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コラテラル・ダメージは本当に「仕方のない」ことなのか

パレスチナ事業担当 並木 麻衣
2016年1月14日 更新

「コラテラル・ダメージなしに過激派をつぶすなんて、無理っすよ」

とある大学へ講演に行ったときのこと。ガザにおける市民の戦争被害を話した私に、一人の男子学生さんがISを例に取りながら投げかけた言葉です。

2014年夏の攻撃で多くの市民が亡くなったガザを歩く筆者(真中)2014年夏の攻撃で多くの市民が亡くなったガザを歩く筆者(真中)

「コラテラル・ダメージ」、つまり軍事行動における市民の巻き添え。2015年はフランスで2度も悲しい大事件が起こり、米英だけでなくフランスやロシアも、シリアへの積極的な空爆に乗り出した年でした。「ISの拠点を攻撃するためなら、たとえ巻き添えが出ても仕方がない」......そういった考えをもつ方は、この学生さんだけでなく世界中に沢山いらっしゃるのだということを、私は何となく感じています。
だからこそ彼の言葉は、私の心に棘のように刺さり続けています。国籍や信条、宗教にかかわらず市民を守る仕事をする私。傷つけられる人々の声を知るからこそ、一人でも無辜の市民が殺されてほしくないと願う私。そんな個人が、世界中にいるたくさんの「彼」「彼女」と、いったいどうやって交信し、お互いに意味のある意見交換をすることができるのか......。彼の一言は、この課題を私に突き付けているように思いました。

その日の午後、事務所に戻る電車の中で考えました。
現場へ行けば「どこまでが市民か」なんて曖昧です。だから、戦えば誰かしら市民が殺される。逃げ遅れる弱者も必ずいます。それでも国際社会は、「無実の誰かを殺してでも何かを倒さなければならない」という方針を、事実上貫き続けています。

考えていて、2つの映像を思い出しました。1つ目は、綿井健陽監督の撮ったイラクの映像。2003年のイラク戦争開戦当日、バグダッドの街と人々を取材した映像を織り込んだ映画「リトルバーズ」です。 戦車でバグダッドへ入り「イラクから独裁者を追い出すんだ」「そうするのが人々のためだ」と口々に言う米兵たちと、病院のベッドや床の上に並べられた死傷者の身体にすがりつく家族たち。「もう3人目だぞ!」と、小さな男の子の遺体にすがりついて叫ぶ父親。その食い違いを突きつけられ、言葉が出ないような映像でした。
2つ目の映像は、「仕方が無かったんだ」という言葉が重たい、原爆関連のドキュメンタリー。広島の被爆者の女性がアメリカでスピーチをした時、あるアメリカ人男性がこう言うのです。「あなたのことは可哀想だと思う。でも、原爆は仕方の無いことだったんだ。あれを落とさなければ平和はこなかった」。
その言葉を受けた被爆者の女性は、打ちひしがれた様子でした。もうすぐ自分の命は尽きると思っている彼女。自分と家族の人生をめちゃめちゃにした兵器の恐ろしさ、罪深さを、それを使った国の人に感じてほしいと願う彼女。それでも、魂を込めて話した相手に「仕方がないことだった」と返され、無力感に包まれた彼女の佇まいを、カメラが淡々と捉えていました。

二つの映像を思い出しながら、さらに考えました。
身体がちぎれた痛みに苦しむ誰かの顔も、布にくるまれ並べられた血の気の無い子ども達の身体も、ニュースやネットで見れば遠い場所の無関係な出来事のようです。それでも、子ども達の遺体に泣きつく親達の気持ち、手足や視界を奪われてベッドで黙り込む若者の気持ちは、日本の人たちこそが想像できるのではないかと私は思いました。
何故って、私たちはたとえ直接経験していなかったとしても、空襲や原爆の記録と記憶を繰り返し学んでいるはずだからです。たとえ戦時中の日本政府があまりに無茶で、市民がその日本を構成する一部だったとしても、圧倒的な武力でもって市民が殺されたことに対して「それで良かった」「仕方の無いことだった」という人は、日本にはあまりいないと思うのです。
その構図は、今日このときも空爆が行われているはずの中東の事情と重なるように思えます。そして私は、中東で「アメリカのイラク侵攻は仕方の無いことだった」「今シリアで行われていることは仕方の無いことだ」という言葉を聞いたことがありません。

私の祖母は、東京都足立区での空襲を生き延びた人間でした。もし彼女が隅田川に飛び込んでいたら、逃げる方向を間違えていたら、孫である私は生まれていません。人ひとりの命ですが、私にとっては存在をかけた、無視のできない命です。
「あの空襲は仕方がなかったんだ」「戦争を止めるために必要だった」という人がいたとき、祖母の顔を思い出し、今を目一杯生きている私はどう答えるのか。また、空襲をした国の人たちに、どういう声をかけてほしいのか...。br /> この問いにこそ、私たちがコラテラル・ダメージをどう捉えるべきなのか、それを「仕方が無いことだ」と言って良いのか、という問題の答えが眠っているように私は思います。引き続き考え続けたいと思いますが、皆さんのご意見も是非聞かせていただけたら嬉しいです。

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