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アフガニスタンの復興と治安課題を考える 
2003年9月4日 更新
 

調査研究担当: 高橋清貴

〜軍隊が人道支援してもいいのか〜
<<議事録要約>>

【パネリスト発表要約】(以下敬称略)

1.サハール・サヴァ(RAWA)

9月11日を境にアフガニスタンの状況も大きく変わってきているが、今なおアフガニスタンという国は、安全のない国である。とくに女性に関してはそれが言える。

欧米メディアからの取材のなかで、欧米で大きく取り上げられている女性はなぜ「ブルカ(全身を隠す被り物)」を外さないのかという質問があったが、それに対する女性たちの答えは簡単である。安全になったらこれを脱ぐ、というものだ。

いわゆるテロに対する戦争の最大の政治的「成果」は、再び軍閥達が力を持ち始めたことである。彼らが武器を持ってアフガニスタンにいる限り、人々が安全や平和、安定、民主主義、女性の権利を守るなんて話をしてもそれは我々を騙すことにしかならない。だからRAWAは、国際社会、国連に訴えたのだ。本当にアフガニスタンに安全、平和、安定を望むのであれば、平和維持をしようとする人達がアフガニスタンに来なくてはならない、そしてあらゆる軍閥の武装解除を行なわなければならないと訴えたのである。しかし残念ながら、アフガニスタンでは、あまり大きな変化は起きていない。

アフガニスタンの人々に対する最大の支援、とくに自由をもたらすという意味でも支援は、原理主義者に対するあらゆる支援をやめるということである。アフガニスタンの民主的な団体を、広範に、強く支援していかなくてはならない。私たちは今後とも私たちの戦いを続けてゆく覚悟である。そして原理主義者たちの活動を暴いていくことを続ける。私たちは自由を愛し、平和を愛する世界の人々との友好、そして連帯に頼って活動していきたいと思う。それによってこそアフガニスタンの状況を大きく改善できると思っている。

2.高橋 清貴(日本国際ボランティアセンター 調査研究担当)

アメリカ軍は未だにアフガニスタンでテロ掃討作戦を続けているが、その一方で復興の需要もある。そのテロ掃討作戦と、いわゆる復興という人道支援的な活動を同時に行なおうということで、昨年11月に新しい戦略として打ち出されたのがPRTである。

アフガニスタンの復興のプロセスでは、来年6月に総選挙を行なうことになっている。それまでに治安をある程度確保したいというのが最大の課題である。カブール周辺には国際治安支援部隊(ISAF)という軍が入っているが、地方については治安確保が容易ではない。総選挙までに地方の軍閥を武装解除しながら治安を確保していくことが必要だが、後1年しかない、何かしなければいけないという状況の中で、このPRTという新しい戦略が出てきたと思われる。

PRTに対しては、国際NGOの間でも意見が分かれている。NGOは人道支援の原則である公平性・中立性・独立性を保つことが何よりも大事であるという意見を持つNGOがある一方で、PRTはまだ3ヵ所くらいをパイロット的にやっているに過ぎないので、これからどのような影響が出てくるのか、今の時点では判断がしづらいという意見を持ったNGOもある。また、国際社会の目がイラクに向きがちになる中で、たとえどういう形であれ、資源が投入されるということであれば、基本的に受け入れようじゃないかという意見をもつNGOもある。

それから原則論を議論する以前の問題として、今でもアフガニスタンでは、援助コミュニティが必ずしも快く思われていない中で、アメリカや軍隊の活動を快く思わないような人達が、ひょっとすると援助コミュニティ全体に対する反感やある種の悪感情を増長させる可能性もあるのではないかと言われている。

またPRTの法的な位置づけがまだよく分からないというところも問題である。本来なら国連が中心となって人道支援活動の調整が行なわれるべきところが、PRTは援助の調整機能を担うところまでを視野に入れている可能性がある。そうすると、国連との整合性はどうなのだろうという疑問が出てくる。

米国を中心とした連合軍によるいわゆる人道支援活動と軍事活動というものをセットにした活動を今、地方を中心にして展開するということが、アフガニスタンの最大の課題である治安という問題にどういう風な影響を及ぼすのかについて、議論していきたい。

3.田中浩一郎(国際開発センター エネルギー・環境室 主任研究員)

東京での支援国会合後、約20億ドルがアフガン復興に使われることになっているが、現在までに14.7億ドルが実際にアフガン政府に支払われている。その内日本政府は3.8億ドル近くを、アフガン復興および人道支援のために支出してきた。

教育や医療サービスなど、復興が進んでいることが実感できる分野も多いが、アフガン側、特にアフガンの政府関係者からは、援助が遅い、少ない、何も変わらないという不満が出ている。さらに、現在の和平プロセスから完全にはじき出された形になっているパシュトゥーン人の間では、政府の中に自分たちの居場所がない、支援からも見捨てられているという不満は大変強い。

アフガン研究者などは、現在の援助に対して、援助全体に対するポリシーがなく無駄が多いと、概して批判的である。また、地域的にもカブールに集中しているという批判もある。そこに出てくるのが治安という問題である。

タリバン崩壊後、アフガニスタンでは軍閥が復権してしまった。また、原理主義勢力も再び台頭している。支援をめぐっては汚職もはびこっている。麻薬生産も増大しており、軍閥が利益を得ている。そのような中、軍閥にとっては、戦争状態あるいは無政府状態の継続こそが望ましいという状況になっている。

なぜこのような状況になっているかと言えば、今の政権は軍閥ありきで出発しているからである。銃による地方分権が実現しており、国際社会もある意味それを容認している状況である。そのような中で、国軍を作って治安を回復していこうという動きが現在あるが、これは非常に危ないことである。なぜなら、軍というのは本来国内治安を守るための組織ではなくて、外国から攻められたときに国を守るための組織であるからだ。それを本来の目的ではなく、国内平定用に使うということ自体、この国が相当に平常の状態にないということを物語っているに過ぎないのである。治安を確立するために必要なのは、軍閥の武装解除と中立な外国軍隊の展開、実は外国軍隊の展開が中立の下に各地に進むことである。

現在アフガニスタンは国家が一体性を維持できるか、それとも地域的な分断が進行してしまうのか、という瀬戸際に立たされている。現在のように軍閥によって分断されたまま復興だけを叫んでも、援助が無駄になってしまうのではないか。

最後に、米軍が人道支援に関わることについては、アメリカ軍や多国籍軍に敵意を持っている、アルカイダやタリバンの残党などから、NGOなどの人道支援を行なう団体も同じ活動をしているという理由で狙われる可能性を排除できないということを申し上げておきたい。

4.伊勢崎賢治(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授)

原則として軍隊は人道支援が目的であるべきではない。しかし、政府や国連が機能しないほど危険な状況では、軍隊が人道支援をしなければならないこともある。その場合、軍隊の人道支援活動は限定・監視されなければならないし、その期間はできるだけ短いほうがいい。

武装解除・動員解除・元兵士の社会復帰(DDR)というのは武器回収プログラムではなく、政治的プロセスであり、民主主義の土台を作るプロセスである。それは信頼醸成のプロセスであり、みんなが信頼しあいながら、和平に反対する勢力に立ち向かっていかなければならない。

アフガニスタンのDDRについて意識的に明らかにした点が三つある。一つは、このDDRは2004年夏に予定されている総選挙をターゲットにし、その前に終えるということ。二つ目は、今回の武装解除の目的は、軍閥の解体であるということ。三つ目は、国家治安分野改革―具体的には国防省改革と国軍の創設―にDDRを政治的に組み込むということ。つまりDDRを通して武装解除された兵士が国軍に入って再訓練を受けるということである。

PRTについては、国連軍が地域展開していない現状では、PRTに頼らざるをえない。現在のもろい平和の中でDDRを成功させるためには、アメリカの軍事力という政治的なプレッシャーは非常に大切である。

5.唐津聖子(オックスファム・インターナショナル 日本事務所代表)

1990年代以降、軍隊が間接的、あるいは直接的に人道支援に関わるケースが増えているが、今のところ、軍隊が人道支援に加わる場合の具体的なガイドラインや原則というのはまだできていない。

軍隊が間接的、直接的に人道支援に関わることについては、大きく分けて3つのパターンがある。一つは、軍隊が自ら人道支援を行なうというもの。二つ目は、軍隊が民間の人道支援団体の護衛を行なうもの。三つ目は、人道支援団体と軍隊とが情報交換をするものである。

軍隊が人道支援に関わることについては、肯定派・推進派と懐疑派が存在する。肯定派・推進派は、人びとのニーズに効率的に応えるためには、軍事的目的と人道的目的が混ざり合うのは避けられないし、現実的にも協力することが必要である、と出張する人である。一方懐疑派は、軍隊と人道支援団体では使命や原則が違うから相容れないのではないか、ということを言っている。

人道支援は基本的に二つの目的を持っている。まず人びとのニーズを満たし、苦痛を減らすこと。もう一つは紛争時において非戦闘員の生命を守る、法的にも保護すること。これを規定する文書として、ジュネーブ条約や、国際赤十字・赤新月の行動規約というものが存在する。また、人道支援の原則は、「人間性」と「普遍性」である。「人間性」とは、人間の尊厳と人権は尊重・保護されるということ。「普遍性」とは、政治的、宗教的、民族的イデオロギーに偏らずに、人々のニーズのみに基づいて活動を行なうことである。

軍隊が人道支援に関与する際には四つの疑問がある。

  1. 費用対効果はあるのか
  2. 人々のニーズを見つけ、対応する能力はあるのか
  3. 人道支援団体に影響があるのではないか
  4. 原則論として役割、目的が違う

ということである。

PRTについては、「復興」という別の時間軸が入っており、PRTがどこに位置づけられるべきか明確でない。しかし、軍隊が支援活動をするという傾向は今後も増えていく可能性が高いので、市民一人一人あるいはNGOとしても、見ていく必要がある。一番重要なのは、紛争に苦しむ人々が論点の中心であるということである。

【質疑応答】

Q(熊岡):唐津さんへ。人道援助を行なう民間団体として治安が非常に悪いところで働く場合に、どのような選択があるのか。軍隊的なものと一緒に動かざるをえないというふうになるのか、あるいはそこまではリスクを冒さずに、軍隊とは離れて活動をするのか。あと非常に稀なケースではあるが、NGOが武装するということも一部にはあるのかもない。

A(唐津):NGOが軍隊に守られることに関しては、NGOの当面の鎧である「普遍性」を壊すものではないかと思うときがある。つまり、軍隊に守られてそこに行くことで、「ああ、あのNGOはあっち側だな」という判を押されるわけである。だから軍隊と一緒に行動するのは非常に限定されたケースに限られていくべきであると思う。
 NGO自身が武装するという点については、現地スタッフの情報収集ネットワークを使ったり、国連の治安オフィサー意見交換したりすることで対処できる場合もある。OXFAMの場合は、あまりにも危険なところで活動するときはボディ・ガードを雇っていくこともある。

Q(熊岡):田中さんへ。米国などがイラク攻撃に突入したときのアフガン復興援助への影響をどう考えるか。治安上の問題点など。

A(田中):2004年以降、必要なだけのお金がアフガニスタン復興のためにまた拠出されるか疑問。優先順位がイラク移ってしまうかもしれない。
 治安の面については、極端な外国軍の兵員のアフガンからの撤退がない限りにおいては、殆どアフガニスタンに影響はないと思っている。もちろんその機会を捉えて、反アメリカ宣伝、反西側宣伝あるいは反国連も含めていろんな宣伝をして、現在の和平プロセスを更に妨害しようとする人達はまたでてくるだろうが、それは今既に起きてることの流れの延長にあるものであって、決して新たに始まることではない。

Q(熊岡):伊勢崎さんへ。軍が人道支援に関わる場合、とくに今回のアメリカ軍のようにあまり中立的でないと見られている軍が人道支援に関わる場合、具体的にどうすることが必要か。

A(伊勢崎):まず最初に、よく対話すること。対話する際に、NGOが持っているCIMICに対する不満や注意事項なども含めて話し、武装解除という最大のチャンスを迎えたときに全員が一致して和平に反対する勢力に対抗できるような信頼醸成をしていかなくてはならないと思う。

Q(熊岡):唐津さんへ。とくにOXFAMグループとして、現実に軍事的な力が必要とされるような状況のなかで、具体的にOXFAMはどうしてるのか。

A(唐津):治安が悪すぎて避難するしかない、というのが究極の段階。何とか治安確保ができそうだという確信が持てたら、情報経路をしっかりと持つなど、装備をしっかりする。必要に応じてボディ・ガードを雇う。支援活動をするときに、軍隊に守ってもらうというのは本当に特殊な限られたケースにしようというのがOXFAMの中での了解事項。

Q(会場から):田中さんへ。人道支援を実施する際に、タリバン政権下で地方で人道支援等のオペレーションを行なう場合と、現在の地方のコントロールが効いていないカルザイ政権下でNGO等が人道支援を行なう場合で、どちらが有効にオペレーションできる状況にあるか。

A(田中):たぶんあんまり変わっていないのではないか。タリバンの中にも自分の利益のために動く連中もいた。今は色々な形で外国の目も光っているし、通信手段などの環境も整っているが、軍閥がはびこるような状況になっているので、1992年から95、6年のタリバン出現前夜くらいの状況に戻っている地域もある。状況とその地域のリーダーの考え方ひとつによって相当な違いがあるんではないかと思う。時代だけでは区別できない。

【まとめ】

田中:元タリバンから聞いた話では、彼らの95%あるいは、彼ら代表していると思っているパシュトゥーン人の95%は米軍を敵だと思っている。だから日本が人道支援や復興支援を行ってくれることは大歓迎だけれども、米軍と一緒に行動したら、命の保証はないぞと言っているということを紹介しておく。

伊勢崎:恩赦の問題や、タリバンが武装闘争をやめて政党を作り、総選挙に参加したいといった場合、果たして許すのか許さないのかなど、民主化プロセスの中で課題となる問題をどう解決するかなど、これから武装解除を含めて考えていかなければならない。日本はこういう分野でもっと支援をしてもいい。

また、軍隊が人道支援をしていいか悪いかというのはナイーブな議論だと思う。個々の状況は本当に違う。一番大切なのは、コミュニケーションの壁を作らないということである。

NGO側に言いたいのは、国連は、軍隊も含めて、中立性は保てないけれども、すくなくとも公正ではあろうという認識はある。それくらい中立というのは難しい。一般の市民に、少なくとも少しは分かってもらえるような中立性を発揮できているNGOはICRCくらい。ICRCくらいの犠牲を伴わなければ、中立性なんて思ってもらえないということをよく理解して活動するべきだと思う。

唐津:観念論で中立性が大事だと言っているわけではなくて、具体的に活動していく上で、中立性を保っていくようにしていかないと、人びとのニーズを満たしていけないし、私たち自身も危なくなるということ。
 PRTについては、その存在意義を詰めていく必要がある。また、いろんな議論するときに、そのニーズのある人々を中心に据えるべきだと思う。その人々というのは、力のない、関与できない人たちではなくて、今まで長い長い戦乱を自らコーティング・メカニズムっていうものを作り上げて、幾ばくかの支援を外部から受け取ってきた人たちである。そういう人たちのことを横にやって議論していくことは避けるべきだ。

高橋:どれだけ現実的に考えるかという議論もあったが、伊勢崎氏が指摘したように、その場合にもやはり対話ということが大事と思う。必ずしも軍隊が人道支援をやることがいいというふうな明確なスタンスを持っているわけではないし、認めているわけではないが、これからも議論していかなければならないと思う。

 
 


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