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2014年2月16日

「封鎖地区」に残された家族

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2014年2月17日 更新

(前号より続く)

アジザさん、近所の主婦たちから話を聞くJVCスタッフアジザさん、近所の主婦たちから話を聞くJVCスタッフ

赤、青、黄色...色とりどりのトブ(スーダンの女性の間で一般的な一枚布の着衣)をまとって、避難民向け住居の主婦たちがアジザさんの家のラクバに集まっています。「ラクバ」とは、家の前に大きく張り出した草ぶきの軒先。その下は、一家のだんらんの場であり、台所であり、作業場であり、夜にはここで就寝し、昼にはご近所のおしゃべりの場になります。森から切り出した木で作った手作りのベッドは、おしゃべりの時間には格好の長椅子です。

JVCスタッフは、ベッドに腰掛けた主婦たちからそれぞれの収穫の話を聞いていましたが、やがて話は家族のことに移りました。

「ところでアジザさん、この家に誰と暮らしているのですか?」
さっきからここにお邪魔していても、家族の姿は見当たりません。
「娘がいるんだけどね、今日はカドグリの町の親戚に会いに行っているよ」
娘さんとの二人暮らし。ほかの娘や息子たちは既に結婚して家を離れています。

夫は兵士として長く従軍するうち、別の女性を妻にして子をもうけ、ここに戻ることはないそうです。スーダンでは、複数の女性と結婚することは認められており、珍しいことではありません。

話を聞いていたニダさんが言いました。
「この避難民向け住居の家族のほとんどは、女と子どもだけで暮らしているんだよ。男は兵隊に行っているか、死んでしまったか、そうでなけりゃ『封鎖地区』にいるんだよ」
そういうニダさんも、兵士だった夫を亡くしています。

「封鎖地区」とは、何なのでしょう?
2011年に紛争が始まって以来、南コルドファン州のヌバ山地と呼ばれる一帯は、州都カドグリのように政府が掌握する地域と、反政府軍が実効支配する地域に二分されています。やがてカドグリの人々の間では、反政府軍が支配する地域は「封鎖地区」と呼ばれるようになりました。そこに至る道は軍によって封鎖され、立ち入ることができないからです。

今は「封鎖地区」になっているJVCの元活動地、ブラム郡の収穫の様子(紛争勃発前の2011年3月撮影)今は「封鎖地区」になっているJVCの元活動地、ブラム郡の収穫の様子(紛争勃発前の2011年3月撮影)
同じくブラム郡にて、牛飼いの少年たち(紛争勃発前の2011年4月撮影)同じくブラム郡にて、牛飼いの少年たち(紛争勃発前の2011年4月撮影)

避難民向け住居のほとんどの人々は、この「封鎖地区」の村々から逃れてきました。反政府勢力の影響下にあるとみなされた村々は、政府軍の激しい空爆に見舞われたのです。

黄色のトブを着たシャマさんは、村では夫と7人の子どもと暮らしていました。
「爆弾がね、雨みたいに降ってきた」
シャマさんは言います。
「あわてて子どもの手をとって山の中の洞穴に逃げたんだよ。その時、連れていた子どもは5人。あとの2人は父親と一緒だったはずだけど、洞穴でいくら待っても来なかった...別の方角に逃げたんじゃないのかね」

夫を待つのをあきらめ、子どもたちの手を引いてカドグリにたどり着いたシャマさん。夫と2人の子どもの行方は分かりませんが、たぶん村に残っているのではないかと考えています。連絡の方法はありません。

アラディヤさん夫妻は、8人の子ども、それに夫の母親と一緒に暮らしていました。山中に身を潜めながら、家族がどう生き延びるかを話し合ったそうです。母親は、長年暮らした村を離れることを望みませんでした。母親ひとりを残すわけにはいきません。大切な畑のことも心配です。「オレが残るから、お前は小さな子を連れて安全な場所へ行け」と言う夫と年長の子ふたりを残し、アラディヤさんは6人の子の手を取ってカドグリに向かいました。

「封鎖地区」とそこに残る家族のことを、人々はあまり語りません。何も分からないのか、それとも、知っていても話さないのか。「封鎖地区に残っている=反政府勢力の影響下にある」とみなされるため、私たちも立ち入って質問することは避けています。

しかし「封鎖地区」という異様な響きとは関係なく、人々にとってそこには家があり畑があり、木の実や野草が採れる裏山があり、月夜のお祭りの広場があり、そして今も大切な家族が暮らす故郷なのです。

アラディヤさんは、残してきた2人の子どもを思い出したのか、目に涙を浮かべていました。

「ここでの生活は落ち着いているし、政府はもう平和だと言っている。でも、私たちのような家族をどうしてくれるのか。子どもたちと一緒に暮らせる日が来るまで、平和になったなんて言って欲しくない」

【おことわり】
JVCは、スーダンの首都ハルツームから南に約700キロ離れた南コルドファン州カドグリ市周辺にて事業を実施しています。紛争により州内の治安状況が不安定なため、JVC現地代表の今井は首都に駐在し、カドグリではスーダン人スタッフが日常の事業運営にあたっています。このため、2012年1月以降の「現地便り」は、カドグリの状況や活動の様子を、現地スタッフの報告に基づいて今井が執筆したものです。

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