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2013年12月10日 【 避難民向け住居への給水活動

取らぬ狸の収支計画?

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年12月 3日 更新
組み上がった給水塔の下で進む建設作業組み上がった給水塔の下で進む建設作業

井戸管理委員会の会合に参加するため、JVCスタッフはティロ地区の避難民向け住居に向かいました。ティロ本村を過ぎて畑の中に入ると、すっかり背丈が伸びたソルガムの穂先が風に揺れています。収穫は、もう間近なようです。

ソルガムの合間から、給水塔の青色のタンクが見えてきました。

「おお、ウォーターヤードが、ついに!」

窓越しに給水塔を見つけたスタッフのタイーブは、やや興奮しています。トラックが資材を搬入してからほんの数日、工事はぐんぐん進んでいるようです。

セメントを塗ったばかりの共同水栓。手前はポンプを動かすための発電機セメントを塗ったばかりの共同水栓。手前はポンプを動かすための発電機

建設現場に到着すると、作業員が共同水栓のセメントを塗っているところでした。既に井戸にはポンプが設置され、給水塔、共同水栓までの配管もつながっています。水回りの工事はもうすぐ終わり、最後の工程になる機械室やフェンスの工事に移れそうです。

井戸管理委員会のメンバーも、建設現場にやってきました。

「毎日工事を見ているけどね、順調に進んでいるよ」
と満足そうに言うのはアフマドさん。彼の家は現場のすぐ目と鼻の先なので、工事のお目付け役に任命されています。

「それじゃ、会合を始めましょうか」

木陰の集会所に椅子を持ち出して、メンバーが輪になって座りました。

今日のテーマは、ウォーターヤードの収支計画です。運転に必要な費用を見積もり、それをまかなうための収入をどうやって確保するかを考えなくてはなりません。

ロバの水売りへの給水栓ロバの水売りへの給水栓

「乾季と雨季とでは、生活に必要な水の量も、水を飲みに来る家畜の数もまったく違います。分けて考えてはどうでしょうか」
JVCスタッフのアドランが提案しました。

「そうだな。では、これから乾季が始まるから、乾季の運転費用から計算してみよう」

リーダーのブシャラさんが話を進めます。
「まず、燃料代だ。どのくらい必要かな?誰か、わかるか?」
みんなが一斉にアフマドさんの顔を見ました。彼は先日、10日間の技術研修に参加して各地区のウォーターヤードの様子を見てきたので、きっと知っているはずです。

会合で発言するアドラン会合で発言するアドラン

「えっ、オレが答えるの?」という顔をしたアフマドさんでしたが、しばらく思い出すように考えてから口を開きました。
「そうだな、乾季には、忙しいウォーターヤードだと1日に5回くらい水を汲み上げている。そうすると、発電機を回すための燃料の軽油は、1日1.5ガロン(1ガロンは約4リットル)くらいかな」
研修で得た知識がさっそく役立っています。

「1日1.5ガロンということは、1か月は30日だから、1.5掛ける30で45ガロン」
ブシャラさんがすぐに計算しました。
「軽油の値段はいくらだ?」
「このまえ値上げされたばかりだ。1ガロン14スーダンポンドするぞ」
「45ガロン掛ける14スーダンポンドってことか。ええと・・これは計算が難しいな。ズベルさん、ちょっと計算してくれるか」

ズベルさんは、委員会の中でもいちばん読み書きや計算が得意です。手元の紙に書いて計算しています。
「630スーダンポンド!」
「よし。では、そのほかには何が必要だろう・・」

燃料代630スーダンポンドのほかに、オイル交換で240スーダンポンドかかります。さらに、消耗品の交換や修理費用のため毎月300ポンドを積み立てることになりました。
「それから、ウォーターヤードの入口の開け閉めや発電機の操作をする管理人が必要だ。委員会のメンバーが交代でやるけれども、少し手当を払わなくてはならないだろう」
ここで、ブシャラさんがアドランを見て言いました。

「JVCは、管理人の手当を払ってくれないのか?」
こんどは、全員がアドランに注目して、答えを期待しています。
「いや、その、前に説明しませんでしたっけ?」
アドランも冷や汗ものです。

「で、ではもう一度きちんと説明します。JVCはウォーターヤードの設置には責任を持ちますが、完成して引き渡したあとの運営にはおカネは出しません」
期待外れの答えにがっかりしたのか、少し沈黙が続きました。

「そうか。じゃあ、仕方ないな。手当も費用として見積もらないといかん」
あきらめたように、ブシャラさんが言いました。
「管理人を2人が交代でやるとして、ひとりにつき300、2人合わせて600スーダンポンド。ほかのウォーターヤードも、毎月そのくらいは支払っているよ」とアフマドさん。

「では、毎月の支出を全部合計すると、1,770スーダンポンドか」

ここまでの計算にずいぶん時間がかかりましたが、次は収入の見積もりです。
「乾季には、ウシがたくさん水を飲みにくるぞ」

この地域では、牧畜民が数十頭、数百頭の家畜を牧草地に移動させながら、水を飲ませます。ウォーターヤードを利用した場合、ウシ1頭の給水につき0.5スーダンポンドを支払うのが通例です。

「何頭くらい来ますかね?」
期待を込めてタイーブが尋ねてみました。
「この場所なら、300頭は来るぞ」
「そんなに!」
「よしよし、そしたら収入はいくらだ?」
「1日で150スーダンポンドだ」
みんな、うれしそうに話しています。

「300頭も、本当に来るのでしょうか?」
アドランがちょっと冷静にそう言うと、みんな「心配するな」「本当は300頭どころじゃない、もっと来る」と言って取り合ってくれません。取らぬ狸、という言葉が日本にはありますが、スーダンの場合、何と言うのでしょうか?

計算の結果、1日にウシが300頭、そのほかにロバの水売りも10台がやってくるので、収入は合計180スーダンポンドになります。1か月では5,400スーダンポンドです。

「よし、今日の見積もりの結果、乾季の運転費用は1か月あたり1,770スーダンポンド。収入は5,400スーダンポンドだ」
「雨季の間はどうですか?」
「雨季には家畜はこないから収入はゼロ。でも、乾季にこれだけの収入があれば、雨季の費用を十分にまかなえるぞ」

最後に、アドランが別の問題を提示しました。
「みなさん、乾季が本格的に始まって家畜からの収入が見込めるのは12月か1月。でも工事が終わって運転が始まるのは11月です。最初の1~2ヶ月は、収入がありません。その間の費用は、どうするのですか?」
「それもそうだな。じゃあ、その分は各住民からおカネを集めることにしよう。ウムダ(住民リーダー)にも相談してみる」

会合を通じて収支のことを真剣に考えて欲しいと思ったアドランですが、いかんせん「家畜が来るから大丈夫」と皆が楽観する結果になってしまいました。

しかし、本当にウシは来るのでしょうか?

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

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2014年1月28日 更新ウォーターヤードの引き渡し式
2014年1月28日 更新住民への引き渡しが決定
2014年1月28日 更新消えたおカネ
2013年12月26日 更新ウシはどこにいる?
2013年12月 3日 更新取らぬ狸の収支計画?
2013年12月 3日 更新井戸管理委員会のマネジメント研修
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2013年11月11日 更新ウォーターヤードは誰のもの(1)水公社、それとも住民?
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