| ソック・サバーイ82号 |
| 2008年7月発行 |
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| 馬さんありがとう、そして、さよなら |
JVC東京 カンボジア事業担当 鈴木 まり
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去る5月28日水曜日朝、カンボジアの馬さんが急逝されました。突然のことで亡くなったことをしばらく信じられない思いでした。今でも、プノンペンの「クメール・キッチン」や日本食レストランに晩ご飯を食べに行けば、ご家族と一緒の馬さんにばったりお会いしそうな気がします。
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88年12月 JVC技術学校で
生徒達と、左から2人目が馬さん。
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写真裏に書かれた生徒たちの紹介。
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馬さんが2003年12月に、自費出版された本。
1987年から2000年までの13年間の内
側から見たカンボジアを書き留めた本です。
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JVCワークショップでの実習(1989年)
右から2人目が馬さん。
(私見 〜カンボジアでの十三年〜 から)
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馬清さんは、カンボジアがまだ社会主義政権下にあった1987年の整備工場立ち上げ時から2000年まで13年間にわたってJVC技術学校の技術者養成に携わられ、国の変化を技術学校のスタッフと一緒に見てこられました。その後、JHP・学校をつくる会のプノンペン事務所長として活躍され、カンボジアでの活動は計20年。まだ60才でした。5月31日にプノンペンのワット・ランカーでご遺族やカンボジア、日本のご友人たちが見守る中、荼毘に付されました。
JHPに参加するためカンボジアに戻られる前、馬さんと東京でお会いしました。初めて馬さんにプノンペンでお会いした1992〜93年当時にカンボジアにいた仲間たちと一緒でした。子どもの教育がカンボジア社会の最重要課題、と熱く語っていました。児童労働や児童買春の問題も、都会の子どもも農村の子どもも等しく学校に行けるようにならないとなかなか解決しないだろう。校舎はできても先生がいない、そんな話をしながら、カンボジアの10年後、20年後のことを心配していました。
技術学校でも、自動車の修理技術の前に、まず九九から教えなければならなかったそうです。根気よく教えながらも、いずれは自分たちの足で立ち、自分たちの手で稼いで自活していかなければならない生徒たちには、時に厳しく突き放し、自分の力で解決するよう促していた馬さん。写真は馬さんと当時の生徒たちですが、写真の裏に自筆で書かれた生徒たちの紹介からは、彼らが「かわいくてしょうがない」馬さんの気持ちが伝わってくるようです。そうして馬さんに鍛えられた生徒たちが今、プノンペン校の教員、技術者として後進の育成に携わっています。
馬さん、これからもプノンペン校の皆を、そしてカンボジアの今後を一緒に見守っていて下さい。本当に、本当に、ありがとうございました。東京の空から、謹んで哀悼の意を捧げます。
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カンボジアで予定されている四十九日の法要後、7月29日(火)、30日(水)のいずれかの夜に東京で、馬さんを偲ぶ会を予定しています。詳細はJVC東京事務所(清水もしくは鈴木)までお問合せ下さい。
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| 2008年カンボジア国民議会選挙 |
上智大学アジア文化研究所/カンボジア市民フォーラム 山田 裕史
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1. はじめに
新生「カンボジア王国」の成立から15周年を迎える同国では、7月27日に国民議会(=下院)選挙が実施されます。今回の選挙は、1993年の制憲議会選挙(国連暫定統治下で実施)、1998年と2003年の国民議会選挙に続くもので(選挙結果は表を参照)、1991年の「カンボジア紛争の包括的な政治解決に関する協定」(パリ和平協定)の締結後、4度目の総選挙です。本稿では以下、国民議会選挙の概要について述べた後、今回の選挙をめぐる諸問題と最近の政治情勢について紹介したいと思います。
2. 国民議会選挙の概要
カンボジアの国民議会選挙(定数123議席)は、国家選挙委員会(現在は9名で構成)によって管理・運営され、5年ごとに実施されます。選挙権は18歳、被選挙権は25歳です。選挙は各州/特別市を選挙区(全24選挙区)とする比例代表制によって実施されます。したがって、候補者はいずれかの政党から出馬せねばならず、無所属候補による立候補は認められていません。また、比例代表制を採用しているものの、定数1という選挙区、つまり事実上の小選挙区が24選挙区中9選挙区もあり、多くの死票を生むことになります。一連の選挙プロセスは、@選挙人登録、A政党・候補者登録、B選挙運動、C投開票、という4段階に分類されます。
今回の選挙の選挙人(=18歳以上の有権者で選挙人名簿に記載されている人)の数は8,125,529人で、投票所の数は15,255ヵ所となっています。カンボジア人民党、サム・ランシー党、フンシンペック党、ノロドム・ラナリット党、人権党など11政党が政党・候補者登録を済ませ、6月25日から30日間の選挙運動を行ないます。そして、投開票日の7月27日には、午前7時から午後3時までが投票、午後3時から各投票所で開票作業が行なわれます。最終公式結果は、早ければ8月13日に公表される予定です。
3. 選挙をめぐる諸問題と最近の政治情勢
カンボジアの現行の選挙制度は、1997年7月の人民党とフンシンペック党の武力衝突(「7月政変」)によって前者の軍事的優位が確立し、反人民党勢力の多くが一時的に国外へ亡命するなかで構築されました。そのため、人民党は選挙操作を通じて自らの勝利を確実にする制度をつくりあげ、それは選挙を重ねるたびに制度化しています。これまでの選挙における人民党の選挙操作として、@人民党による選挙管理機関(国家選挙委員会、憲法評議会)の支配、A暴力的・司法的手段による野党の排除、B表現・集会の自由の規制やメディアへのアクセスの制限といった、野党の選挙運動に対する制約、C選挙人登録の際の野党活動家・支持者に対する差別的対応や選挙人名簿の改ざんといった、反対勢力の選挙権の剥奪、D投票先指示などの脅迫・強要や、買収・賄賂による選挙人への干渉などの問題が指摘されてきました。
【表】議会選挙結果(1993〜2003年)
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1993年制憲議会選挙
投票率 89.56%
参加政党数 20 |
1998年国民議会選挙
投票率 93.74%
参加政党数 39 |
2003年国民議会選挙
投票率 83.22%
参加政党数 23 |
| 議席数 |
得票率 |
議席率 |
議席数 |
得票率 |
議席率 |
議席数 |
得票率 |
議席率 |
| カンボジア人民党 |
51 |
38.23 |
42.50 |
64 |
41.42 |
52.46 |
73 |
47.35 |
59.35 |
| フンシンペック党 |
58 |
45.47 |
48.33 |
43 |
31.71 |
35.25 |
26 |
20.75 |
21.14 |
| サム・ランシー党 |
- |
- |
- |
15 |
14.27 |
21.87 |
24 |
21.87 |
19.51 |
| 仏教自由民主党 |
10 |
3.81 |
8.33 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
| モリナカ党 |
1 |
1.37 |
0.83 |
- |
- |
- |
- |
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(出所)国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)および国家選挙委員会(NEC)発表の選挙結果を基に筆者作成。
こうした諸問題は、国内選挙監視NGOによる継続的な提言活動にも関わらず改善されず、今回の選挙でも報告されています。たとえば、国家選挙委員会と憲法評議会は依然として人民党の強い影響下にあります。また、5月末から6月上旬にかけては、野党に放送時間枠を提供したクロチェ州のラジオ局が閉鎖されたほか、サム・ランシー党の候補者であり主要野党系新聞の編集長が、ハオ・ナムホン副首相兼外相に対する名誉毀損と偽情報を流したという容疑で逮捕されるなど、野党の選挙運動に対する締め付けが強まっています。さらに人民党は、サム・ランシー党幹部(国民議会議員を含む)に対して政府顧問などの役職や現金を提供することで、同党からの離党と人民党への入党を促しているという報道もあります。
以上のような状況のなか、人民党は今回の選挙でさらに議席数を伸ばすだろうというのが、大方の予想です。これまで内閣信任には議員総数の3分の2(82議席)以上が必要とされたため、人民党は単独内閣を樹立できずにフンシンペック党との連立を組んできました。しかし、2006年3月の憲法改正よって、上記規定の「3分の2」が「単純過半数」に削減されたことで、人民党による単独内閣樹立への道が開かれました。フン・セン首相はこれまで、選挙後もフンシンペック党との連立政権を維持すると繰り返し表明してきましたが、最近では単独内閣を樹立する意向を示すようになりました。新生「カンボジア王国」の成立から15周年を経て、同国では名実ともに人民党による一党支配体制の確立が濃厚となってきました。
4. おわりに
こうしたカンボジア国内の動きを受けて、カンボジア市民フォーラムは今年の2月から3月にかけて、今回の選挙に向けた現地調査を行なうとともに、現地の主要選挙監視NGOのひとつである「カンボジア自由・公正選挙委員会」(COMFREL)による若者の政治参加を促進するためのプロジェクトに協力しています。これまでの選挙同様、7月には選挙監視員を派遣し、COMFRELなどのカンボジアNGOと協力して選挙監視活動を行ないます。
【お知らせ】
カンボジア市民フォーラムは今年度の活動のひとつとして、人権・民主化に関する連続セミナーを5月から開催しています。7月12日(土)の午後には、2008年国民議会選挙をテーマに第2回目のセミナーを東京都内で開催します。会場や時間は現在調整中ですが、決まり次第、カンボジア市民フォーラムのウェブサイト(http://www.pefocj.org/)に掲載します。ご関心のある方はぜひご参加ください。
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カンボジアチーム 近藤 裕之
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