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2013年9月10日

ウムダとの再会

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年9月13日 更新
周辺には農業の適地が広がる周辺には農業の適地が広がる

JVCカドグリ事務所に戻ったスタッフのアドランは、さっそく種子を配布する準備にかかりました。

しかしその前に、この時期の配布が遅すぎないかどうか、農業の専門家に確認しなくてはなりません。灌漑設備の少ない南コルドファン州では雨水に頼る天水農業が中心ですが、雨季が始まって早や2ヶ月半。あと3ヶ月もすれば乾季がやってきます。穀物の穂が出る前に雨が終わってしまったら、せっかく育てたものが台無しになります。

州農業省を訪れると、幸いにも農学博士号を持つ次官に会うことができました。さっそく事情を説明すると、
「配布時期として推奨できるのは7月20日頃までだね。もう7月も終わりだから期限は過ぎているけれど・・・配布する種にもよるね」
「種っていいますと?」
「在来種の種子は生育に時間がかかるから、今から種をまいても手遅れだ。でも改良種ならば、なんとか間に合うね。それならいいんじゃないか」
「分かりました。今回は改良種を配布します。ありがとうございました」

在来種とは、長い間その土地で栽培されてきた品種です。一方の改良種とは、種苗会社が新しく開発したもの。改良種は生育期間が短く、主要穀物のソルガムの場合、在来種の半分近い2ヶ月程度で収穫を迎えるものもあります。在来種と改良種にはそれぞれ一長一短があるため、これまでJVCは両方を配布してきました。しかし、今回はこのような事情で改良種のみの配布となります。

農業省の次は人道支援局(人道支援を担当する政府機関)です。配布の許可を取得しなくてはなりません。
「種の配布?今からじゃ遅すぎるだろう」
アドランが持参した許可申請を見るなり、担当官は顔をしかめました。
「いえ、農業省の意見を聞いたところ、問題ないそうです」
「本当か?」
「はい、改良種を配布するので、今からでも十分に生育します」
「そうか。だったら問題ないな。本当だな」
許可のハンコを押してくれました。

これで、配布のための行政手続きは完了です。私たちはすぐに、南コルドファンの隣、北コルドファン州の州都にある種苗会社に種を発注しました。
翌日、配布について住民に知らせるため、JVCスタッフは再び避難民向け住居を訪問しました。既にカレンダーは8月になっています。

シエハから話を聞くJVCスタッフ(右手前)シエハから話を聞くJVCスタッフ(右手前)

前回の「現地便り」にも書いた通り、戦場となった村々からは、多くの場合にはウムダ(村長)やシエハ(集落の長)が住民と一緒になってカドグリに避難してきています。そして彼らは避難生活の中でも、リーダーとして出身村の人々の世話を焼いています。
避難民向け住居にも、こうしたウムダやシエハがたくさん入居しています。
「種の配布か。それはありがたい。ちょっと待ってくれ。ほかのウムダ、シエハにも集まってもらおう」
と言ってくれたのは、カドグリの南東40キロにあるテス村出身のウムダです。アドランの話を聞くと、さっそく遣いを出して何人かのウムダ、シエハを集めてくれました。
アドランたちが種子の配布について説明を始めると、リーダーたちは口々に
「ここには農地が十分にある。すぐに種まきができるぞ」
「さっそく、皆に話をして畑の準備を始めよう」
と言い始めたので、アドランも心強くなりました。

話が終わりかけた頃、あるウムダが口を開きました。
「ワシは、この団体(JVC)をずっと前から知っているんだ。今の戦争が始まる前、ウチの村によくこの団体の日本人が来ていて、世話してやったぞ。あの日本人は今、どうしてる?」
「えっ、うちの代表(今井)のことですか?・・それなら、今、ハルツームにいますが」
これにはアドランもびっくりです。JVCスタッフになって1年もたたないアドランは、紛争前の活動については知りません。

ウドゥ村でのソルガム収穫作業(紛争前の2011年に撮影)ウドゥ村でのソルガム収穫作業(紛争前の2011年に撮影)

事務所に戻ったアドランが、さっそく私に電話で報告してくれました。
「そうか、覚えていてくれたんだ...そのウムダ、何ていう名前だった?」
「ククさんです」
「そうそう、間違いないよ、ウドゥ村のククさん...無事でいてくれてよかった」
JVCが紛争前に活動していた地区のひとつ、ウドゥ村。そのウムダは、この「現地便り」にも3年前に登場しています(2010年6月「村人との再会」)。やがて紛争が始まり、その後の消息は私にも分かりませんでした。まさか、再びJVCの活動を通じて出会うとは。

村で見せてもらった何種類ものソルガムの種。虫に強い品種、多雨に強い品種、生育の早い品種などを組み合わせて栽培する(2011年に撮影)村で見せてもらった何種類ものソルガムの種。虫に強い品種、多雨に強い品種、生育の早い品種などを組み合わせて栽培する(2011年に撮影)

3年前の「現地便り」では、村を訪れた私にウムダは自慢げにソルガムの種を見せて、村には何種類ものソルガムがあることを教えてくれました。
長い年月をかけ、世代を超えて村人が育ててきたソルガム。それは村の貴重な財産だったのでしょう。しかし今、空爆を受けて村から逃れた人々の手に、ソルガムの種はありません。私たちにソルガムのことを教えてくれた村人が、JVCから種子の配布を受けなければならないとは、何とも皮肉な話です。

とはいえ、人々は当面の間、この新しい場所で生活を築いていかなくてはなりません。耕作シーズンに向けて、今は種まきが間に合うかどうかの瀬戸際です。
私たちは種の調達を急ぎました。

(続く)

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

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