アジア・中東・アフリカで活動する国際協力NGOです。
  • JVC facebook
  • JVC twitter
  • イベントメルマガ配信中
  • 文字サイズ:大きく
  • 文字サイズ:中くらいに
  • 文字サイズ:小さく
JVC English website
2012年7月24日

スーダンと「アラブの春」

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2012年7月25日 更新

ハルツームでのデモのたかまり

「アラブの春」が、ついにスーダンにもやって来たのでしょうか。

6月下旬、昨年の南スーダン分離独立によって石油収入の多くを失い、国家財政の危機にあるとされるスーダン政府は大がかりな財政緊縮策を開始。ガソリンや砂糖などへの補助金の撤廃を実施しました。

ハルツーム市内のバス料金は一気に30~40%値上げされ、砂糖は1キロ4スーダンポンド(約70円)から7スーダンポンド(120円)となり、ありとあらゆる物価がぐんぐん上昇しています。

こうした措置に不満を持つ学生たちが、反政府デモを組織し始めました。「財政危機は汚職など政治家の責任」「国民のカネが軍や警察にばかり使われている」と政府を批判しています。

しかし一般の市民はこうした動きに冷淡です。
「あんなの、学生が騒いでいるだけ。何の影響力もないよ」
そんな声を多く聞きます。確かに、デモに参加しているのは100~200人程度。何万人もの群衆が広場を埋め尽くしたエジプトのような状況とは、かけ離れています。

住宅街での催涙弾

学生のデモが始まって数日後の金曜日。礼拝のためモスクに集まった人々がそのままデモを繰り広げるかもしれないとの情報が、私のもとにも届いていました。万一のことを考えて、その日は外出せずJVC事務所兼住居の中で静かに過ごすことにしました。広いハルツーム市内のどこかでデモが起きれば、その情報は国連の安全担当部署から携帯メールで入ってくることになっています。

礼拝がすっかり終わった午後3時。ニュースを確認しても市内中心部のモスク周辺でデモが起きている様子はなく、携帯にも何のメッセージも入ってきません。このまま何もなく終わるのか・・と思っていると、いきなり遠くからダーン、ダーンと発射音が聞こえてきました。小銃のような乾いた音ではなく、何かもっと別の音です。

いったい何の音?と思っていると、いきなり目を開けていられなくなり、涙が出てきました。えっ、まさか催涙弾?こんな住宅街で?

音がしているのは何百メートルか先なのに、風に乗った催涙ガスは閉め切った窓の隙間から流れ込んでくるようです。窓越しに外の様子を伺うと、ビルの3階にある事務所から見渡せる交差点に、いつのまにか警察が出動して交通規制を行っています。南側に向かうバスや一般車両を遮断しているようです。機動隊の特殊車両も2台見えます。

携帯の着信音が鳴りました。メールです。あわてて手に取ってメッセージを見ると「デモ発生。ハルツーム市内デユム地域。当該地域への通行は回避せよ」

「デユム」って、まさにJVC事務所の所在地ではありませんか。

催涙弾の音がした南の方角では、真っ黒な煙が上がりました。集まった群衆がタイヤか何かを燃やしているようです。人々の歓声。それをかき消すように、再び催涙弾の音が響きます。しかし、いったいこんな強いガスの直撃を受けて、デモの人々は大丈夫なのでしょうか?

スーダンでは反政府デモは違法行為として激しい弾圧を受けます。平和的な行進であっても警察がすぐさま駆けつけ、催涙ガスと棍棒でデモ隊を離散させます。多くの人が負傷して病院に運ばれ、また多くの人が逮捕、拘留されます。
「不穏な動き」は芽のうちに徹底的に潰すのが政府のやり方です。

催涙ガスが収まったので、窓を閉めたまま下の通りを覗き込んでみると、警官隊に追われた人たちが走ってきて、路地に逃げ込んでいきます。機動隊の車両がそれを追って住宅地の中に入り込んでいきました。徹底的に追い詰めて、拘束するつもりでしょうか。

その後、催涙弾の音は断続的に2時間ほども続き、ついに群集は散り散りになったらしく静まりました。この日は、市内の多くの場所で同じような光景が繰り返されたようです。

それから3週間にわたって毎週のように金曜のデモが繰り返されましたが、再びJVC事務所の周辺で行われることはありませんでした。デモの規模も、週ごとに小さくなったようです。

デモを組織しているグループは「これまで警察に2,000人のデモ参加者が拘束され、今も釈放されていない」と訴えています。元々の参加者が多くはないので、2,000人も拘束されたら壊滅的な打撃でしょう。

止まらない物価の上昇

こうして、政府はデモを収束させることに成功したように見えます。

しかし、物価上昇が止まることはありません。私が毎日食べているタマゴは、1個50ピアストル(8円)が70ピアストルになり、そして昨日は90ピアストル(14円)になりました。

丸型のパン「ホブス」は主食だが、原材料の小麦は輸入に依存。価格は小麦の国際相場や為替レートの影響を受けやすい。  丸型のパン「ホブス」は主食だが、原材料の小麦は輸入に依存。価格は小麦の国際相場や為替レートの影響を受けやすい。

ハルツームの食卓に欠かせないパン。ホブスと呼ばれる丸型のパンですが、この値段だけは変わっていません。4個で1スーダンポンド(15円)。

「パンの値上げだけは絶対に許さないって、大統領が言ったのよ」と友人のスーダン人が教えてくれました。「だってパンが値上げされたら、みんな街頭に出てデモしちゃうわよ。政府だってそれが怖いんじゃない?」

なるほど。でも、パンのサイズが毎日小さくなっていくように感じるのは私の気のせいなのでしょうか?

「あっ、また小さくなった!」
気のせいではありません。JVCスタッフも、毎日の昼食時に騒いでいます。
このパンがどれだけ小さくなれば、スーダンに「春」は来るのでしょうか?

団体案内
JVCの取り組み
11ヵ国での活動
イベント/お知らせ
現地ブログ
あなたにできること
その他
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター
〒110-8605 東京都台東区上野5-3-4 クリエイティブOne秋葉原ビル6F 【地図】
TEL:03-3834-2388 FAX:03-3835-0519 E-mail:info@ngo-jvc.net