『誰のためのデザイン?』 を読みました

いま、目の前に2つの製品があると思ってみてください。同じ機能、同じ価格、似たようなブランドのときに、

  • ひとつは、いかにも使いやすそうな感じのもの
  • もうひとつは、なぜか使いづらそうなもの

このうちのどちらを選ぶでしょうか。皆さんもそうでしょうが、私なら迷わずに前者です。これら2つは、もしかしたらデザインが大きく異なっているのかもしれません。使いやすくデザインされている製品は好ましい、ということが一般的に言えると思います。そこで、デザイン分野の方々によく読まれているという『誰のためのデザイン? ― 認知科学者のデザイン原論』という本を読んでみました。

この本のメッセージは、「ユーザー中心のデザインをしよう」ということです。

この本は、ある製品を作る際にそのデザイナーが気をつけなければならないことを、たくさんの事例をあげて説明しています。その一例をあげてみます。

  • どうやって開ければいいのかわかりづらいドア
    • ドアのどちら側を押すのか、もしくは引くのか、どちらにスライドするのかが見た目からわからない → アフォーダンス(そのモノをどのように使うことができるのかを提示するような特徴)が弱い
  • 保留の仕方もわからないような電話機は、デザインが原因
  • レゴのバイクキットは、たくさんの「制約」を適切に利用できれば、説明書なしでも簡単に組み立てられる
    • 制約の例) 風除けのパーツは前方を向く形にはめるだろう
    • 制約の例) 赤いランプは本体後ろ側にテールランプとしてつくだろう
  • つまみがたくさんついている音響機器のコンソールは、つまみとその機能との対応付けがわかりづらい → 可視化されていない
  • お金が出てくる前にカードを先に利用者に取らせる ATM → 利用者がカードを取り忘れないような工夫と言える
    • 人間は常に間違えるもの。であれば、あらかじめエラーに備えてデザインしたり、そもそもエラーしにくいようにデザインすること
  • 様々な条件・誘惑がある中で、デザイナーはより「ユーザー中心」のデザインを常に心がけるべき

といった感じです。これらの多くは職業デザイナーを対象に書かれていますが、ユーザーである普通の立場の人間が読んでも、「なるほど」とうなずかされることが多々ありました。

「そうか、この製品をうまく使いこなせないのは、自分が悪いのではなく、製品のデザインが悪かったからなのか! デザイナー出て来い!」と思わせてくれます(もちろん、すべてのケースでそれが正しいかどうかはまた別問題ですが...)。

ウェブサイトも「製品」である

なぜこの本を読んだかというと、公式ウェブサイトのリニューアルにあたって、デザインに対してどう考えればいいのか、を知りたかったからです。

もちろん、使いにくいサイトよりは使いやすいサイトのほうが良いに決まっています。どこをクリックしていいのかわからないページ、自分のほしい情報がどこにあるのかわからないレイアウト...。そういったものを排除していわゆる「使いやすいウェブサイト」をつくるにはデザイン面からはどう考えればいいのか? という問題意識がありました。

もちろん、デザインやレイアウトそのものをいかにかっこよく・バランスよくするか、に関しては、プロの方に協力していただくのが一番だとは思いますが、担当者として、目の前にあるデザインが適切なのかどうかを判断するための基準がほしかった、ということですね。

それに関しては、

  • アフォーダンスが利用されているかどうか
  • 外界にある知識とユーザーの内面にある知識(=記憶)を利用できているか
  • (サイトの)持っている機能・内容や現在の状況を適切に可視化できているか
  • さまざまな「制約」を適切に利用しているか
  • あらかじめ想定されるエラーに備えられているか
  • ユーザーの行為に対してフィードバックを返されているか

といったような、判断基準の示唆を得ることができました。

もう一つの課題

実は、サイトリニューアルに関して、デザイン自体とはちょっと異なりますが、一つ考えなければならないことがあるのです。

現在、公式ウェブサイトでは、「ボランティア」「スタッフ・インターン求人情報」のコンテンツのアクセス数および掲載時の反応が非常に高く、ページビューでも全体の約1割を占めています。このことから、「なにかしら(海外で)国際協力に直接携わりたい」といってサイトを見に来るユーザーが一定数いる、と考えています。

もちろん、団体名称自体からして「海外で活動するボランティアを募集・斡旋している」という印象を与えやすい、という事情はあるのですが、実は団体の現在の実質的活動とはちょっと合致していません(海外へのボランティアは基本的には派遣していない、現地スタッフも基本的に欠員募集のみ、インターン募集も年1、2回)。国内でのボランティアの提示はいくつかあるのですが。

(だからといって、「では団体名を変えればいいのでは」ということになると、また別次元でいろいろややこしいことが入ってくるので、これはもう制約条件のひとつして位置づけることとしますが)

要は、団体側がウェブサイトの目的として設定している、

  • 団体の活動やその背景にある構造的問題について広く提示する
  • それを知っていただいた上で、ユーザー個々人ごとに「次のステップ」を提示する

といったことと、見に来ていただいている一定数のユーザーのニーズとの間に、多少のズレがあるのではないか、と個人的には捉えています。

もちろん万人のニーズを満たすことは非常に難しいですし、いますぐ答えが出るというわけではないですが、この本の中で得られた以下の示唆をもとに、今後考えていきたいと思います。

【概念モデルの共有】

『製品デザイナーとその製品を利用するユーザーとは、直接にはコミュニケーションできない。したがって、デザイナーが持っている、「この製品はこういうモノなんですよ」という考え(=概念モデル)と、ユーザーが持っている「この製品はこういうモノなのではなかろうか」という考え(=概念モデル)とが、いきなり完璧に一致することはありえない。

であれば、両者は、製品自体を通してコミュニケーションをはかる必要がある。デザイナーは、自分が持っているその製品に対する考え(=概念モデル)が、その製品自体を通してユーザーに伝わるように、適切にデザインしなければならない。ユーザーは、その製品のデザインを通して、デザイナーの考え(=概念モデル)を読み取り、自分の考え(=概念モデル)とすり合わせることで、その製品自体を理解し、利用することになる』

...ちなみに、これはあくまで個人的な理解をまとめたものなので、誤解があるかもしれませんがあしからずご了承ください。

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