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2013年3月30日

畑に水が来た

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年4月26日 更新

日本人にとって雨は年中いつでも降ってきそうなものですが、1年を通して雨が降る土地というのは世界中にそう多いものでもありません。雨がほとんど降らない土地もあれば、雨季と乾季がはっきりと分かれている土地もあります。

私たちが活動している南コルドファン州は、年間降水量600ミリ程度。日本の平均の3分の1程度です。雨季の6~10月にまとまって降り、11月から5月までの乾季は、ほとんど一滴も降りません。

今はその乾季の真っただ中。この「現地便り」でご紹介してきたように、活動地のムルタ村で私たちは1月に野菜の種子を配布しました。しかし種を蒔いたところで水がなければ作物が育つわけもありません。

丘のふもとに位置するムルタ村では、丘陵地に降った雨が地下をゆっくりと流れているらしく、乾季でも地面を少し掘れば水が湧いてくる場所があります。村人は古くから、そこに「ビル」と呼ばれる溜池を作り、乾季の間の水源として利用してきました。しかし、手入れが大変なためか、それとも機械掘削による井戸の増加のためか、近年「ビル」は放置されたまま砂に埋もれるか外来種の雑草に覆われ、荒れ放題になっていました。

改修工事前の溜池。何年も放置され、荒れ放題になっていた改修工事前の溜池。何年も放置され、荒れ放題になっていた

その「ビル」を改修・整備して、避難民を含めたより多くの村人が乾季の野菜作りを通じて生計を得られるようにしよう、というのがこのプロジェクトです。

「ここの二つと、あそこと、その向こうの大きなやつ、合わせて四つだな。この四つの溜池を使えるようにすれば、このあたりの菜園には十分水が引けるぞ」
と言うのは、ムルタ北地区のシエハ(住民リーダー)、ティヤさん。今日は、菜園委員会のメンバーや土木業者、それにJVCスタッフを交えて、どの溜池の改修工事をするのかの打ち合わせです。

外来種の雑草を刈り取る作業。この雑草は地元で「アウィル」と呼ばれるが、その意味は「厄介者」。繁殖力が強く、しかも根や茎が丈夫で刈り取りにくい外来種の雑草を刈り取る作業。この雑草は地元で「アウィル」と呼ばれるが、その意味は「厄介者」。繁殖力が強く、しかも根や茎が丈夫で刈り取りにくい

「あそこのマンゴーの木の下にも昔は溜池があったぞ。掘れば使えるんじゃないか?」
菜園委員会のメンバーがそう言うので、皆で見に行ってみました。確かに、地面にはそれらしい窪みが残っています。

「ダメだダメだ、地面がすっかり乾いているじゃないか。掘っても水は出ないぞ」
土木業者の専門家が窪みに入って地面を木の棒で突き刺して確かめながら、そう言いました。

「やっぱりそうか。ここを使っていたのはずいぶんと昔だからな・・。よし、ここは諦めて、さっきの四つの溜池の工事を始めてもらおう」
ティヤさんがそう結論付けて、さっそく、土木業者による改修工事が始まりました。

ムルタ北地区のA~Dの四つの溜池(Beer)と菜園(Gardens)との位置関係図。いちばん大きな溜池Dは菜園の広い面積に水を供給しているムルタ北地区のA~Dの四つの溜池(Beer)と菜園(Gardens)との位置関係図。いちばん大きな溜池Dは菜園の広い面積に水を供給している

溜池と菜園との位置関係について、JVCスタッフが図を描いてみました。ペンで塗りつぶした部分が、改修工事を行ったA~Dの四つの溜池。そこから菜園に向かって水路が伸びています。菜園の敷地の中は木の枝のフェンスでグループ毎の区画に分かれており、全部で18のグループ、約70家族がここで菜園作りを始めます。

数日間の工事が終わりました。周りの雑草はきれいに片付き、新たに掘り込んだ池には底から湧きだした水が溜まっています。

「ティヤさんはどこですか?」
村を訪れたJVCスタッフが住民に尋ねると、「あっちのでっかい溜池にいるのを見たぞ」という答えが返ってきました。さっそく、「でっかい溜池」と呼ばれる溜池Dに行ってみます。

池につかりながら水汲みをするティヤさん。普段はジャラビーヤと呼ばれる白いガウンを着ていることが多いが、この日は完全に作業モード池につかりながら水汲みをするティヤさん。普段はジャラビーヤと呼ばれる白いガウンを着ていることが多いが、この日は完全に作業モード

「あれ?あそこにいるのは、ティヤさん?」
なんと、住民リーダーのティヤさんは赤いシャツにズボンの裾をまくりあげ、溜池から水を汲みあげているところでした。挨拶するJVCスタッフへの返答もそこそこに、
「種蒔きの時期だからな。畑に水をたっぷりやらないといかん」
と言って、バサーッ、バサーッと勢いよくバケツの水を灌漑用水路に流し込んでいます。

そう、これは人力灌漑システムなのです。池の水面は当然ながら地面よりも低いので、そこから人力で汲み上げるのです。

忙しいティヤさんのお邪魔はせず、溜池の反対側に行ってみました。そこには、もうひとつ別の取水口があり、顔見知りの農家の主婦、サブラさんが水汲みを終えるところでした。

溜池Dには取水口がふたつある。手前で水を汲み上げているのはサブラさん。向こう側の取水口はティヤさん溜池Dには取水口がふたつある。手前で水を汲み上げているのはサブラさん。向こう側の取水口はティヤさん

「サブラさん、畑を見せてもらえますか?」
そうお願いをして、サブラさんと一緒に畑に行ってみました。

池から流れだした水路は分岐しながら、たくさんの菜園につながっています。あちこちで、畑に水を入れて種まきが始まっていました。

サブラさんの畑は、親戚の人たち3人との共同利用。縦に2本の水路が走り、そこから左右の畑に水が流れ込む仕組みです。一度に全部の畑に水を入れるのではなく、何枚かに水を入れながら順次作業を進めていくようです。

「今までに、ジルジル(ルッコラ)、フドラ(モロヘイヤ)、それとバミア(オクラ)の種を蒔いたわ」
と言うサブラさん。ジルジルは、もう芽が出始めています。収穫まで3~4か月はかかる穀物に比べて、野菜、特にこうした葉物野菜は驚くほど早く収穫ができます。

サブラさんの畑で話を聞くJVCスタッフサブラさんの畑で話を聞くJVCスタッフ

「3週間くらいで採り入れて、そうしたら市場で売るのよ」

水汲みでこれだけ重労働をしているのですから、早くその日が来て欲しいと私たちも願うばかりです。

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。

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