『マーケティングとPRの実践ネット戦略』を読みました:ソートリーダーシップについての考察

自団体のボランティアであるHさんのオススメで、『マーケティングとPRの実践ネット戦略』を読みました。ちょうど自分でも本屋さんで「これは読みたいなぁ」と思ってメモしておいたものだったので、とてもタイムリーでした。

アメリカのPRの世界で多くの実績を上げてきた方の著書で、2007年に出版され2009年に翻訳されたものです。

広告業界は以前とは異なり、ウェブを使うことで、「顧客により近く、より対話できるようになっている」という昨今の流れをおさらいするような内容で、ロングテール、バイラルの有効性、ブロガー、ペルソナ、SNS、ポッドキャストなどを一通り説明しています。どれも実際の事例をもとに説明されているので、理解はしやすいと思います。また、デザインよりもコンテンツ自体に重要性を置くことを説いている点(P.122)は好感がもてるところです。

ソートリーダーシップとはなにか

そして、おそらくこの本でもっともコアとなる提言は、ソートリーダーシップに関する記述だと思います。

ソートリーダー(thought leader)とは、ここでは『多くの人から信頼され、かつ影響を与えることができる立場にある人・組織』というような意味で使っているものと読み取りました。このような立場に立つことによってブランディングを確立することもできる、という主旨です。

世の中にはすでのそうした立場にある人はもちろんいるわけで、「専門家」でも「信頼筋」でも「カリスマ」でも「アルファブロガー」でもなんでも、要は呼び名はともかく、そうした立場にある人は多くの人に影響を与えられる立場にあるわけですね。

ここでは、今現在はそうではない人・団体がそのような立場にたつために、ウェブ上のリソースをどのように構築するべきなのか、を提示しています。それがソートリーダーシップ、というわけです。

リソースとして何を使うかは、ホワイトペーパー、メールマガジン、ウィキ、研究・調査レポート、ポッドキャストなどをあげています。これら自体はよく見かけるリソースなわけですが、これらを明確な意図に従って使っているかどうかが鍵なのでしょう。その意図が端的にわかる部分を引用しておきます。

ソートリーダーシップとは何だろうか。そして、どうやってコンテンツを作ればいいのだろうか。まずやるべきことは、自分の立場を離れ、(もうおわかりかとは思うが)ペルソナの立場に立って考えることだ。ソートリーダーシップのコンテンツは、対象となる人々が抱える問題を解決するものであり、自社や製品について言及するべきではない。(P.148)

情けは人のためならず(回りまわって自分のために)、「今期の利益」ではなく「長期の信頼」を狙う

これは、いわゆる「サイトがユーザーにとっての問題解決ツールとなっているか」という設問とも重なってくる指摘だと思います。

そうすることが、ユーザーが「自分の問題の解決を助けてくれたサイト(とその主催者)」に対して「恩を感じる」だったり「信頼できる」といった意識が生まれることにつながっていき、そこにシンパシーが生まれ、それらが積み重なることで信頼を得ていく。そうした考え方のひとつとして、ここではソートリーダーシップという名称で説明されているのだろうと理解しました。

自分のためでなく、まずは相手のために。それが後々に自分に返ってくる。短期的到達目標だけを見るのではなく、地道に種をまくことも行うことで信頼を得る。それこそが、たんなる「売らんかな」の販売促進などよりもひいては顧客とのより良いコミュニケーションとなりうる、という意識ですね。

また、いわゆる「広告」や「広報(PR)」とどのように異なるのだろう、ということを考えてみました。

  • 「広告」:通常は製品紹介抜きには考えられないわけですから、ソートリーダーシップの手法には当てはまらない。
  • 「広報(PR)」:外部の信頼されているもの・人(メディアや専門家)に取り上げられることによって自身の信頼性を高めること。この場合の信頼は、外部のメディアや専門家にある。
  • ソートリーダーシップ:先にあげた、ホワイトペーパーやメールマガジンといった、いわば「小さなメディア」を、(自社や製品を取りあげることなく≒第三者的に?)使うことで、自分自身の信頼性を高める。

というようなことなのかな、と思いました。その意味では、個人や小さな企業でも情報発信できるというウェブの特性があるからこそ、ここでのソートリーダーシップという手法は実現できるのだろうな、ということでしょうね。

重なりますが、「サイトがユーザーにとっての問題解決ツールとなっているか」という設問の設定意図を補強する意味で、ソートリーダーシップという考え方・手法は使えるな、と考えた次第です。

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