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スーダンには「何もない」のか?(後編)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2011年1月25日 更新

(前号から続く)

長期の内戦で開発から取り残され、「何もない」と言われる南部スーダンや南コルドファン地方。しかし見方を変えるなら、内戦の中を生き抜いた村々には、そのための自然の恵みや、それを生活に活かす知恵や技術があったはずです。

これまで私が南コルドファン州を歩いただけでも、そうした技術を垣間見ることができました。

民族衣装が印象的なファラータの若者民族衣装が印象的なファラータの若者

ファラータと呼ばれる牧畜を生業とする人々がいます。「ファラータ」とは「よそ者」といった意味で、彼らは100〜200年前(定かではない)にナイジェリア北部からこの地域に移動してきたと言われています。

州の南東部、タロディ郡のある村で、彼らが掘った井戸を見せてもらいました。

その地域は山から少し離れた平地で柔らかい砂地なのですが、村外れの帯状の土地に30本もの井戸が掘られていました。

木の枝のリングを積み重ねた井戸の内壁木の枝のリングを積み重ねた井戸の内壁

「20年前に地下に水があるのを見つけて掘ったんだ」と言うので「どうやって地下の水を見つけるんですか?」と尋ねると、民族衣装に身をまとったおじさんは遠くの林を指差して「あそこに見える木、あれは『クー』と呼ばれる木で、地下に水がある目印になるんだ」と教えてくれました。ただし、クーの木があるからといって必ず水脈にぶつかるとは限らないのだそうですが。

井戸を覗き込んでみると、内壁にはリング状にした木の枝が何メートルも下の水面までぎっしりと積み重ねられています。「ここは砂地で崩れやすいから、こうしないといけないんだよ」と言いますが、すき間なくぎっしりと積み重ねられたその技術は見事です。崩れやすい壁面をコンクリートで補強する、といったことはNGOもよく実施するわけですが、この木の枝は村の資源ですから資金もかからず、NGOのプロジェクトを上回る費用対効果と言うべきでしょう。

この木の枝を丸めて使う この木の枝を丸めて使う

ファラータの井戸はこれだけではありません。州北部の別の村で、ファラータの人々の住む一角を歩いてみると、ほぼ一家に一本、井戸が掘られています。驚いたのは、その井戸にはロープを巻き上げるハンドルが付いていて、ハンドルを回すとロープの先端のバケツ(日本語で言うなら「つるべ」)が上がってくる仕組みになっています。

ロープの巻き上げ機が付いたファラータの井戸ロープの巻き上げ機が付いたファラータの井戸
井戸から汲み上げた水を家畜に飲ませる井戸から汲み上げた水を家畜に飲ませる

村々を歩くと、集落の近くでバオバブの大木をよく見かけます。その昔、村人が植林したと言われています。

子供たちが木登りをして実を取ってきてくれました。黄色くて酸味の強い果肉は、食用、ジュース、薬としても使われます。町でこのバオバブジュースを飲むのも、私の楽しみのひとつ。そのほか、若葉は食用に、そして樹皮からは強靭なロープができます。この地方ではバオバブ編んだロープでベッドを作ります。

というようにバオバブが生活に役立つということは私も知っていたのですが、もうひとつ驚くような利用法を教えてくれたのは、州の社会開発省に勤務するサイードさん。元々は農林省に長く勤めていたというサイードさんは森林の専門家。「南コルドファンの森のことなら何でも聞いてくれ」と言っています。

サイードさんが言うには、州の西部では、このバオバブの木に水を貯めるのだそうです。バオバブの木に登って幹に上の方から穴を開け(そもそも、空洞ができていることが多い)、そこに雨季の間に水を貯め、蓋をして、乾季にそこから汲み出して使うのだそうです。

バオバブの実を採るのは子供たちの楽しい遊び。木登りのほかにパチンコ玉を当てて落とすこともあるバオバブの実を採るのは子供たちの楽しい遊び。木登りのほかにパチンコ玉を当てて落とすこともある

日本で近年、地域を元気にするための「地元学」という取り組みが注目を集めています。「うちの村には何もない」と言わず、「そこにあるもの」を探し出して地域の力を引き出していく試みです。

南コルドファン州の村々で実施する私たちの活動は、この「地元学」をヒントに、実は「何もないスーダン」ではなく、そこにあるもの、当たり前すぎて見過ごされているものを村人が探し出し、それを生活再建に役立てていくお手伝いをしようというものです。私たちのような外部者の新鮮な目が加わることで、村人が「そこにあるもの」の価値を再認識できる可能性があります。

村で何が見つかるのか、これからが楽しみです。


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