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緊急支援、始まる

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2012年1月 6日 更新

11月30日、いよいよカドグリでの緊急支援、食料の配布が始まりました。
これまでの記事に書いたように、私は現地に足を踏み入れることができません。カドグリ事務所に駐在する二人のスタッフ、ユヌスとイルアミンに首都ハルツームから電話をかけて状況を確認します。

「昨日は、2日前に到着したばかりの避難民121人に食料を配布した。今日も、何百人もの避難民が配布を待っているんだ」
12月2日朝のユヌスからの報告です。

「避難民は、どの地域から来ているのですか?」

「ほとんどは、エル=ブラム郡からだ。...この音が聞こえるか?」

彼はそう言って、携帯電話の通話口をどこかに向けたようです。
すると、いきなりババババ...と大きな騒音が私の耳に入ってきました。雑音?それとも?

「何ですか、この音は?」

「政府軍のガンシップ(攻撃用ヘリコプター)だよ。毎朝、カドグリ上空を低空飛行して、南に向かって飛んでいくんだ。上空からだけではなくて、地上でも撃ち合っている。南のほうから、砲撃の音がカドグリにも毎日聞こえてくる」

カドグリの南方、南スーダンとの国境まで約80㎞。その間に位置するのがエル=ブラム郡です。郡内にはJVCが活動していた村もあります。この地域は反政府軍であるスーダン人民解放軍が掌握しており、国境近くには軍事拠点があるとされています。政府軍は現在、この地域への攻撃に戦力を集中させており、戦火を逃れた住民が続々とカドグリに入ってきているのです。

配布場所に集まってきた避難民(カドグリ市内)配布場所に集まってきた避難民(カドグリ市内)

避難民への食料配布の手順は、まず避難民グループのリーダー、つまり元々の村の村長さんに名簿を提出してもらいます。単独で避難してくる住民はまれで、ほとんどの場合は村ごとに避難してきており村長さんが人数や名前を把握しています。
名簿に基づいておおよその配布対象者数を把握し、JVC事務所に保管しているソルガム(主食用穀物)、食用油、塩をトラックに積み込んで避難民が滞在する配布場所に向かいます。

配布前に名簿をチェックするJVCスタッフとボランティア配布前に名簿をチェックするJVCスタッフとボランティア

配布を担当するのはJVCスタッフのほかに協力団体であるNMIAD、ムバディルーンのボランティア、さらにはトラックの運転手もJVCのユニフォームを着てボランティアに早変わり。配布場所には、避難民グループの村長さん、そして女性たちが受け取り用の容器を持って集まってきています。

「オスマン・アダム・ハルーンさん」
準備ができると、JVCスタッフが名簿の名前を読み上げます。

「オスマンさん、いませんか?」

誰からも返事がありません。横にいる村長さんが名簿を覗いて、
「ほう、オスマンか。ええと、こいつの名前は・・・カフィ・トゥトゥだ。カフィ・トゥトゥ、いるか?」

すると、オスマンさんならぬカフィ・トゥトゥさんの奥さんが進み出てきます。
これはつまり、少なからぬ村人が二つの名前を持っているのです。「オスマン・アダム・ハルーン」は身分証明書などに使う「正式名」。町で公用語・共通語として使われるアラビア語の名前です。もうひとつの名前、「カフィ・トゥトゥ」は村での名前、つまり村で話される固有の言語での名前です。ちなみに「カフィ」とは次男に付ける名前で、「次郎」といったところでしょうか。

彼らが住む「ヌバ山地」と呼ばれる丘陵地帯には50を超える言語があると言われ、それぞれのグループが独自の文化を持っています。しかしこの地域は19世紀までは奴隷狩りの対象となり、その後も社会・経済的な発展から取り残されてきました。一方で、中央政府はこの地域に固有の言語や文化、習慣を軽視、時には排斥する立場を取り続けてきました。そうした長年の政策が地域の人々の不満を高め、今回の紛争につながる政治的対立の背景になったのも事実です。

ソルガム(現地の主食穀物)を受け取る避難民の女性ソルガム(現地の主食穀物)を受け取る避難民の女性

食料配布の後、何人かの避難民の方々に残ってもらって話をうかがいました。
集まってくれたのは、手にしたバケツや袋に受け取ったばかりの食料を入れた女性たち8人。乳飲み子を抱いたお母さんたちもいます。JVCスタッフのイルアミンが話を聞きました。

「去年の種まきの時期に戦争が始まった。おかげで耕作できた畑は少なく、収穫はわずかしかなかった。その上、反政府軍の兵士がやってきて『村を守ってやるから食料を渡せ』と言われた。食べ物がなくなり、このままでは飢え死にすると思った。夜中に、兵士の目を盗んで村から逃げてきた」

避難民女性へのインタビュー。右から3人目がJVCスタッフのイルアミン避難民女性へのインタビュー。右から3人目がJVCスタッフのイルアミン

「丘陵の中の集落が爆撃され、畑に大きな穴が空いた。安全なところを探して村を離れ、何日か山の中を歩き回った挙句、カドグリにたどり着いた」
と話す女性たち。
その多くは、数人の男性とともに、ひとりで何人もの子どもの手を引き、赤ん坊を抱いて山中を歩きカドグリにたどり着いています。避難民のうち15歳以下の子どもが65%、女性と子どもを合わせると避難民の9割近くにのぼります。

「カドグリにたどり着き、食料をもらって少しほっとした。でも、カドグリも安全ではない。毎日、砲撃の音がするたびに子どもが震えている。外に遊びに出ようともしない。早く南コルドファンを離れて安全な場所に移りたい」
そう話してくれた女性は、首都ハルツームなど州外の都市で身を寄せることのできる親戚を探している、と言っていました。多くの避難民にとって、カドグリは中継点になっているようです。

戦火を逃れてカドグリにたどり着いた避難民。JVCが配布した食料は一人当たり1か月分にも満たない量でしたが、とりあえず休息をして、次の行き先を見つけるまでカドグリに留まるには一定の役割を果たしていました。

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