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改良種?それとも在来種?(2)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2012年6月26日 更新

前回から続く)

スーダンの主要穀物であるソルガム種子の支援を前にして、私たちはJVCが配布する品種について議論していました。在来種である「カラマッカ」に対して、最近の改良種である「ワッダハメッド」は少雨でも生育し収穫量が多いなど、いいことずくめです。

しかし、果たしてそうなのでしょうか。私は、疑問に思ったことを農業省からJVCに派遣されている専門家、ムサさんに尋ねてみました。

「ワッダハメッドを収穫して、そのうち少しの量を翌年の種まき用に保存しておくとします。翌年、畑にまいて育ちますか?」
するとムサさんは正直に、
「ワッダハメッドの種は1世代限りです。収穫した種を2世代目として翌年まいても、うまく育ちません」
「えっ、そうなの?」
私よりも、ワッダハメッドを支持していたイルアミンがこの説明に驚いたようです。
「じゃあ、次の年の種はどうしたらいいの?」
「また、種子会社から買うことになります」

マンジャさんの家で見たように、この地域の多くの農家は収穫物の中から良質のものを選んで翌年の種として保存し、育ててきました(自家採種)。そうして代々受け継がれてきた品種が在来種と呼ばれるものです。

収穫後ソルガムの選別。この段階で質のよいものを翌年の種として選ぶ。(2011年にJVC活動地にて撮影)収穫後ソルガムの選別。この段階で質のよいものを翌年の種として選ぶ。(2011年にJVC活動地にて撮影)

しかし昨年は紛争に影響されて収穫が極めて少なく、農家は十分に種の保存ができていません。だから今年に限って種子を配布する、というのが私たちのプロジェクトの趣旨です。しかしここで改良種を配布したら、次回からは自家採種することができず、農業のあり方そのものが変質してしまいます。

翌年に向けて種子を保存。木の枝に吊り下げて陰干しにする光景がどこでも見られた。(2011年にJVC活動地にて撮影)翌年に向けて種子を保存。木の枝に吊り下げて陰干しにする光景がどこでも見られた。(2011年にJVC活動地にて撮影)

「翌年は種子会社から買うといっても、小さな農家にはそんなおカネはないぞ」とユヌスさんが議論に割って入ってきました。
「心配ありません。ワッダハメッドは収穫量が多いので、農家はそれを売ってたくさんお金を稼げます。そのお金で買えばいいのです」と応じるムサさん。
どうやら、それが農業省の政策でもあるようです。

「理屈はそうかも知れないけど、農家の人たちはおカネなんて貯める習慣がないわ。財産として持っているのはおカネじゃなくて家畜よ。おカネを貯めて種を買いなさいといっても、うまくいくのかしら?」とイルアミンが疑問を呈すると、ムサさんは
「でも、もしカラマッカの種を配って、干ばつになったらどうするんですか?改良種のワッダハメッドの方が干ばつに強いんですよ」と反撃。
話は白熱したまま、なかなか結論が出ません。

「議論は尽きないけれど、実際のところ、JVCが支援するムルタ地区とハジェラナル地区では、カラマッカとワッダハメッドのどちらが多く栽培されているのですか」ムサさんに私が尋ねました。
「どちらの地区でも両方が栽培されていますが、昔ながらの生活から抜け出せないムルタ地区の人たちはカラマッカ、教育を受けた人が多いハジェラナル地区ではワッダハメッドの方が多く栽培されています」

ムサさんは役人らしく、農業省の政策通りに改良種を導入していないムルタの人々には批判的なようです。いずれにせよ、最近では在来種だけでなく改良種の作付けも拡大していることが分かりました。

「ひとつの品種に絞ることには無理があるので、両方配布してはどうでしょう。現状に配慮して、ムルタ地区ではカラマッカに比重を置いて配布。ハジェラナルは、ワッダハメッドを中心に配布。皆さん、どうですか」
ムサさんも、イルアミン、ユヌスも、この結論に納得したようです。

なんとか品種が決定し、スタッフが帰宅したあとの事務所でほっとしていると、携帯電話が鳴りました。電話の主は、さきほどまで議論をしていたユヌスです。

「どうしたの、ユヌスさん」
「いや、さっきの会議でひとつ大事なことを言い忘れたんだ」
「でも、もう十分に議論して結論も出たけれど・・」
「分かっている。でも、ひとつ言わせてくれ」
どうしてもそれが伝えたくて、電話をしてきたようです。
「やっぱりソルガムは在来種のカラマッカがいい」
「どうして?」
「酒だ。おいしいソルガム酒は、カラマッカじゃなけりゃ作れないんだ」

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