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ODA ウォッチ: プロサバンナ事業 第10回

「農民の権利」を守るとは

南アフリカ事業担当 渡辺 直子
2015年11月25日 更新
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ODA のプロサバンナ事業に関する連載。前回は今年8月に現地を訪問しJICA と同行した高橋による報告だったが、今回は同じタイミングで農民たちの話を聞き取ってきた渡辺による報告だ。前回の報告と合わせてお読みいただきたい。(編集部)

政府・企業からの「圧力」

十月下旬、八月に一緒に現地調査を行なったプロサバンナ事業対象ナンプーラ州の農民組織UPC-Nの代表と首都マプトのNGO、ADEORUスタッフから連絡を受けた。ADEORUが調査で得た情報に基づきプロサバンナ事業の実態についてのプレスリリースを発表したところ、事業と契約している現地企業が「書かれた内容は間違い」だから「先のプレスリリースが間違いだったとする新たなリリースを出すよう」伝えてきたという。UPC-Nには政府関係者が訪問し、プレスリリースの内容の事実確認と「話を聞いた農民の写真を渡すよう」言われたそうだ。このことは企業や政府からの「圧力」として現地では受け止められている。

八月の調査では、農民たちを訪問した際、その多くで話の前にまず畑を一時間以上歩いて見せてもらい、その後一時間以上かけてゆっくり話を聞いた。彼らが連れていってくれたのはプロサバンナ事業下にある畑ではなく、これまで地道につくってきた畑だ。農民同士が語らうような場となったことで(ADEORUスタッフも農家の出身)、さまざまな本音がポロポロと出てきた。その結果、プロサバンナ事業が地域の人々の実情を包括的に捉えておらず、すでに実地で進められている「モデル普及」事業※注①がモデルとしてまったく機能していないことなど、事業の様々な課題が明らかになった。

今回の訪問先のひとつには、「モデル普及」事業における契約企業で、近隣の農民と契約栽培を行なっているMatharia Emprendimento 社( 以下ME社)がある。訪問の最中に、このME社が「農民を追い出し、土地を奪った」という話を聞き、実際に土地を追われたという農民たちに急遽話を聞くことにした。また、同企業と契約栽培をしている農民組織のメンバーや企業に雇用されている労働者にも会った。そこで語られたのは、不公正な契約栽培、モザンビークの最低労働賃金(月約一万円)を下回る形(月約三千円)での雇用状況、そして土地を追われ、新たな地で「生産する気を失った」という農民たちの声だった。

困難を押しつけないで

冒頭のプレスリリースは、実はこのME社のケースについて書いたものであった。八月の調査訪問からの帰国後、我々から前述のような状況をJICAに 伝えたところ、JICAが「フォローアップ」としてME社に確認、ME社がプレスリリースを見つけてアプローチしてきたらしい。JICAが確認したME 社の言い分はこうだ。自分たちは〇九年に土地登録を取得しており土地の権利がある。また、確かに「正規雇用者」については国で最低労働賃金が定められているが、自分たちは「日雇い」をしている、と。だからJICAとしても「法的には問題ない」と考えている、という。

いずれも確かに「法的」には問題がない。しかしこの違和感は何なのか。そもそもモザンビークにおいて「土地収奪」とされるケースは、企業による土地登録の有無ではなく、その取得プロセスの問題※注②を指して「収奪」と定義されている。JICAとして「農民たちが困難を強いられていると認識している」こうした企業と協働することの正当性を、倫理的に問い直す必要はないのだろうか。

これまでの意見交換会のなかで、外務省・JICAは「プロサバンナ事業はモザンビークの〝農民の権利を守るために〞行なう必要がある」と主張してきた。しかし実際は、現地の農民たちが「止めてほしい」と言い続けているなかで事業を始め、農民の暮らしに具体的な困難や被害をもたらしている。相手が「嫌だ」と思うことをやり続けるのは、人権侵害と言っていい。

今回のようなケースにおいて事業実施者であるJICAが本来すべきだったフォローアップとは、政府や企業からの情報に基づいた「事業の正当性の再確認」ではなく、いったん事業推進の手を止め、農民が安心して話せる状況で声を聞くことではないだろうか。今回のことは、そうした仕組みをプロサバンナ事業が持ち合わせていないことを示している。
現在、改訂プロセスにある新ODA大綱の中ではしきりに「官民連携」が謳われている。しかし、営利目的の企業を公的資金で支える際、誰が事業の責任を負うのか不明瞭なことが、この小さな事例からもわかると思う。今夏の調査を受けて、JVCは調査後、他団体とともに事業の「一時停止」を求める提言書を提出した※注③

※注①「 ナカラ回廊農業開発におけるコミュニティレベル開発モデル策定プロジェクト(ProSAVANA-PEM)」。

※注②土地取得の際に学校や工場の建設と雇用、補償金などに関する約束がなされても守られなかったり、代替の土地が用意されないか農地として利用しづらい土地であったりするケースが調査で明らかにされている。

※注③JVC 公式ウェブサイトを参照 → http://ngo-jvc.info/1suSAQW

No.313 今も続く紛争、その中で何を目指すのか (2014年12月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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