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『シリア人の声をつなぐ』シンポジウムに参加して

JVC 英語ボランティアチーム 水谷 直子
2018年4月26日 更新

JVCも参加している「シリア和平ネットワーク」では、3月24日に「『シリア人の声をつなぐ』―危機発生から七年、私達に求められる役割―」というイベントを主催しました。当日の会場の様子や感想を、JVCのボランティアがまとめたのでご紹介します。

会場の様子会場の様子

『シリア人の声をつなぐ』シンポジウムに参加して

2018年3月24日(土)、明治学院大学で開催された『シリア人の声をつなぐ』というシンポジウムに参加しました。青山弘之先生(東京外国語大学教授)による「2018年のシリア情勢」の解説、ダマスカスのシリア人家族と個人的な交流を続けている葉狩真悠子さん、中野愛さんによる東グータの報告があり、最後にシリア危機研究者であるアルタウィル・ラウィアさんが「7年を振り返って、シリア人の想い」と題して、戦争という「日常」で生活せざるをない状況にあるシリアの人々の状況を語りました。

発表する登壇者・ラウィアさん発表する登壇者・ラウィアさん

シリアは多くの日本人にとってなじみ深い場所ではないと思います。私自身、訪問したこともないし、個人的な知人もいません。メディアから流れてくる断片的な情報をつないでみても、具体像を描くことは大変困難です。しかし、シリアの状況の解説を聞き、写真を見、そこで暮らす人の声を聞くことで、印象が大きく変わります。我々と同じような人々が実際に暮らし、しかも大変危険な状況の中を生き抜こうとしているということを感じ取ることが出来ました。今回のイベントは、シリアの生の情報に一歩近づく意義深い場であったと思います。

シリアで生きる人々は、何年もの間暴力にさらされ、戦争、紛争という「日常」を生きてきました。万が一私たちの住む場所が、戦争のような危機に巻き込まれた場合には、自分の想いになるのだ、ということをかみしめながら、聴いてみたいと思うのです。

背景 「2018年のシリア情勢」

最初に青山先生が現在のシリア情勢とその背景を解説しました。2011年、民主化を求める市民運動に発したシリア危機は、その後諸外国が国益を巡って争う国際紛争となりました。2018年に入って、アスタナ会議の影響とトランプ政権のシリアへの関与低下により、国際紛争としてのシリア内戦は終わりました。しかし、現実に戦闘は終わっていません。各国が一度とった利権を守るためにやりたい放題、侵攻、占領、空中戦を繰り広げています。シリア国内の被害状況は非常に深刻で、死亡者数は減るどころか増えており、複数の推計でズレがあるものの、2015年末で24万人が死亡、反政府側の支配地域だけで21万人が死亡、または2017年8月の段階で、政府側の支配地域だけで40万人が死亡......等と報じられているとのことでした。紛争前の人口は2,300万人弱だった中で、現在は国外に600万人、国内で600万人が、難民・避難民生活を送っている、と国連は報じているそうです。

シリアの市民運動であったはずのものに、「正義」や「テロとの戦い」などの名目で国内外の雑多な勢力が介入し、長期におよぶ破壊的な戦争になりました。「正義」や「テロとの戦い」という、何度も聞いたことのある言葉が恐ろしい面を持つということに私たちは注意を向けなければならないと思います。その結果としてシリアの人々の故郷、生活、平和が壊滅的に奪われているからです。

【参考リンク】

グータの人々の言葉:葉狩さん・中野さんの報告

ニュースなどの報道を聞いても、今ひとつ現実の問題として考えられないのは、当のシリア人の言葉や、現場の生の状況が伝わらないということも大きな要因です。もちろんシリア人と言っても一括りには出来ません。立場によって語る言葉も当然違うでしょう。だからと言って、◯◯◯万人死亡しました、というデータだけ知っていても実感がわかない、というのが多くの人の正直な気持ちかもしれません。しかし現場にいる人の声は大変な説得力を持っています。だれかの声に耳を傾ける、ということの意義を葉狩さんと中野さんの報告の中で考えさせられました。

葉狩さんは紛争前のシリアで現地調査を行い、そのあともダマスカス、東グータの人々と交流を続けています。2011年頃は電話での声もおだやかだったのが、包囲が開始された2013年4月頃から食料がなくなり、写真を送ることが禁止されるなど、緊迫した様子が伝わってくるようになりました。

中野さんはアラブ人の家庭にホームステイして以来、現在も主にメールでの交流を続けています。この地域はもともと緑の多いのどかな農村でした。イスラム教徒が多いのですが、平和を愛する大変あたたかい人たちだったそうです。一緒に折り紙をしている写真も紹介されました。しかし紛争が始まり、ミサイル、樽爆弾、毒ガスが人々を襲い、状況は悪化。電気不足、飢餓、治療不足が続き、もはや極限状態と言っても過言ではない状況が伝わってきます。中野さんに今年に入って届いたメールの内容を紹介します。

「息の詰まるような包囲が続いている。水も電気もない(1/20)」
「助けてくれませんか(1/25)」
「二か月前からグータはテロリストたちがいるという口実のもと空爆を受けている。しかし、この話は真実ではない。私たちは非武装の国民であり、平和を望んでいる。(3/5)」

そして3月13日以降、メールは途絶えているそうです。

戦地の日常:アルタウィル・ラウィアさんの言葉

アルタウィル・ラウィアさんは、シリア人としての思いを語りました。シリアは長い間、戦況により国がアサド政権側勢力、クルド勢力、反体制派など、複数の勢力により分断されています。支配地域を分断する境界線は、戦況により常に変化しており、そのことで市民は過酷な状況に追いつめられています。移動を繰り返す家庭も多いのですが、子どもや老人、障がい者がいるため、家族が分断されるケースもあります。また生存や居場所がわからない行方不明者が何十万人いるとも伝えられます。

生き残った者は毎日命の危険にさらされ、負傷、拘束、拷問も頻発しています。断水、停電、燃料の欠乏、公共サービスの欠如、医療、教育、役所仕事も止まっています。極限状態のなか、家族や友人に会えない人も多くいます。「7年間生き延びた自分たちはラッキーと思われるが、その間の苦しみは人間の想像を超えたものだ」と彼女は語ります。

では、どうしたらいいのでしょうか。まずは、紛争の影響を受けている人々が生き残るための支援が必要、と彼女は語ります。特にコストが高い医療サービスの支援は必要性、緊急度が高く、長期的には教育の重要性も強調していました。子ども時代のほとんどを紛争時代で過ごしてしまった子どもが増えてきているからです。極端な考えに走らないようにするための教育支援は、将来のために不可欠です。

そしてその支援の原動力になるのは私たち日本の市民の思い、声にほかなりません。

質疑応答の様子質疑応答の様子

最後に中野さんと交流のある東グータの市民の声を紹介したいと思います。 「私はあなたが多くの人たちにこの言葉を伝えてくれることを願っています。そして、すべてが真実であるとみなさんに伝えて下さい。あなたが私たちと共に協力してくれることに感謝します。あなたは東グータの家族の声や叫びを届けてくれる人だからです。」

人は絆でつながっているとよく聞きます。一方でこのような戦地での話を聞くと、果たしてつながっていると言えるのか、多くの人の苦しみや死を見て見ぬふりしてはいないか、と思わざるを得ません。苦しみの中にある人々が声を上げることは、それだけでも痛みを伴うことだと思います。「つなぐ」というのはだれかの声を聴き、伝えること。たとえ小さくても何か行動すること。今回、私がシリアの人々から受け取ったメッセージはこのことだったように思います。

(JVC 英語ボランティアチーム 水谷直子)

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