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2016年10月31日

南スーダンの首都ジュバ、緊急支援日記(2)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2016年10月31日 更新

前回から続く)

9月3日 <言論弾圧>

ジュバの状況を知るために、なるべく多くの友人や知人に連絡を取ろうとしたのだが、電話番号が変わっているのか、既にジュバにはいないのか、連絡が取れたのは限られた人数だった。
元NGOスタッフのワニさんと連絡が取れた時、会話を始めるやいなや
「電話じゃだめだ。会って話をしよう」と言われた。
ホテルのレストランでワニさんに会った。客の少ない奥の席にすわり、小声で話し始めた。
「わざわざ悪かったな。電話じゃどうしても話せないんだ」

最近のジュバでは、公安警察が電話の盗聴記録から「反政府的な言動をした」として多くのジャーナリスト、市民を逮捕し、一部は殺害しているという。市の郊外には「ブルー・ハウス」と呼ばれる政治犯専門の留置場があるらしい。直接に反政府的な言動だけでなく、南スーダン政府にとって不利になる情報-軍による略奪行為、レイプ、村の焼き打ち、食料の不足など-を電話で国外の第三者に伝えると、それだけで「犯罪」とされてしまう。ワニさんと私の共通の知り合いにも、そのようにして長期にわたり留置され、釈放されて国外に逃亡している人がいた。
「公安警察が外国人を直接逮捕したり危害を加えたりすることはないだろうけどな」 ワニさんは私を見ながら、
「でも、南スーダン人のオレたちは常に危険にさらされているんだ」

スーダン南北内戦が2005年に終結し、私がジュバで生活し始めた10年ほど前、現地の友人たちから「内戦中の(北部)スーダン政府による言論弾圧」の話をよく聞かされた。密告によって「反政府」とされた人物は公安警察に拘束され、場合によっては殺害される。そうした抑圧から逃れるために南スーダンの人々は戦い、そして独立をかち取ったのではなかったのか。
今、北部スーダン政府はいなくなった。しかし、「自分たちの」政府であるはずの南スーダン政府がまるで内戦中と同じようなことを始めているのだ。

9月4日 <無人化する村々>

日曜日なので特に予定はないのだが、ジュバの友人たちと教会を訪れてみた。 市内の中心部に近く、長い歴史を誇る聖ジョセフ教会では、日曜礼拝が行われていた。ジュバの教会は、使用する言語によって二部制、三部制で礼拝を行っているところが多い。ここ聖ジョセフ教会も三部制だ。英語の礼拝、続いてジュバ・アラビア語(アラビア語の一変種)、そして最後にジュバの地元言語であるバリ語の礼拝が行われる。「地元言語」とはいっても、首都のジュバには元々この地域に居住していたバリ人だけでなく、各地から集まった様々な民族グループが住んでいる。教会の礼拝も、アチョリ人が多い地区ではアチョリ語、マディ人が多い地区ではマディ語といった具合に行われることも多い。ちなみに、南スーダンには数十の異なる言語があるとも言われる。その中で、事実上の共通語として使われているのがジュバ・アラビア語だ。

この聖ジョセフ教会は、7月の戦闘時に多数の避難民を受け入れた教会のひとつだ。今では避難民の影も形もないが、果たして皆が無事に家に戻ることができたのか。教会関係者に少し話を聞いてみたかったのだが、なにせ三部制だから礼拝にも時間がかかる。再度訪問することにして、この日は教会を後にした。

夕方、ウガンダ人の友人、ベンソンが私の滞在するホテルを訪ねてきてくれた。 彼は腕の良い車両整備士で、JVCが整備工場兼職業訓練所を運営していた頃には、当時難民キャンプから戻ってきたばかりの南スーダン人の若者への整備実習を担当してくれていた。今は、ある外国援助機関で車両運行のマネジャーをしている。
職業訓練を行っていたのはもう7年も前だが、当時の研修生たちの今の活躍ぶりで話が盛りあがった。

「知ってるか。△○は今、国連機関で整備士になってるんだぞ」
「なんだ、アイツ、落ちこぼれだったじゃないか」
話をしていくうちに、嬉しい情報に巡り合った。数少ない女性の研修生だったポニーが「国境なき医師団」の整備士として働いているという。
「結婚や出産を経験して、もう整備士はやめたんじゃないかって思っていたけどな」
「オレも、しばらくは知らなかったんだ。最近聞いた話だ」

女性の研修生を採用したことについては、賛否両論あった。「女性の社会進出だから、よいこと」という賛成意見に対して、「そんなキレイごとではなく現実を見るべき。研修受けたって、この国では女性が整備士になれる可能性はほとんどない。結婚したら家族も許さない。これじゃ、かえって本人のためにならない」という意見も根強い。実際に、卒業して全く関係のない道に進んだ女性の研修生もいた。だからこそ、ポニーの活躍は心強い。

ひと通り研修生たちの話が終わると、話題はもっと現実的な問題に移った。 最近、ベンソンは休暇でウガンダの家族の元に帰り、バスで再度ジュバに戻ってきたのだが、その道中で無人化した村々を見てきたという。
「ニムレ(ウガンダ国境の町)から南スーダンに入って、しばらく走ったあたりだ。村が襲われて、住民は皆逃げてしまった。誰もいない村が続いているんだよ」
2013年に始まった南スーダンの内戦は、国の北東部、ユニティ州、アッパーナイル州、ユニティ州あたりが主戦場になってきた。多くの村が襲撃され焼き打ちにあった。
しかし今、そうした事件はジュバよりも南、ウガンダやコンゴ民主共和国との国境との間に広がる地域―エクアトリアと呼ばれる―で起きている。

このあとのジュバ滞在で、多くの人々からその惨状を耳にすることになる。 (続く

(おことわり:文中に登場する人物について、本人が特定されることを防ぐため一部で仮名を使っています)

2010年、JVCは現地の団体(南スーダン教会評議会)に整備工場を引き継いだ。多くの卒業生を輩出した職業訓練は、今も継続して行われている(2015年撮影)。2010年、JVCは現地の団体(南スーダン教会評議会)に整備工場を引き継いだ。多くの卒業生を輩出した職業訓練は、今も継続して行われている(2015年撮影)。

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