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アフガニスタンにおける対テロ戦争と日本の軍事支援の見直しを求める声明 
2007年10月16日 更新
 

日本国際ボランティアセンター(JVC)

現在、「テロ対策特別措置法」の延長についての国会議論により、アフガニスタンでの日本政府の支援のあり方がクローズアップされています。5年にわたりアフガニスタンで住民とともに復興支援に取り組んでいるJVCとして、以下の通り意見を表明しました。

以下に声明文の内容を掲載します。全文のPDF版はこちら(269kB)です。


2007年10月12日

アフガニスタンにおける
対テロ戦争と日本の軍事支援の見直しを求める声明

特定非営利活動法人
日本国際ボランティアセンター(JVC)

11月1日で期限が切れる「テロ対策特別措置法」の延長問題が国会の争点になっています。しかしアフガニスタンで行われている対テロ戦争の実情を踏まえた議論も、この戦争がいつどのような状態になれば終結するのかという出口戦略も議論されることなく、「米国支援」や「国際社会での責任」という言葉だけが一人歩きしています。

私たちは27年にわたって紛争や貧困の現場で人道支援や開発協力に携わってきたNGOとして、またアフガニスタン国内で復興支援活動に携わるものとして、この機会にアフガニスタンで行われている対テロ戦争と、それを軍事的に支援する「テロ対策特別措置法」について意見を表明します。

2001年9月11日にアメリカで発生した「同時多発テロ」事件の報復として始められたアメリカのアフガニスタン攻撃に対して、私たちは反対の立場を表明してきました。「テロ」という犯罪に対して国を相手にした先制攻撃を行うことは国際法に照らして違法であり、またアフガニスタンへの武力攻撃によって「テロ」を根絶することはできず、終わりのない憎悪と暴力の連鎖を生み出すことにしかならないと警告を発してきました。また日本政府がアメリカの有志連合の一員としてこの戦争に参加するために成立させた「テロ対策特別措置法」に対しても、対テロ戦争そのものの不当性の観点と、国際紛争を武力によらず平和的な方法によって解決するという日本国憲法の原則に立って反対の立場を表明してきました。

対テロ戦争はアフガニスタンに平和も安定ももたらしてはいません。「テロリスト掃討」と称する対テロ戦争による民間人の犠牲者は後を絶たず、アフガニスタン人の間にこの戦争に対する疑念と反発が高まっています。また対テロ戦争を任務とする連合軍と、治安支援を任務とする北大西洋条約機構(NATO)指揮下の国際治安支援部隊(ISAF)が統合されたことでISAFまでが対テロ戦争の当事者となってしまい、戦争の泥沼化に拍車をかけています。さらにISAF/NATO指揮下の人道復興支援部隊である地方復興支援チーム(PRT)の活動が人道復興支援と対テロ戦争との境界を失わせ、NGOや国連など援助機関による人道復興支援の実施を困難なものにしています。

こうした状況下、アフガニスタン政府・国会や民間人の間でも、多国籍軍やアフガン国軍に対する軍事行動の中止を求め、ターリバーンを含む武装勢力と和平のための交渉を始めようとする動きが生まれています。一方でNGOやアフガニスタン赤新月社などの援助機関は武力対立と一線を画し、中立と公正の原則を維持することで人道・復興支援を実施しています。アフガニスタンに地上軍を派遣していない日本政府の支援もアフガニスタンでは「中立」とみなされる傾向が強く、高い評価を得ています。その背景には、日本の自衛隊がインド洋で対テロ戦争支援のために給油を行なっている事実がアフガニスタンであまり知られていないという背景があります。

今まさに、戦争を終結させるための取り組みと、軍事と切り離し融和と安定を促進するものとしての人道・復興支援が同時に求められています。

以上の状況に鑑み、私たちは国際社会と日本政府に対して以下のことを訴えます。

  1. 国際社会と日本政府はアフガニスタンで行われている対テロ戦争を見直し、敵対勢力やパキスタン、イランなど周辺国を含むすべての紛争当事者と包括的な和平のための協議を始めるべきです。*1
  2. 国際社会はすでにパキスタンやアフガニスタン一部地域で試みられた紛争当事者による休戦協定や和平協定の取り組みを検証し、このような取り組みが成果を積み重ね、和平の環境が地域から醸成されるよう支援すべきです。*2 *3
  3. 日本政府は「テロ対策特別措置法」を継続せず、アフガニスタンにおいていかなる形であろうと自衛隊による協力ではなく上記包括的な和平に向けた政治的なイニシアティブを発揮するべきです。同時にNGOや国連、アフガニスタン行政と協力して地域の融和と安定を促進する復興支援にこれまで以上に力を入れて取り組むべきです。
  4. 国連、NATOおよび各国政府は対テロ戦争との境界が失われた現在のISAFの役割と活動を見直し、治安の側面支援という本来のミッションに戻すべきです。
  5. NATO/ISAFおよび各国政府は、PRTによる復興支援活動を止め、PRTの役割をISAFの本来のミッションの枠内での治安支援活動に特化すべきです。

*1)  国連事務総長談話:「カルザイ大統領とアフガニスタンの指導者は、国民的和解に向けた包括的な政治対話をもっと促進して欲しい」2007年9月25日朝日新聞

*2) 2006年9月、パキスタン北西辺境州北ワジリスタンで地元部族指導者の仲介によってターリバーンとパキスタン国軍が和平協定を締結。ターリバーンのアフガニスタン国境の越境禁止、パキスタン国軍の北ワジリスタンからの撤退、地元部族指導者による自治の強化などが合意された。北ワジリスタン方式の「ピース・ジルガ」(和平会議)と呼ばれる。この方式をパキスタンのムシャラフ大統領はアフガニスタン国境地域全域に拡大する方針を示すと同時に、カルザイ大統領やブッシュ大統領にアフガニスタンでの和平プロセスとして推進する方式として推奨した。その後アフガニスタンとパキスタンの双方でピース・ジルガ開催の準備を管掌するピース・ジルガ委員会が設立された。

*3)  2007年2月、アフガニスタン・ヘルマンド県ムサカラ郡で、地元部族リーダーの仲介でターリバーンと英軍が停戦協定を締結。ターリバーンと英軍双方の撤退と地元部族リーダーによる自治の強化が合意された。3月には早くも協定は崩壊、ターリバーンがムサカラ郡に侵攻し占拠した。協定崩壊の原因は英軍が進入禁止地域で行った空爆によってターリバーンの司令官兄弟が死亡したためという報道もあるが、定かではない。

補足資料:アフガニスタンの現状認識

平和と安定にはほど遠いアフガニスタンの情勢

対テロ戦争はアフガニスタンに平和と安定をもたらしてはいない。それどころか反米、反多国籍軍、反政府の武力闘争は年々激しさを増し、反米・反政府勢力による「自爆テロ」や対テロ掃討作戦に伴う武力衝突による犠牲者は毎年倍増している。その中には民間人も多数含まれており、その数も年々増加している注1。また多国籍軍の急襲や空爆による無実の住民の犠牲も後を絶たない注2。東部ナンガルハル県で活動するJVCのアフガニスタン人スタッフの家族も米軍による掃討作戦の被害者の一人である。2005年4月、スタッフの母親が農村部を乗り合いタクシーで移動中米軍に撃たれ重症を負った。家族は米軍にこの事件の説明と謝罪を求めたが何の返事も得られていない。

カルザイ大統領は多国籍軍による民間人の殺傷事件が起こるたびに調査と再発防止を訴えているが改善の兆しは見られない。このため政府はアフガンの人々の信頼と求心力を失いつつある。対テロ戦争の中心地である南部や南東部で米国が「テロリスト」と名指しするターリバーンの勢力が急速に広がっている背景には、外国からの介入とともに、多国籍軍に対する反発と政府に対する不信感があると見るべきである。また政府の求心力の低下は南部、南東部のみならず、これまで治安が比較的良かったと言われていた北部や西部の治安の悪化をも招いている。

状況を悪化させる「テロリスト」相手の戦争【要請1に対応】

対テロ戦争は「テロリスト」が誰なのか判別できぬままに始められた戦争である。この戦争でターリバーンはアメリカにおける「同時多発テロ」の首謀者とされるビン・ラディンを匿ったとして一方的に報復戦争の対象とされた。そして今でも「テロリスト」として掃討作戦の対象となっている。また反米・反政府武装グループはターリバーンだけではなく、ターリバーン以前に地域を支配していた武装グープから、対テロ戦争後この戦争で犠牲になった者の報復のために武器を取った者たちまでその裾野はきわめて広い。さらに敵対する一方が他方に「テロリスト」のレッテルを貼り、米軍の手で攻撃させるというケースも少なくない。「対テロ戦争」は敵の分からない戦争に陥っている。そしてアフガン社会の中に憎悪と報復の連鎖を引き起こしているのである。

戦争の犠牲者をなくし和平を模索する動き【要請2に対応】

今年5月8日、アフガニスタン国会(上院)はターリバーン勢力や他の反対派勢力に対する「直接交渉」を行うべきことを投票により決定した。さらに多国籍軍とアフガニスタン軍にも軍事行動を中止するよう要請もしている注3。またアフガニスタンとパキスタンのパシュトゥーン部族リーダ600人と両国の大統領が参加して8月9日から12日まで開催されたピース・ジルガでは、「テロとの戦い」に触れつつも、ターリバーンとの交渉を進めるべきとの声明が発表された注4。多国籍軍による民間人の犠牲が増大しターリバーンをはじめ武装グループの勢力が急速に拡大するなか、アフガニスタンでは対テロ戦争の見直しを模索する動きが始まっている。

アフガニスタンにおける外国軍の位置づけ【要請3に対応】

2001年12月5日に締結されたボン合意にもとづくアフガニスタン和平は、戦争の当事者であるターリバーンを排除した和平である。戦争当事者の間の合意という真の意味での和平協定はどこにも存在しない。アフガニスタンは米英の先制攻撃によって戦争を仕掛けられたあと戦争状態になり、今でも戦闘は続いている。今アフガニスタンに展開している外国軍は2種類存在する。一つは対テロ戦争を戦う米軍を主体とする連合軍である。これは安保理決議に基づいていないために国連憲章に基づく国連軍にも、国連の平和維持活動に従事する多国籍軍にも当たらない。対テロ戦争を行う連合軍への支援は国連の枠外での集団的自衛権の行使に当たると考えられる。いま一つの外国軍はアフガニスタン政府の治安活動を側面支援することを目的とするアフガニスタン治安支援部隊(ISAF)である。これは国連安保理決議に基づいて派遣された多国籍軍であるが、アフガニスタンは戦争状態にあるため、紛争当事者に対して中立を守ることを原則とするPKOとは言えない。したがって日本がISAFに自衛隊を派遣しようとしても、根拠となる法律が存在しないと言わねばならない。

ISAFの対テロ戦争との一体化の危険【要請4に対応】

ISAFは安保理決議1386に基づいて治安確保の側面支援を担うものとして派遣された。したがって米英を中心とした対テロ戦闘部隊である連合軍とは異なる性格を有し、指揮系統も異なっていた。しかし2006年に米連合軍や地方復興支援チーム(PRT)を含むすべての外国軍がISAF/NATOの指揮下に統合されたことによって、ISAFと連合軍の線引きが曖昧になっている。また実際に南部、南東部、東部ではISAF/NATOの名のもとで対テロ戦争が戦われている注5。人道・復興支援を担う部隊として導入されたPRTも対テロ戦争の一翼を担う傾向が強くなっている。連合軍は東部地域では06年10月にISAF/NATOの指揮下に入った。これにより全国で連合軍のISAF/NATOへの指揮権の移譲が完了した。JVCの事務所のあるジャララバードでも、これまでターリバーンや他の反米・反政府武装勢力に対する急襲作戦、空爆を行っていた米軍戦闘部隊が、ある日突然ISAF/NATOの旗印を掲げるようになった。住民にとってもISAFと米軍を中心とする対テロ戦闘部隊とはもはや区別できない状態になったのである。

NGOの活動可能な領域を侵す、軍による復興活動【要請5に対応】

アフガニスタンが不安定化した原因のひとつは、復興の果実を住民が感じられないことにある。100億ドル近い国際支援が投入されながら、生活が改善されたとは感じられない人々が都市に農村にも多数存在する。道路が舗装され、学校や診療所ができ、町並みはきれいになり、都市では経済が活況を呈している。しかし復興景気や麻薬取引で潤う人間や、汚職で財をなす役人が存在する反面、取り残された貧しい人々との格差は広がる一方である。このことが格差と不公正に対する人々の反発,政府と国際支援に対する不信を助長している。復興の恩恵が地方に行き渡らない最大の障害は治安の悪さである。しかし多くのNGOは現在も地方の僻地で活動できている。対立するグループが併存し、時にターリバーンや他の武装勢力に関係する住民がいる地域でも、中立と公正の原則に忠実であることによって住民の信頼が得られ、活動の継続が担保されている。たとえば南東部のガズニ県で、アフガニスタン赤新月社は人道支援を行うに当たって常にターリバーンなどの武装グループとのコンタクトを怠らないという。ナンガルハル県のJVCの活動地にも反政府武装勢力に近い住民がいるが、現在まで住民の支持を得て活動が継続できている。

戦争と復興が同時に進行するアフガニスタンの復興支援の現場では、軍との距離を保つことが活動を継続できる環境を維持することに繋がる。米軍が導入し現在NATO/ISAFの管轄下全国25箇所で展開している地方復興支援チーム(PRT)は、軍事活動と復興支援活動の境界を曖昧にすることで、中立の原則を盾として活動してきたNGOなどの援助団体が活動できる領域を狭めている注6。2005年2月、私たちが支援するアフガニスタン東部クナール県の診療所が米軍のPRTによって占拠された。PRT部隊はそこで住民に薬剤と生活物品のばら撒きを行い、夜間には射撃訓練まで行った。住民に対する軍による宣撫および情報収集活動とみなされている。この事件によって診療所と診療所を支援する私たちの中立性は阻害され、戦争の当事者である米軍に敵対する勢力から攻撃される危険性が高まった。この事件に対しNGOと赤十字国際委員会は米軍に対し、このような医療活動の中立性を損なう軍による活動は国際人道法に違反しており即時中止するべきとの申し入れを行っている。

特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル6F
TEL 03-3834-2388/FAX 03-3835-0519/info@ngo-jvc.net

注1) 戦闘および「テロ」による被害者総数は2004年850人、05年1500人、06年4000人【国際NGO報告、地元新聞による概数】、民間人の被害者は2007年4月から8月までで1,060人、これは2006年の被害者数の2倍に当たる【アフガン内務省発表】、2007年7月144人、同8月168人。8月は過去最大である【アフガニスタン独立人権委員会発表】。

注2) 2007年6月の多国籍軍の攻撃による被害者は97人【British Agencies Afghanistan Groupレポート】。

注3) 2007年5月8日Reuters。

注4) 2007年8月16日Eurasia Net。

注5) 2007年10月6日クナール県チャウキ郡において600人の住民がISAFの空爆に反対するデモを行った。これは前日5日ISAFが同郡デワラ渓谷で空爆を行い8軒の民家を破壊したことに対する抗議である【Afghanistan NGO Safety Office レポート】。

注6) 2007年1月12日安倍前首相はNATOの理事会で、NATO率いるPRTの人道活動に対して日本政府が協力強化を行うと表明した。これを受けてアフガニスタンで活動する日本のNGOのネットワークである日本アフガニスタンNGOネットワーク(JANN)のメンバー5団体は同年1月31日、安倍前首相宛に公開質問状を送り前首相の発言の真意を質した。公開質問状では、PRTの問題点を指摘し、以下のように述べている。「アフガニスタンにおける外国軍隊の活動、ことに軍による「人道支援」と称せられる活動は、われわれNGOが長年にわたって追求してきた援助の質や独立公平性を揺るがしかねないばかりではなく、現地で支援活動に携わるNGOのスタッフの安全性にも影響を及ぼしうるものとして深く憂慮するものです。」

 
 


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