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災害ボランティアは、きっと"支援のプロ"でなくていい。

パレスチナ事業担当 並木 麻衣
2015年11月11日 更新

パレスチナ事業担当の並木です。期間限定ゆるブログ記事、記念すべき第一回を担当します。先日、台風18号による暴雨のため決壊した鬼怒川に、休日を利用してボランティアに行ってきました。その時の気持ちを、記します。

「もう少し、ゆっくり考えても大丈夫ですよ」

あちこちに乾いた泥がこびりついた家の中で、ある男性が被災者のお母さんに向け、さらっと発したこの言葉。この一言に、隣にいた私はハッとしました。
2015年9月10日に、台風18号による暴雨のため決壊した鬼怒川。その泥水が流れ込んだお宅での、災害ボランティア活動中のことです。

このOさんという老夫婦のご自宅に私がお伺いしたのは、10月21日のこと。被災から1ヶ月以上経過していたこの日、すでに家の一階部分の床板は剥がされ、乾燥のために石灰が撒かれていました。
泥水に浸かったはずの窓ガラスは綺麗に磨かれ、台所には一つ一つ拭われた食器が丁寧に重ねられています。しかし、壁には私の身長と同じくらいの高さまで、所々黒いカビが生えていました。聞けば、泥水は160cmの高さまで押し寄せたのだそうです。壁の中の断熱材が、すでに水を吸ってしまって久しいのでしょう。

お母さんはこの日、私たちボランティアに「二階の家具やお布団を、すべて一階に降ろして欲しいの」と依頼していました。もうこのお家には夫婦では住めない、都内の子どもたちの家に世話になろう......そう考えての、自宅の整理作業でした。
もしお願いできるなら...この家具は捨てて、この服も捨てて...と、ボランティアに依頼したい作業を遠慮がちに口にするお母さん。その場面で、私たちボランティアを率いるピースボート災害ボランティアセンターのスタッフ・東野さんが、彼女に言ったのです。「もう少し、ゆっくり考えても大丈夫ですよ」と。

実は、この日は私にとって初めての、被災地における実地ボランティアでした。とにかく戦力になりたい、とにかく沢山手伝って帰りたい...と焦っていた私にとって、東野さんの一言は本当に新鮮だったのです。
この言葉には、別に災害支援に関する専門知識が詰まっているわけでも、力強さがこもっているわけでもありません。ただ、ひたすらに優しい思いやりが込められていました。生まれてこのかた、70年以上も常総のこの地で暮らし、運命のいたずらで突然平穏な日常を奪われてしまったひとに対する、想像力から生まれた言葉だと、その場で感じました。災害支援のプロというよりは、「共感のプロ」でした。

その後、一人で押入れの整理をしていた私のところに、お母さんがやってきて言ったのです。
「避難先から戻ってきて、この家の掃除をしたの。親戚30人くらいが集まってね。......今の若い人って、なんでも捨てちゃうのね。私、小さいころから日本舞踊をやっていて、着物を持っていたの。ちょっとした数だったのよ。ほんとうに。大切にしていた着物も、まだ袖を通していないものもあった。でもね、泥に浸かったタンスが開かなくて。ほら、歳だから、服はすべて一階に置いていたでしょう。それで、着物が詰まったタンスを、粉々にして、そのまま捨てられてしまったの。私が知らないうちに、全部ゴミになってしまったのね。一番悲しかったのは...そこかな。だから、今日はほんとうに嬉しかったです。ボランティアさんが、私に考える時間をちゃんとくれるって、言ってくれたから。」

窓の外の遠くを眺めながら、わずかに鼻をすすって話すお母さんの一言一言を噛み締めて、頭の中で考えました。
徐々に減っていくニュースの向こう側で、お母さんもお父さんも、日々泥と戦い、これからの生活を迷い続けていたこと。誰かがやってくれることに文句なんて言えないけれど、ほんとうは傷つくこともあるのだということ。そして、ボランティアの大事な仕事は、テキパキとプロフェッショナルに仕事を「片付けていく」作業の遂行ではないこと。そういったものを、私は「現場」に足を運ぶまで、全く分かっていなかったのだ、ということを実感しました。

朝8:00、集合直前に通った水海道駅朝8:00、集合直前に通った水海道駅

この原稿を書いている時点で、10月が終わろうとしています。常総市でのボランティアは、ピースボート災害ボランティアセンターさん常総市災害ボランティアセンターさんでまだ受け付けており、11月も引き続き支援が必要だそうです。
まだ手つかずの家も見ましたが、ボランティアが入っても、家一棟の掃除に一週間はかかります。そして、たとえ家から目に見える泥が消えても、畑の再生や生活再建など、ニーズはまだまだ続きます。また、今後のことを決めきれず、悩んでいる方も多いように思いました。

「ずっとここで暮らしてきたから、まだ家を直すか取り壊すか、ほんとうは迷っているの。だって、ここは全てが手に取るように分かる。春になると花が咲く場所も、ニラがどこに生えるのかも、果物がどれだけ実るのかも、全部よ。今から都内に出ても、何も分からないから怖いの。でも、ねぇ......」と、お母さんは言っていました。彼女が葛藤の末の決断を下すまで、彼女に寄り添う心と手がありますように、と願います。

テレビに映らなくなった現地が少しでも気になった方、どうか現地に足を運ばれてください。必要なものは、作業着とお弁当、そして事前に加入するボランティア保険(300円程度)のみです。今からでも、まったく遅くはありません。

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