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2014年7月27日

カドグリからの電話

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年7月29日 更新
「封鎖地区」の村の様子(紛争勃発前、2011年にカドグリ南方のブラム郡にて撮影)「封鎖地区」の村の様子(紛争勃発前、2011年にカドグリ南方のブラム郡にて撮影)

それは、6月初旬のことでした。

「おい、この音が聞こえるかい?」
電話口からは、会話がかき消されそうなくらいの轟音が響いてきます。
「何だって?何の音だい?」
私の声も、自然と大きくなります。
「軍のヘリコプターだよ。いま、町の上を低空飛行していった」

電話の相手は、カドグリ市内に住むアリ君。年齢は30歳前後でしょうか、単身赴任で中学校の英語教師をしています。首都ハルツームにいる私とは、ときどき携帯電話を掛けあう仲。よく「英語でしゃべる機会が少ないから、いい練習になるんだよ」と言って笑っています。私が訪問することのできないカドグリの様子も、折に触れて教えてくれます。

「どっちの方角に飛んでいった?」
「東の方だ。朝の5時頃から、そっちで大きな戦闘が起きているらしい。砲撃の音がカドグリまで届いてくるんだ。ヘリを飛ばして、空からも攻撃するつもりなんだろう」

5月以降、人々が「封鎖地区」と呼ぶ反政府軍の実効支配地域に対して、政府軍の攻撃が激しさを増しました。雲の上の爆撃機からの空爆、ヘリによる低空からの攻撃、そして地上軍の侵攻。「封鎖地区」とは、カドグリで避難生活を送る多くの人々が、紛争が始まる前に住んでいた村々です。家族の一部を「封鎖地区」に残してきた人も少なくありません。故郷の村々を攻撃する軍用機が、そうした人々の頭上を出撃していくのです。

夜になり、アリ君がまた電話をくれました。
「今日は、とんでもない日だったよ。朝から2時間も3時間も砲撃の音がした」
「それで、その後は収まったの?」
「音は収まった...でも、収まったと思ったら、こんどは次々に、軍の病院に兵士の遺体や怪我人が運ばれてきたらしい。手術のためヘリでハルツームにも運ばれていったって...オレが見たわけじゃないけど」
今日のカドグリはそんな話で持ちきりだった、とアリ君は言います。

「今回は、政府軍も本気だよ。知ってるかい?先月の中ごろだったかな、ものすごい台数のクルマが、兵士を乗せてカドグリに入ってきたんだ」
「軍のクルマかい?」
「そうだよ、いつもの、銃をのっけたアレだよ」

紛争地で、それは標準的な軍用車両です。四輪駆動の小型トラック(ピックアップトラック)の荷台に銃座を据え付け、機関銃を装備しています。
「何台来たと思う?」
「何十台も、か」
「オレ、数えたんだよ。ちょうど、大通りの近くにいたからな。最初の日に400台。次の日は300台」
途方もない数の増強部隊です。
「あれ、みんな日本製のクルマだろ」
「えっ...」
そうです。そのタイプの軍用車両のほとんどが日本車なのは、周知の事実です。
「そうだよな、性能がいいからな...」

私が適当な言葉を見つけられずにいるうちに、アリ君は、
「そうやって、みんな、どんどん戦場に出ていくんだ。兵士はね、オレと同じくらいの年代だよ」
静かな口調で続けました。
「オレなんてさ、毎日毎日、出来の悪い生徒を相手にしていればいいけど、あいつらは...何かあったら、それで終わりだろ」

会話は、そのまま行き場を失ってしまいました。
ハルツームでは、政府軍が勝ち進んでいる様子が、毎日の新聞を賑わせていました。確かに、政府軍は少しばかり前進したようです。しかし、誰が「勝者」なのでしょう。

6月も終わりに近づくと、カドグリ周辺では本格的な雨が降り始めました。涸れ川がいきなり濁流となり、道路はあちこちで寸断されます。戦闘部隊の移動も難しくなります。そして、6月末からラマダン(断食月)が始まりました。
戦闘は、小康状態に入ったようです。しかしこの静けさがいつまで続くのか、人々は知る由もありません。

【おことわり】
JVCは、スーダンの首都ハルツームから南に約700キロ離れた南コルドファン州カドグリ市周辺にて事業を実施しています。紛争により州内の治安状況が不安定なため、JVC現地代表の今井は首都に駐在し、カドグリではスーダン人スタッフが日常の事業運営にあたっています。このため、2012年1月以降の「現地便り」は、カドグリの状況や活動の様子を、現地スタッフの報告に基づいて今井が執筆したものです。なお、文中に登場する住民の名前は仮名を使用しております。

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