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前回から続く)

研修生たち(前列)後列は工場長を始め整備士・スタッフ研修生たち(前列)後列は工場長を始め整備士・スタッフ

エンジン分解修理の練習をする研修生たちを見ていると、いつの間にか工場長のサイモンさんが後ろにやって来ています。
「今年の研修生は優秀だな。例年だったらエンジンの分解修理は1年の訓練期間の最後に行うんだが、今年は半年でもうここまで到達している」
工場長も、研修生の成長には満足そうです。
「今年の研修生は何人ですか?」
「15人だ」
JVCが運営していた当時に毎年20人程度を受け入れていた職業訓練は、2010年に工場が南スーダン人に引き継がれてからも継続されていました。しかし、内戦が起きて工場経営が難しくなった今でも継続されているのは驚きです。

その点を質問すると、
「どんな時でも、将来のために若い世代を育てるのが我々の役割だ」
工場長からは明確な答えが返ってきました。
「実習だけでなく、車両整備の基礎に関する講義だって継続しているぞ」
トタン板で仕切られた講義室を訪れると、10年近く前にJVCが持ち込んだ机と椅子、黒板がそのまま使われていました。非常勤ですが専任の講師もいます。
「でも、研修にかかる費用はどうやって工面しているんですか?」
それが、大きな疑問です。
「誰も支援をしてくれなければ、自分たちで稼ぐしかないだろう」
そう言ってサイモンさんが指さしたのは、整備工場の門の脇にあるトタン小屋です。
「幸いにも、この工場の隣はバス発着場で、たくさんの露店商が集まっている。露店商のための倉庫としてあの小屋を貸しているんだ」
なるほど、露店商らしき人たちが商品の衣料品や日用品を倉庫から運び出しているのが見えます。
「事務所の裏の給水塔からも収益を上げている」
「えっ、あの水って料金を取っているんですか?」
整備工場の給水塔に汲み上げた水を、周辺の屋台食堂で働く女性たちが汲みに来ているのは私も目にしていました。無料ではなく、有料販売だったのです。そうした収入を活用して、なんとか研修が続けられているのです。

講義室では、JVC時代からの机や黒板がそのまま使われていた講義室では、JVC時代からの机や黒板がそのまま使われていた
この給水塔の水を販売しているこの給水塔の水を販売している

南スーダンの首都、ジュバを訪問して(3)
-自衛隊が建設した道路-

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2015年10月 8日 更新

前回から続く)

サイモン工場長を中心に南スーダン人の整備士・スタッフによって運営される車両整備工場。その所有権を持っているのは、実は「南スーダン教会評議会」という教会組織です。私たちJVCとも十年来の友人になります。
事務所を訪問すると、事務局のレッチャさんが
「おいおい、いったい何年ぶりなんだ?」
とおどけたように言って歓迎してくれました。
互いの近況報告をしながら、話はどうしても現在の南スーダン情勢に行き着きます。教会評議会は、今回の内戦において戦闘当事者の双方に対して和解を促す働きかけも行っています。

「とにかく、この戦争の被害者は我々エクアトリア人だ」
レッチャさんは、今回の内戦は大統領派のディンカと反大統領派のヌエルという、国の中央から東北部にかけて住んでいる民族グループ同士の戦争だと言います。その説に従えば、首都ジュバを含む国の南部のエクトリア地方に住む人々は、自分たちには関係のない戦争のおかげでとんでもない被害を受けていることになります。
「戦火を逃れ、家畜の群れを連れた大量のディンカが南下してエクアトリア地方に避難してきている。いったいどうなると思う?」
ディンカの生活は半農半牧、所有するウシの頭数は半端ではありません。他方でエクアトリアの人々の生活は農耕が中心です。
「ウシが畑を荒らしてあちこちで大変な騒ぎだ」
もちろん、ディンカの人々こそ被害者だとも言えます。内戦の恐怖から安全な場所を求めて避難しても、移動先で今度は地元の人たちとの争いに巻き込まれているのです。和平が実現しない限り、次々に新しい紛争の火種が出てきます。

前回から続く)
整備工場の会計担当、ドゥドゥさん整備工場の会計担当、ドゥドゥさん

整備工場の敷地に入ると、右手に見える整備スペースではエンジンの分解修理が行われています。
私の訪問に驚いている整備士たちと再会の挨拶を交わし、事務所の扉を開けると会計担当のドゥドゥさんが帳簿を付けていました。
「あらまあ、久しぶりだねえ・・きょう来るなんて、全然知らなかったよ」
事前に連絡はしていたものの、確かに日付までは知らせていませんでした。それにしても、そんなに目を丸くして驚かなくても・・と苦笑しながら、
「ドゥドゥさん、元気でしたか?それに、工場のみんなも」
「みんな元気だよ。いま、工場長のサイモンはちょっと留守だけどね、すぐに戻るからね」
「じゃあ、ここで待たせてもらっていいですか?」

工場長を待つ間、2013年12月の市街戦についてドゥドゥさんに尋ねてみました。
「怖かったけどね・・整備工場は無事だったよ。このあたりは、戦闘が起きた場所からちょっと離れていたんだよ」
「ドゥドゥさんの家は?」
「ウチのあたりも大丈夫だったさ。家族も全員無事だよ」
ドゥドゥさんの家は、ジュバの西のはずれにそびえ立つ山の麓にあります。
「じゃあ、どこで戦闘が起きたのですか」
「軍の施設がある、あっちのほうさ」
ドゥドゥさんが指さしたのは、ニョクロンと呼ばれる地域。市の南西部にあたります。
「それと、ムヌキだよ。たくさん人が死んだって・・」

ムヌキは、市街地の北西に広がる住宅地です。南スーダンを構成する多様な民族グループの人々が住んでいますが、その中に、反大統領派リーダーの出身民族である「ヌエル」と呼ばれる人々が多く住む区域があります。大統領の出身民族である「ディンカ」の武装したグループが「ヌエル」を襲撃、または両者が戦闘をしたとの報告が多く寄せられています。殺戮、略奪、焼き打ちが行われ、恐怖を生き延びた人々は国連施設に逃げ込みました。襲撃や戦闘を行ったのが正規軍なのか、民兵、または武装した住民なのか、そしていったい何人が犠牲になったのか、その全体像は今も明らかにはなっていません。

南スーダンの首都、ジュバを訪問して(1)
-繰り返される内戦-

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2015年10月 7日 更新

スーダンにいる私のもとに、日本の新聞社から立て続けに電話が入りました。

「安全保障法案が可決されて、政府はさっそく、南スーダンに派遣している自衛隊に『駆けつけ警護』の任務を与えようとしていますが、それについてお話を聞かせていただけませんか?」
「ちょ、ちょっと待ってください。私がいるのはスーダンで、南スーダンではないのですが」
「はい、それは分かっていますが、でも、何かコメントを・・」

確かに、私は2007年から3年間、JVCの駐在員として独立前の南スーダン(当時はスーダンの一部)で生活をしていました。その後も「隣国」になったスーダンにいるわけですから、南スーダンの情報は色々と入ってきます。
今年6月には、久々に南スーダンの首都ジュバを訪問しました。今回の「現地便り」(4回連続)は、ジュバ訪問記を中心に自衛隊や「駆け付け警護」についても少し触れてみたいと思います。

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