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南へ北へ、逃れる人々― 南部スーダン独立住民投票レポート(2)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2010年11月19日 更新

11月15日、南部独立住民投票(註)の有権者登録が始まりました。南部スーダン各地で合計2,623ヶ所の登録所がオープン、首都ハルツームなど北部においても、南部出身者のために約100ヶ所の登録所が設置されました。各地では、記入用紙などを登録所へ搬送する作業が、国連のヘリコプターなどを動員して直前まで続きました。

有権者登録開始はもちろん新聞の1面トップ(Sudan Tribune紙)有権者登録開始はもちろん新聞の1面トップ(Sudan Tribune紙)

私は現在ハルツームに滞在中ですが、南部の様子が気になってジュバに電話をしてみました。

「はい、こっちはみんな元気よ」と朗らかな声で応えてくれたのは、元JVC車両整備工場(現SCC整備工場)の会計担当、フォエベさん。

「今日から有権者登録が始まったけど、そっちの様子はどう?武力衝突とかは起きてない?」と尋ねると(「武力衝突」はもちろん冗談)、「そんなのある訳ないでしょ。いつもと同じよ」と笑いながら答えが返ってきました。「私はね、明日登録しに行くわ。うちの近所のバス乗り場が登録所になっているから便利よ」

新聞報道によれば、南部各地の登録所では行列ができている一方、北部の登録所は閑散としているようです。「みな、北部では登録したくないのさ。投票時に脅迫されたり、投票結果が改ざんされるのが心配なんだ」とは、南部出身者のコメントです(規定により、有権者登録を行った場所で投票しなければいけない)。

住民投票に向けて、いま、北部から南部への人々の大移動が起きています。内戦中に戦火を避けて南部から北部(主にハルツーム周辺)に逃れた約400万人の国内避難民のうち、100〜200万人が依然として北部に居住していると言われます。こうした人々の多くが帰還しようとしているのです。ハルツームからは帰還民を満載にしたバスが毎日20台、南部各地に向け出発。ハルツームからジュバに向かう航空機は、2週間先まで全て満席です。南部自治政府は、1月の住民投票までに約50万人の避難民が南部に帰還すると見込んでいます。

しかし、多くの避難民にとって、南部に帰ることは容易ではないはずです。内戦終結から5年、帰還できる人々は既に帰っているはずであり、現在まで北部に残っているのは、北部で何らかの収入を得て生活の基盤があったり、故郷に戻っても農地も職もなく生活のあてのない人たち、或いは、帰還する旅費が工面できない人々でしょう。そうした人々が南部に帰るのは、大きな決断、そして大きな負担のはずです。旅費が払えず、半月間歩いて故郷にたどり着いた人々もいます。

「歴史的な住民投票に参加するために彼らは帰還するのだ」という見方もありますが、「それよりも、住民投票で独立が決まった後に北部に居残る不安の方が大きい」との指摘が当たっているように私には思えます。前回の記事にも書いたように、南部が独立した場合、北部に居住する南部出身者は市民権を剥奪される、更には財産が没収されるといったウワサに、皆、不安をかき立てられています。ハルツーム政府のアル=バシール大統領は「南部出身者の権利、安全は保障される」と公言しているものの、人々には「北」に対する根強い不信感があります。実際、ハルツーム政権内には「南部が独立したら、北部に住む南部出身者の市民権は認めない」という主張もあり、ウワサはあながち根も葉もない話とは言い切れません。

人々の大移動は、北から南だけではありません。

新聞報道からは、南部各地から北部の商人が次々に撤収していく様子が伝わってきます。彼らもまた、北部と南部との関係悪化、「独立」後に南部での彼らの立場が危うくなることを懸念して、北部へと戻り始めているのです。しかし南部において、北部から南部への物流を担う彼らの役割は極めて重要です。ジュバでは、市内に多くの店舗を構える北部の商人が撤収を始めたことによって、既に食料品、日用雑貨などの価格が上昇を始めている、とジュバ・ポスト紙は伝えています。今後、多くの帰還民が南部に戻ってくれば深刻な食料不足が起きることも懸念されています。

北から南へと押し寄せる帰還民の波と、南から北へ逃れる北部の商人。その背景にあるのは、南北相互の不信感であり、南部「独立」後に北部に居残ったら(或いは北部出身者が南部にいたら)差別や迫害を受けかねない、という不安です。

多くの人が指摘するように、たとえ南部が独立しようとも、南北は協力することなしにはやっていけません。北部出身の商人・ビジネスマンは南部経済の重要な一翼を担い、北部にも多くの南部出身者が根を下ろしています。境界線をはさむ地域では、牧畜民が水や牧草を求めて南北の境を越えて季節移動をしています。石油資源に関しても、その大半は南部から産出されるとはいえ、北部のパイプラインを通らなければ精製、輸出ができません。

南部は「独立」に向けて沸き立っています。しかし投票結果がどうなろうとも、政治のレベルでも人々のレベルでも南北の相互不信が払拭されない限り、将来への希望を描くことは難しくなっています。

投票の際には、投票用紙にこの二つの絵が印刷され、有権者は○で囲まれた欄にチェック印を入れる。握手をする右側の絵が「UNITY(統一スーダンの維持)」、左側が「SEPARATION(南部スーダンの独立)」を示す。投票の際には、投票用紙にこの二つの絵が印刷され、有権者は○で囲まれた欄にチェック印を入れる。握手をする右側の絵が「UNITY(統一スーダンの維持)」、左側が「SEPARATION(南部スーダンの独立)」を示す。

(註)南部スーダン独立住民投票

スーダン南北の内戦を終結に導いた2005年の「包括的和平合意」に基づき、6年間の期限でスーダン統一暫定政府が設立され、南部においては南部スーダン自治政府が発足しました。そして、6年の移行期間を経た後、南部スーダンが「独立するか、統一スーダンに留まるか」を問う住民投票が実施されることが明記されました。

投票は和平合意の6周年記念日である2011年1月9日に実施予定。これに先立って有権者登録が実施されます。住民投票は、登録された有権者の60%以上の投票をもって成立し、投票総数の単純過半数をもって独立(または統一の維持)が可決されます。


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