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2012年8月10日

栄養ドリンクで畑仕事

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2012年8月13日 更新

私たちが活動しているムルタ村の中に、ちょっと変わった集落があります。いえ、決して「風変わりな」わけではないのですが、州都カドグリの郊外にありながら、まるで山あいの村のような雰囲気なのです。

丘陵に抱かれて広がるトチャ集落丘陵に抱かれて広がるトチャ集落

トチャと呼ばれるその集落は、幹線道路から東に3キロ、背後に連なる丘陵に抱かれるように広がっています。ムルタ村は元々、「ムルタ」と呼ばれ「ムルタ」の言葉をしゃべる人々の土地ですが、そこに過去何十年かの内戦などの影響で、州内各地から人々が移り住んできました。ここもそのひとつで、ヌバ山地と呼ばれる丘陵地帯から「トチャ」と呼ばれる人々が集団でやってきました。元々が「山の民」なので、山に抱かれたこの土地を選んだのかもしれません。集落の中では今でもトチャの言葉が話されています。

何が違うかって、まずは畑の作り方です。
日本で言えば段々畑、ということになるのでしょうか。丘陵の斜面に石組みでテラス状の畑を作っています。このテラスが雨水を保持し、しかも土壌を流出させない役割を担っています。

7月はじめ、JVCスタッフがトチャ集落を訪れました。この集落もJVCの種子の支援を受けており、種まきが無事に終わっているか、生育状況はどうなのか、それを確認するための訪問です。

「こんにちは」
スタッフが段々畑を登って行くと、農家のおばさんが草取りをしていました。
「おお、よく来たね。元気かい?」
種子の配布を通じて、スタッフは多くの村人と顔見知りになっています。
「元気ですけど・・山道を歩いてもう疲れちゃいました」

クルマは集落の入口までしか入れず、その先は歩くしかありません。
「なんだ、だらしないねえ。この村では暮らせないね」

草取りの手を休めたそのおばさん、バディヤさんは笑って言いました。もう結構な年配のようですが、まだまだ元気に農作業をしています。

バディヤさんと彼女の畑。作物が芽を出しているバディヤさんと彼女の畑。作物が芽を出している

「今日は、作物が順調に育っているかどうかを見に来ました」
「そうかい。見ての通りだよ。そこの畑はトウモロコシと豆。あっちはオクラ。今年は雨が多くてよく育っているよ。でもそのぶん雑草もよく育つからね。草とりが大変」

雑草取りをするバディヤさんの娘さんとJVCスタッフ雑草取りをするバディヤさんの娘さんとJVCスタッフ

そうこう話している間も、向こうの畑ではバディヤさんの娘さんが草取りをしています。
「トマトはどこですか?」
「いま苗床で育てているよ。こっちに来てみな」

トマトの苗床トマトの苗床

言われるままにバディヤさんの家の敷地に入ると、短く切ったドラム缶の苗床に、トマトの双葉が出ていました。

「最初に出てきた芽はみんなダメになってしまってね、もう一度種をまき直したんだよ」
「えっ、どうしてダメになってしまったんですか?」
「よく分からないけどね。でも、2回目はちゃんと育っているよ。少し大きくなったら、あっちの畑に移し替えなきゃね」

JVCスタッフはバディヤさんにお礼を言って、集落の中をもう少し歩いてみることにしました。

岩だらけの斜面の道を歩いて行くと、たくさんの村人が集まっている畑があります。何をしているのでしょう?

「ナフィールだよ」と、その場に居合わせた村のおじさん、カフィさんが教えてくれました。「ソルガム(この地域の主要穀物)の種まきをするために、みんな集まっているんだ」

ナフィールとは、村の共同作業グループのことです。何人かの村人がひとつのナフィールのメンバーとなり、種まきや草刈り、収穫などの時に相互に協力し合うのです。今日はAさんの畑で種まきがあればメンバー全員がAさんの畑に行って作業します。翌日はBさんの畑の種まきなら、こんどは全員がBさんの畑で作業するといった具合です。

この仕組みによって、それぞれの農家は外から人を雇うことなく、労働力が必要な作業をこなすことができます。このナフィールは農作業だけでなく、家の屋根の葺き替えなどの時にも利用されます。

畑では、農家の女性たちがかがみこみ、シャベルのような道具を使って草取りと種まきを同時に行っていました。農具も種も、私たちが支援したものです。

こうして草取りをしながら、種もまくこうして草取りをしながら、種もまく

「草取りと種まきを同時にやるんですか?」少し驚いて尋ねると、
「そうさ、そのほうが手っ取り早いんだ」とカフィさん。土を起こして雑草を取り除き、そこに種を蒔いていくのです。

作業をしている人たちのほかに、近くの岩場に腰かけて談笑している人たちがいます。休憩でしょうか。
近づくと、男も女もヘチマの容器で何かを飲んでいます。お酒?

そう、それはメリーサと呼ばれるソルガム酒なのです。
「ナフィールで畑を耕す時には、作業をしてくれた人へのお礼として、畑の持ち主が食事とソルガム酒を振る舞わなくてはいけないのさ」

またまたカフィさんが説明してくれました。

なるほど。いかにナフィールが相互扶助の仕組みだと言っても、お礼は重要なのですね。
「ナフィールの時には、女たちはソルガム酒をたっぷりと用意する。それができない農家はナフィールを使うこともできないんだ」

「おいおい、そこで何を話してるんだ。こっちに来いよ。一緒に飲もう」
岩場の人たちが、こちらを見て手招きをしています。近づくと、なみなみと注がれた器が差し出されました。

ヘチマ容器の栄養ドリンクを回し飲みヘチマ容器の栄養ドリンクを回し飲み

「でもこれ、お酒でしょ」と躊躇するJVCスタッフ。ここは一応イスラム圏です。
「違う、違う。これは村の栄養ドリンクだ。これを飲むと疲れが吹っ飛んで、いくらでも作業ができるぞ」

村人が真顔でそう言うのですから、この記事のタイトルも「栄養ドリンク」にしておきましょう。

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。

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