩の可能性を信じて動きだすしかない。A Luta Continua(闘いは、続く)!

No.321「紛争経済」が支える避難民の生活を変えるために目指すこと (2016年7月20日発行) に掲載】

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※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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