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2013年1月15日

男はみんな怠け者

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年1月17日 更新

「男なんて、ちっとも働かないじゃないか」
「そうそう、いつも茶飲み話をしているか、寝てるだけだよ」

ムルタ南地区での住民集会ムルタ南地区での住民集会

なんとも過激な発言が飛び出したのは、ムルタ村での住民集会。住民リーダーとJVCが呼びかけて、村の共同菜園作りについて話し合うために住民30人が集まりました。そのうち、なんと25人が女性で男性は5人だけ。リーダーとその補佐役を除けば、ほとんどの参加者が女性です。

「男はみんな関心がないのさ」
「そう、乾季の野菜づくりは水やりがタイヘンだからね。男にはできないよ」

何人かの村人は以前から菜園を作っている何人かの村人は以前から菜園を作っている

JVCは昨年4月から、雨季の間の穀物や野菜栽培に対する支援を行ってきました。10月には雨季が明け、収穫シーズンが到来。やがて収穫シーズンも終了し、11月からは全く雨が降らない乾季が始まります。

この乾季の間、農家は収穫物の脱穀や加工保存、炭焼き、木の実などの採集、ほかにも縄を結ったり屋根を葺いたりと沢山の仕事があります。出稼ぎに出る人たちもいます。

しかしそれと並行して、村の中には乾季にも野菜作りに精を出す人たちがいます。雨季の間に満杯になった溜池の水を引いて、オクラやモロヘイヤなどの野菜を栽培するのです。

一昨年来の紛争で、村には多くの避難民が流入しています。更に、昨年10月からはカドグリ市内へのたび重なる砲撃のため、カドグリ市内で生活していた避難民が市街地からわずか数キロのムルタ村に移動してきました。つまり村は過剰な人口を抱えているわけですが、こうした人たちが少しでも自分の手で食料を生産したり現金収入が得られるように、共同菜園のアイデアが出てきました。

土砂が入り込み雑草で覆われたしまった溜池土砂が入り込み雑草で覆われたしまった溜池

でも、そのための土地はあるのでしょうか?雨が降らない季節ですから水も必要です。村には古くから菜園として使われてきた広い土地がありますが、出稼ぎの機会などが増えたため、最近では大部分が放棄されていました。長い間使われていない溜池は、土砂や水草で埋まりかけています。

「土地はある。菜園用の土地を持っている住民を集めて話し合った結果、荒れ放題にしておくよりも村人に無償で使ってもらった方がいいと皆が賛成した」
住民リーダーのジュマさんが集会の参加者に説明しました。
「そして、荒れ果てた溜池の整備はJVCが支援すると言ってくれている」

しかし、リーダーの補佐役は少し懐疑的なようです。
「でも、今まで少数の村人しか菜園をやっていなかったということは、乾季の野菜作りは手間がかかる割に実入りが少ないんじゃないの?」

「そんなことないよ。ワタシは今まで野菜作ってきたけど、乾季は市場に出回る野菜が少ないから高く売れるよ。みんな、町で日雇いの仕事をしたり薪を集めて売れば日銭が稼げるからそうしているけど、少し我慢して野菜を育てれば、もっと稼げるよ」
と反論したのは、女性たちのリーダー役、アシャさん。それを受けて、集会に参加していた州政府農業省の担当者が口を開きました。

「その通りです。乾季の間、カドグリ市場の野菜は400キロも離れたナイル川沿いのコスティから運ばれてくるので、鮮度が悪いのに値段はとても高い。カドグリの周辺で野菜が栽培できれば、鮮度は良いし、いい値段で売れるし、こんなにいいことはありません」

集会の最後に、菜園活動の推進役となる「菜園委員会」のメンバーが選ばれました。男性2名、女性4名。リーダーはアシャさんです。女性が中心で、男性メンバー2名はどうやら男女のバランスを取るための「おまけ」のようです。 「とにかく、菜園は女の仕事だからね。ワタシが村の中を回って、女たちに声を掛けてみるよ」

集会が終わった後、アシャさんが男性陣に手製のおやつをふるまってくれた集会が終わった後、アシャさんが男性陣に手製のおやつをふるまってくれた

集会を終えて事務所に戻ったJVCスタッフのユヌスが、首都ハルツームにいる私に電話で様子を報告してくれました。 「なるほどね、乾季の野菜作りは男どもには無理ってことか」
「俺は男として恥ずかしいよ・・でも、残念ながら『男が何もしない』というのは、スーダンでは本当のことなんだ」
ユヌスがあまりに真剣に言うので、私は少し可笑しくなってしまいました。

「ユヌスさん、それはね、スーダンだけのことじゃないんだ。男がダメになっているのは、世界的な傾向なんだよ」
すると彼はたいそう驚いた様子で
「ほ、本当か?日本でもそうなのか」
「うん、怠け者っていうのとは少し違うけど、覇気がないというか・・」
「こりゃまた、とんでもない世の中になっちまったな」

電話口の向こうで、ユヌスは頭を抱えているようでした。

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。

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