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種子の配布と避難民

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2012年7月13日 更新

「押さないでください、押さないで!」
JVCスタッフが大声で制止しても、集まった村人はわれ先に部屋の中に入ろうと押し合いへし合いをしています。
「早いもの勝ちではありません。名簿の順番で配っているので、もう少し外でお待ちください」
部屋の中では種子の配布が行われています。これまで実施した農具、野菜種子の支援に引き続いて、今回はいよいよ主食穀物のソルガム、それにゴマ、落花生の種子です。

配布対象となる村のリーダーがJVC事務所で打ち合わせ配布対象となる村のリーダーがJVC事務所で打ち合わせ

配布はカドグリ市周辺で6月上旬の4日間にわたり行われ、初日となる今日はムルタ村の東地区。対象となるのは、昨年の避難生活から戻ってきた地元住民と、今も各地で続く戦闘により自分たちの村を追われてこの地区にやってきた避難民です。

種子を積み込んで配布場所に出発種子を積み込んで配布場所に出発

配布開始前から多くの人が集まっていましたが、配布が始まると何やら騒然としてきました。
「オレの名前が見当たらないぞ。どうしてなんだ」
50歳くらいの男性がJVCスタッフに詰め寄ってきました。事前に用意してある配布対象者の名簿に名前が載っていないようです。

「名簿を見ると、最近この村にやってきた避難民の名前があるじゃないか。オレはこの村の出身だ。よそ者の名前があってどうしてオレの名前がない!」

配布場所に集まってくる村人配布場所に集まってくる村人

戦火の中を身ひとつで逃げてきた避難民は、もっとも支援を必要としている人びとです。私たちは村のリーダーと話し合い、避難民が村人から多少の畑を譲ってもらえることを確かめた上で、優先して種子を配布することを決めました。

元々の村人については、女性と子どもだけの家庭など、より生活に困難を抱えている世帯を優先してリーダーが配布対象者の名簿を作成しました。住民全員に配布するだけの種子の量はないので、残念ながら受け取れない人も出てきてしまいます。JVCスタッフは、そうした点を男性に説明しましたが、なかなか納得してくれません。

「住民リーダーはどこにいるんだ?名簿を作成したのはリーダーなのだから、リーダーから説明してもらおう」 スタッフのユヌスはそう言ってリーダーを探しましたが、見当たりません。
「ユヌスさん、リーダーならあそこにいるよ」そう言われて振り向くと、3人のリーダーが、人々の喧騒をよそに隅っこの方にじっと座っています。

配布準備完了。左側に座っているのは住民リーダー。山積みになっているのはソルガムの種子。手前の机の上は配布用の名簿、受け取った村人にはインクで拇印を押してもらう。配布準備完了。左側に座っているのは住民リーダー。山積みになっているのはソルガムの種子。手前の机の上は配布用の名簿、受け取った村人にはインクで拇印を押してもらう。

「なんだ、みんな爺さんじゃないか」と思わずユヌスが口を滑らすほど、それぞれご高齢です。
「すみません、リーダーの方たち。こっちにきて、村人の質問に答えてもらえませんか」
そう呼ぶと、やっとリーダーのひとりが立ち上がってこちらに来てくれました。

村のリーダーというのはなかなか激務で、「長老」というイメージではなく40~50歳台の壮年男性が務めているのを多くの村で見かけます。しかしこの村にはそうした働き盛りのリーダーはいないらしく、住民の取りまとめも難しいようです。リーダーに限らず、村には青年期、壮年期の男性が少ないように見受けます。

「若いやつらはいないのか?」ユヌスがブツブツ言っていると、ある村人が教えてくれました。「みんな、兵隊になって戦争に行ってしまったよ」
その村人が言うには、昨年に紛争が始まってから、多くの男性が姿を消してしまったのだそうです。残されたのは女性と子ども、お年寄り。やがて村には避難民が入ってきましたが、避難民もその8割以上が女性と子どもです。

「私の名前は名簿にありますか?」
3人の子どもの手を引いた若い母親が尋ねてきました。聞いてみると、2日前にこの村にやってきた避難民です。
「家は決まっているのですか?耕す土地はありますか?」
「いいえ、今は村の人と一緒に空き家を探しているところです。土地のことも、まだ分かりません」
避難民は支援の優先対象とはいえ、家も土地も定まっていないのでは、さすがに配布をするわけにいきません。理由を話して丁寧にお断りしました。

ほかにも、つい数日前に到着したという避難民が何人か配布場所にやってきました。今回種子を配布することはできませんでしたが、しかし住居さえ定まれば、その周りのスペースで小さな畑を作ることができるでしょう。その時には、ほかの村人から種を分けてもらうなどの助け合いを期待するほかありません。

配布を行うJVC臨時スタッフ(アルバイト)。普段はカドグリの市場でソルガムや落花生の販売をしているとあって、正確に計量して配るのはお手のもの。配布を行うJVC臨時スタッフ(アルバイト)。普段はカドグリの市場でソルガムや落花生の販売をしているとあって、正確に計量して配るのはお手のもの。

名簿と照合しながら1世帯ごとの配布を終えた時には、とっぷりと日が暮れていました。この日、配布を受けたのは避難民を含む地区住民の7割にあたる190世帯。 「紛争のおかげで去年から種の保存ができず、買に行くおカネもなくどうしようかと思っていた。とても助かった。これで種まきができる」 多くの村人からそうした声をかけられました。

また、「こうして一人一人に直接配ってもらったのでとてもありがたい。村のリーダーにまとめて配布をされてしまうと、なぜかリーダーの手元で量が減ってしまうことがあるから・・」そんな感想もありました。

ムルタ村西地区での配布ムルタ村西地区での配布

4日間にわたる配布で、ムルタ村、ハジェラナル村で合計1,000世帯への支援が終了しました。6月も半ばに入り、カドグリ周辺では毎日のように雨が降っています。あの戦闘が起きてからちょうど1年。農家にとっては2年ぶりとなる耕作シーズンが、いよいよ始まりました。

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。

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