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ODAウォッチ:プロサバンナ事業 第4回(2)

知らないうちに農地を失う農民たち

調査研究・政策提言担当 高橋 清貴
2014年6月13日 更新

ODAのプロサバンナ事業に関する連載。4回目の今回は、8月6~18日にモザンビークの事業対象地を中心とした訪問調査に赴いた2名のスタッフによる報告が中心だ。この調査は、「モザンビーク開発を考える市民の会」を始めとする複数の日本の団体によって共同で実施されたもの。帰国後に事業の中断と見直しをもとめる声明を発表(9月30日)、調査の詳細な報告書も10月末公開を目指して作成中である。(編集部)

遠い国での日本の事業

バンコクとヨハネスブルグでの乗換時間を含めて、モザンビークの首都マプトまで約二十六時間。国内線に乗り換えて北部の州都ナンプーラまで二時間。ナンプーラから舗装されていないダートを四駆で三時間ほど内陸部に向けて揺られ、ようやくナンプーラ州西部、リバウエ郡イアパラに着く。ここは、プロサバンナ事業のリークされたマスタープラン案※注(1)でクイック・インパクト・プロジェクト※注(2)の対象地として指定された所であり、特に土地の事前確保が計画されている。私は、三つに分かれた今回の調査チームの一つとして、この地域を訪れ、農民から話を聞いた。知りたいことは三つあった。土地収奪の実状、そして本事業に対する農民の理解度、最後に農民たちの暮らしである。いずれも「小農支援」を考える上で不可欠な項目だが、マスタープラン案には書かれていない。

止められない土地収奪

まず、土地収奪は予想以上にかなりの程度(広さと速度)で進んでいる。それも随分前から。話を聞いたある農民は、〇四年に耕していた畑地を企業に奪われたが、どうやってクレイムすればよいかわからず泣き寝入りをしたそうだ。別の農民は、友人の話として、最近企業に土地を奪われた話をってくれた。聞いたところでは、農民たちは、実際に土地を利用していてもそれを証明する書類がない。他の村でも聞いた話だが、仮に何らかの書類を持っていても、それを村のローカル・リーダーに預けている。そのため、企業はローカル・リーダーと話をつけて(土地を手に入れる代わりに雇用するなどの交渉も含めて)、土地を確保しているのだ。この企業が最近フェンスで囲い込んだという。土地を見に行きたいと言ったら、「危険だからやめろ」と止められた。そして、「外国から来た知恵のある人たちよ。どうやったらこの流れを止められるか教えてくれないか」と詰め寄られ、私は下を向くしかなかった。

農民に知らせないままに

当然だが、農民と話をするとき、来訪の目的を伝える。私が「プロサバンナのことについて知りたい」と言うと、ほぼ全員が「聞いたことはあが、よくわからない」と答えた。ある日、モザンビーク、ブラジル、日本の三人がやって来て「プロサバンナという事業をやるが、土地がほしい」と言いに来たらしい。農民たちは訳がわからずに黙っていると、彼らは帰って行った。それ以外わからないという。三人が誰なのか名前はおろか、プロサバンナがどんな事業なのかも知らないそうだ。しかし、「大きな事業らしい。また土地が取られるのか?」と強い不安と不満を口にしていた。

一体これは何なのか? これだけの大事業で、農民に影響が出ないわけがない。それを計画段階から丁寧に説明するのが、マスタープランづくりというプロセスだろう。しかし、訪問者は名前や連絡先も明かさず、資料も置いていかず、「土地が欲しい」とだけ言って去って行く。これが対話と言うなら、JICAが言う『参加型開発』も地に落ちたものだ。

土地が奪われてきた過去に加え、今新たに「土地を欲しがる事業」が始まろうとしている。農民が不安を感じないはずがない。しかし、彼らには日常の暮らしが待っている。今日も、畑に出てサツマイモをつくり、タマネギを収穫する。冒頭触れたように道は悪い。だから、市場への流通も仲買人任せになっている。彼らから種を買い、収穫したら買い取ってもらうが、安く買い叩かれるとぼやいていた。JICAが本当に農業支援をするなら、こうした課題を農民たちと一緒に考えていくことではないのか? なぜ、この当たり前のことができずに「モザンビークには大規模農業開発が必要だ」と口角泡を飛ばすのか、まったく理解できない。

プロサバンナ事業は、一部のコンポーネントをパイロット的に進めながら、マスタープランづくりを進めている段階※注(3)である。しかし、本体事業が始まってしまえば、予算執行や広範なステークホルダーの関与があるためによほど大きな問題を起こさない限り止めるのが難しくなるだろう。事業適性の判断や抜本的な見直しは、事業前の今のうちに行なわれなければならない。そのためには、何よりも事実に基づいた当事者(小農)の理解と対話が不可欠だ。

マスタープランという「援助屋」が仮説に基づいて頭の中で描いた「開発」の大きな絵を語るのはもう止めて、農民の置かれた状況から始めない限り、この事業が小農を苦しめることは明らかだと確信した。

※注(1)マスタープラン:開発事業における基本設計のこと。JICA はこれを「現在作成中」としている。

※注(2)クイック・インパクト・プロジェクト:本体事業の一部で比較的短期間で結果を得るために実施する事業。

※注(3)このプロサバンナ事業においては、こうした事業プロセスの進め方自体にも問題がある。これについ ても次号以降にまとめる機会を持ちたい。

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No.305 JVC国際協力コンサート (2013年10月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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